ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

文字の大きさ
上 下
21 / 50
第三章

第21話『俺達が不合格ってマジで?』

しおりを挟む
「次の試験……って、これが試験なんですか?」
「ええそうよ」

 俺はリラーリカさんについていったのは良いものの、到着したのはなんと図書館だった。
 しかも図書館というにはあまりにも埃まみれで、蜘蛛の巣もあちらこちらに張り巡らせている、汚れに汚れまくった本棚が並んでいる場所。

「ここに連れてきて、俺は何をすれば良いんですか?」
「あら、察しが悪いのね。ここの大掃除を一人でやってもらうのよ」
「うっ」

 こんなわかりやすい状況で察せないわけがない。
 あまりにも一目瞭然すぎて、目の前に広がる状況から現実逃避したいから聞いたんだ。

 リラーミカさんはここに来るのがわかっていたから、自分だけマスクをしているが、俺の分はなく、どちらの手にも二枚目はない。
 しかも終始俺の目を見ているあたり、視界にすら入れたくないのだろうが、これは一体どういう場所なんだ。

「試験内容は、もう諦めてやるしかないってのはわかりましたが、ここはどういう場所なんですか? どうやったらここまでになるんですか」
「ここは、元々私達職員が使用する目的で作られた場所なんだけど、いろいろと仕事が忙しくなったり従業員が減ってしまったりが重なって使用頻度が少なくなっていったの。そして、自然に誰も使用しなくなって……宝の持ち腐れという感じね」

 真面目な人達の集まりなだけあって、逆にこうなってしまったのだろう。
 現実世界でも、仕事をバリバリにしている真面目な人ほど、毎日が忙しくなっていくにつれて部屋が汚れていってしまう、というのをどこかのネット記事で見掛けた記憶がある。

「宝の持ち腐れということは、ここに置いてある資料は有力なものがあるってことですか?」
「勘が良いんだか勘が悪いんだか、キミってどっちなの?」
「どっちなんでしょうね」
「ええそうよ。ここに置いてあるのは基本的にモンスターやダンジョンに関する資料が主なの。ここがこんな感じになっているので、キミならもう察したんじゃない? 最近じゃ冒険者があまり冒険しなくなっていて、ダンジョンに挑む人が少なくなっているのよ」
「だから、ここも自然と使われなくなった、と」
「そういうことね」

 なるほどな。
 やはりここはゲーム世界と一緒で、どこかにダンジョンがあるらしい。
 だが、不思議な情報も手に入れた。

 冒険者が、冒険しない――か。

「それで、みんなはいつ頃ぐらいに合流するんですか?」
「何を言っているの?」
「え?」
「あー、もしかして、ここを仲間と一緒に掃除できるとでも思っちゃってた?」
「ま、まさか」
「そうよ、ここを一人でやるのよ」
「……わかりました。では、期限だけは教えてもらえませんか?」
「そうね~。掃除が全部終了したら?」
「なんで疑問形なんですか」
「んっふふーん」

 そんな、鼻息だけで返事されても困るんですが。
 それに、その挑発的な顔、やめてくれませんか。

「参考程度に、みんなはどんな感じの試験を受けさせられているんですか?」
「大体同じようなものよ。全員で五人だなんて、本当にちょうど良かったわ~っ」
「そ、そうですなんですね」

 これ、本当に試験なのか?
 俺達はただギルドにこき使われているだけじゃないのか?

「それじゃあ、頑張ってねぇ~」

 と、クルリと俺に背中を向け、リラーミカさんは手のひらをひらひらと振りながら部屋から出て行った。

 あの人、俺が冒険者になった暁には憶えていろよ。
 俺はそう決心し、拳を胸の前で握り締めた。

「早速始めなきゃな」

 まずは窓であろう、埃まみれかつ蜘蛛の巣だらけになっている窓に手を掛け、開け放った。
 勢いもあったせいか、ボワッと埃が舞い上がって、俺は反射的に顔を退ける。
 そして部屋の中に陽の光が沢山入ってきたところで、やっと部屋の全貌が見渡せた。
 とりあえず今立っている位置から見えるだけでも、中央を揃えで四台あり、こちらから反対側の壁に設置してある本棚が四台ぐらい。
 もう少し奥行きがありそうなため、この部屋にある本棚は計十台になるだろう。

