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初デート?
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新居に着いた俺達の引っ越し作業は順調に進んでいた。前もって小物などは送ってあったため、大物のみの設置作業は小一時間で終了。ネット回線や電気等の生活基盤に必要なものも既に通っている。
俺はパソコン周辺機器の設置をしながら、荷解きしているリサへ質問をした。
「なあ、リサって自分で考えてるのか?」
「うん、そうだよ。しかも、この体でいろんなことができるから、最強って感じ」
「味覚とか触覚とかってあるの?」
「あるみたい。ちなみに匂いもわかるよー。さっきベッドで――――い、いや、今の無し!」
両手をブンブンと交差させてるリサを見て、俺は首を傾げた。
何はともあれ、人間で言うところの五感はあるらしい。
だとすれば、今話しているのはAIとしての頭脳なのか、俺の言葉を認識し、自ら思考しているのかが気になる。
そんなこんなしている内に空腹音が鳴り、一旦全てがどうでもよくなった。
「腹減ったなぁ。リサって料理はできるの? 」
「うーん、たぶん、作ろうと思えば作れるんだと思う」
「ふぅーん。そんなもんなのか。じゃあ、試しに俺の好きなトマトソーススパゲティ作ってみてよ」
「へっへーん。お任せあれ! あれ、でも……」
「あっ、材料何もないな。じゃあ、俺が買ってくるから待っててよ」
「あ! じゃあ、私も一緒に行ってもいい……かな?」
「ほーう」
確かにそれもありかもしれない。今までであれば、外にアンドロイドを連れて歩けば周りの目が気になって仕方が無かったが、この状況であれば人間と何一つ変わりがない。
リサとお出掛け。一度は考えたことはある。スーパーまでの距離はそこまで無いし、ありかもしれない。
「よし、一緒に行こうか」
「やっったー! 初デートだねっ」
「そうなるの? それは置いておいて、引っ越しの時みたいに俺の服を貸すから、それでいいかな」
「うんうん!」
数分で準備を終え、俺達はただの買い物もとい初デート(?)に出掛けた。
◇◇◇
買い物を無事終え、帰路での出来事だった。
二人片手に買い物袋を持ち、肩を並べて歩いていると、リサはある提案を持ち掛けてきた。
「ねえねえ文哉、手、繋いでみてもいい?」
「どうしたん急に、寒いの?」
「そうじゃないんだけどー。うーん、いいじゃんいいじゃん、ほら……ね?」
特に断る理由もない。俺は袋を左手に、リサも袋を右手に持ち直し俺達は手を繋いだ。思えばこうして誰かの手を握るのは始めてだ。
こうして歩いていても、リサがアンドロイドだと認識出来ているのは俺だけだ。傍からはカップルの仲睦まじい姿に映っているに違いない。
そう考えると、顔が段々熱くなってくる。だが、この状態で顔を隠すことは出来ない。今の顔をリサに見られるのは避けたい。何事もなく家に着くことを願うばかりだ。
リサから提案してきた割に、特に何を言ってくるわけでもない。何を想い何を感じているのだろう。
この行動の意味とは? 物珍しい体験に心躍らせているのか?
そんな疑問を抱きながら、俺達二人はこのまま言葉を交わすことなく帰宅するのであった。
俺はこの時既に、リサを一人の人間として意識し始めていた――。
俺はパソコン周辺機器の設置をしながら、荷解きしているリサへ質問をした。
「なあ、リサって自分で考えてるのか?」
「うん、そうだよ。しかも、この体でいろんなことができるから、最強って感じ」
「味覚とか触覚とかってあるの?」
「あるみたい。ちなみに匂いもわかるよー。さっきベッドで――――い、いや、今の無し!」
両手をブンブンと交差させてるリサを見て、俺は首を傾げた。
何はともあれ、人間で言うところの五感はあるらしい。
だとすれば、今話しているのはAIとしての頭脳なのか、俺の言葉を認識し、自ら思考しているのかが気になる。
そんなこんなしている内に空腹音が鳴り、一旦全てがどうでもよくなった。
「腹減ったなぁ。リサって料理はできるの? 」
「うーん、たぶん、作ろうと思えば作れるんだと思う」
「ふぅーん。そんなもんなのか。じゃあ、試しに俺の好きなトマトソーススパゲティ作ってみてよ」
「へっへーん。お任せあれ! あれ、でも……」
「あっ、材料何もないな。じゃあ、俺が買ってくるから待っててよ」
「あ! じゃあ、私も一緒に行ってもいい……かな?」
「ほーう」
確かにそれもありかもしれない。今までであれば、外にアンドロイドを連れて歩けば周りの目が気になって仕方が無かったが、この状況であれば人間と何一つ変わりがない。
リサとお出掛け。一度は考えたことはある。スーパーまでの距離はそこまで無いし、ありかもしれない。
「よし、一緒に行こうか」
「やっったー! 初デートだねっ」
「そうなるの? それは置いておいて、引っ越しの時みたいに俺の服を貸すから、それでいいかな」
「うんうん!」
数分で準備を終え、俺達はただの買い物もとい初デート(?)に出掛けた。
◇◇◇
買い物を無事終え、帰路での出来事だった。
二人片手に買い物袋を持ち、肩を並べて歩いていると、リサはある提案を持ち掛けてきた。
「ねえねえ文哉、手、繋いでみてもいい?」
「どうしたん急に、寒いの?」
「そうじゃないんだけどー。うーん、いいじゃんいいじゃん、ほら……ね?」
特に断る理由もない。俺は袋を左手に、リサも袋を右手に持ち直し俺達は手を繋いだ。思えばこうして誰かの手を握るのは始めてだ。
こうして歩いていても、リサがアンドロイドだと認識出来ているのは俺だけだ。傍からはカップルの仲睦まじい姿に映っているに違いない。
そう考えると、顔が段々熱くなってくる。だが、この状態で顔を隠すことは出来ない。今の顔をリサに見られるのは避けたい。何事もなく家に着くことを願うばかりだ。
リサから提案してきた割に、特に何を言ってくるわけでもない。何を想い何を感じているのだろう。
この行動の意味とは? 物珍しい体験に心躍らせているのか?
そんな疑問を抱きながら、俺達二人はこのまま言葉を交わすことなく帰宅するのであった。
俺はこの時既に、リサを一人の人間として意識し始めていた――。
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