 ここまで来たら入り口も開けてやろうと思い視線を向けたら、見えていなかったが箒と塵取り、そしてそれを入れる大きい袋が数枚置いてあった。
 流石に素手でやれ、ということではないと知って少しだけ安堵する。
 しかし、これを一人でやれというのは鬼畜そのもの。

「はあ……やるか」

 盛大なため息を吐き、袖を肘まで巻くって派業に取り掛かった。



「あら、案外早かったんじゃない?」
「それは嫌味ですか」
「いいえ、褒めているのよ」

 あの、リラーミカさんわかりません? 目で笑いながらそんなことを言われても誰が素直に受けられると思っているんですか?

「それにしても凄い格好ね」
「当たり前じゃないですか。あんなところを掃除をすれば誰だってこうなりますよ」
「それもそうね」

 絶対に分かってて言ってるでしょこの人。

「それで、みんなはどんな感じなんですか?」
「うーん。私が担当しているわけじゃないから、詳しいことはわからないけれど、少なくともここには顔を出していないわよ」
「わかりました」
「あ、ちなみにこのまま他の人の作業を手伝った場合、不合格になるからね」
「相当な鬼畜ですね」

 なんでそんなにドSなのか訊きたいところだが、疲れ果ててそんな気力もない。
 ロビーに設置してあるソファーに腰を下ろそうとした時、リラーミカさんから「備え付けのシャワーがあるから体を洗ってきなさい」とのお達しが出た。



 ありがたいことに、シャワーを浴びている間に衣類も綺麗にしてもらい、綺麗さっぱりになってロビーに戻ると、ケイヤ・アケミ・アンナ・ミサヤが疲れ果てて床に崩れ落ちている姿を発見した。
 他の受付嬢は既におらず、たぶん代表者としてリラーミカさんが一枚の書類を手に立っている。

「あら、綺麗さっぱりね」

 俺の接近に気づいたのか、振り向いてそんな感想を俺にくれた。

「じゃあこれで全員が揃ったということで、早速結果発表にしましょうか」
「え? もうですか?」
「そうよ。だって、もう時間が過ぎているし」
「ああ、そういうことですか」

 俺は床にヘタっているみんなの傍に歩み寄り、姿勢を正す。

「それでは結果発表です。カナト・ケイヤ・アケミ・アンナ・ミサヤ全員――――不合格」

 ん? 今、聞き間違えたか?

「リラーミカさん、もう一度だけお願いしてもいいですか?」
「不合格、よ」
「「「「「ええええええええええぇ!」」」」」」」」」」

 俺達はこれでもかと声量大きく驚愕を露にした。

「あんな大仕事をした、この俺達が不合格ってマジで?」
「理由は単純。さっき言った通り、もう時間が過ぎているからよ」
「そんなこと――……言ってましたね」
「つまりはそういうこと。今回はお金は徴収しないから、明日また来なさい」
「また同じ試験をしろってことですか?」
「いいえ安心しなさい。今度は正攻法よ」

 ここまで来て信じなさいって言われても、そこそこ無理がある。
 だが、流れを察するに、ここまでが用意されていたシナリオで、本当に次からはちゃんとしたものである可能性が高い。

「はぁ……わかりました。ではまた明日」

 俺達は疲れた体を引きずるように会館を後にした。
 当然、外に出てからは不平不満の嵐が吹き荒れたのは言うまでもない。

「はぁ……」

 本当にため息しか出ない。
 だって、ギルド側の思惑通りになってしまったということは、俺達は最底辺からのスタートになるということだ。
 なんだかなぁ……。

 気落ちする、と同時に、内から何かが沸々と湧き上がるのを感じる。
 心のどこかでは、これはこれでありなんじゃないかと思い、思い通りにいかないっていうのがまた面白く、それはそれで燃え上がって来ているんだと思う。

 たぶん、みんなもそう感じているはずだ。
 そうだな、やっぱりゲームっていうのは思い通りにいかない方が燃えるってもんだよな……!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...