ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

文字の大きさ
上 下
3 / 50
第一章

第3話『力を試すにはもってこいだな』

しおりを挟む
「てなわけだ」

 先ほどまでの会話を簡潔にみんなへ告げた。
 相談なしだったため、反論の一つでも覚悟していたんだが、そんなことはなく。

「いいんじゃないかな、僕は賛成だよ」

 といった感じにみんなからの承諾を得られた。

「じゃあ情報を整理しよう。みんなも実感していると思うが、存外体は動くらしい。少なくとも現実の体よりは」

 全員に視線を向けると、頷いている。

「そして、攻撃面や防御面は未だ未知数。攻撃はどこまで通用するのか、武器の耐久はどうなのか。攻撃を食らったら体力バーみたいなのが減るだけなのか、それとも直に体が損傷するのか。ぶっちゃけ、後者はモンスターでは試したくない」

 みんなも痛みを想像したのか、体をブルッと震わせていた。

「最後に、スキル。こっちの正式名称は知らないが、現段階では耳馴染みのある言葉を使う。というわけでアンナ、どうやって使ったんだ?」
「結論から言うと、ゲームの時みたいにスキルスロットを思い浮かべて、そのスキル名を口に出したら使用できた」
「なるほどな。そこら辺はゲームと勝手が一緒というわけか」
「そしてこれは予測なんだけど、たぶん、ゲームと一緒で職業があるんだと思う」
「ほう、それは一理あるな」

 武器を出現させたときのことを思い返せば納得がいく。
 俺達は偶然にも、慣れ親しんだ武器を思い浮かべ、それを具現化させた。
 もしもそれが武器の形状が大事だったのではなく、武器を必要としたから出現したという風にも捉えられる。

「面白くなってきたね」
「ボクもそう思うっ」
「そうね。カナトが頭をフル回転させているのを見ると、ね」
「ほーんと、ゲーム馬鹿って感じ」
「俺が考えている時に、好きかって言いやがって。お前らもだろ」

 みんなは少し肩を震わせながら笑う、「それもそうか」と。

「俺達の方針は、今のところこの人達とバネッサという街を目指す。ついでにこの世界で俺達にできることも探りながら」

 みんなから即答で返事があった。

「早く次のモンスターと戦ってみたいなーっ」
「ミサヤの言いたいことはわかるが、できることならこの状況で戦闘になったら圧倒的に不利なんだから、そうならないことに――」
「敵襲ーっ!」

 その警告が鼓膜を叩いて言葉が途切れた。

「どんなフラグ回収の速さだよ。みんな、力を試せそうなチャンスが巡ってきたぞ」

 チラッと視線をみんなへ向けると、その顔はニヤリとしていた。
 まったく、どっちがゲーム馬鹿だよ。

「行くぞ」

 馬車の前に駆け出ると、前方には先ほどと同様の白毛のウルフが多数とその背後に大型のウルフを視認。
 小型は少なくとも10体はパッと見ただけでも確認できる。

 問題は、あの大型。
 小型は俺の膝ぐらいまでしかないのに対し、大型は俺の腰ぐらいまである。
 俺の身長が175ぐらいだから、あいつは大体90とかそこいらか。
 あれぐらいになると、タックルでもされれば常人ならば仰け反る程度では済まない。

 一人一体を対処していては数で押し負ける可能性がある。

「ちょいヤバめ? どうする? 逃げる?」
「ミサヤ、暴れたいか?」
「お?」

 そうだな、俺を信じて、仲間を信じるか。

「よし、みんなにノルマを課す。最低でも一人あたり2体だ」
「わかった。でもその計算ってことは」
「ケイヤ、あんたそれは愚問じゃないの」
「確かに、そうだね」
「カナト、無理はしちゃダメだよ」
「アケミもそんなの杞憂なのよ」
「そうかもしれないけど……」
「まあそういうことだ。大型は俺が持つ。後は頼んだ」

 後は、全身に力が入って震えている三人と、馬車に乗る二人か。

「皆さんは彼らに敵が行かないように警戒をしていてください。では」
「お、おい、逃げないのかよ。あんなのに勝てるわけが――」
「ごめんなさい、時間が惜しいので」

 そう言い残し、俺達は今にも雪崩れ込んで来そうなウルフの大群へ駆け出す。
 当然、こちらの接近に気づいたウルフ達は、雄叫びを上げ始める。

「全員、気張って行けよ」

 俺の合図で、各々が自分の役割に移った。
 先ほどとは違い、今度は俺が最後尾。
 みんなの突撃によって、小型ウルフは散り散りになっていった。
 そのおかげで、俺はすんなりと大型の前へ辿り着く。

「さあ来い、犬っころ」

 俺と大型の一対一。
 相手は俺が放った侮辱の意味を理解したのか、その獰猛で鋭い牙をこれでもかとむき出しに顔の筋肉を震わせている。
 元々気性が荒いのか、それとも虫の居所が悪いのか。

『グラァア!』

 怒りをそのままに、ウルフは突進を仕掛けてきた。

「いいぜ、付き合ってやる」

 かなりリスキーではあるが、自分の力量を試すにはちょうどいい。
 俺は少し腰を落として馬鹿正直に盾を正面へ構え、全体重をかけられたタックルを受け止める。

 結果、ほんの少しだけ土を盛り上げた程度に収まった。

「なるほどな、こんな感じか。じゃあ、こういうのはどうなんだ」

 俺はわざと剣を腰に携える鞘に納め、盾に体重を乗せるウルフの顔面へ右拳ストレートをぶつける。
 狙いは簡単。
 武器ではない攻撃の威力確認と、モンスターを殴った場合の感触の確認と、それによって自身の体力が削れるか否か。

『ガフンッ』

 結果、いまいちわからん。
 が、予想以上に柔らかかったウルフの皮膚に食い込んだ拳は、予想以上に威力があったらしい。
 出来る限りの力を込めたといえど、まさかウルフの顔が吹き飛ぶとは思っていなかった。

「なるほどな」

 俺は地面に横たわるウルフを前に、両手を握って開いてを繰り返す。

 こういう感じならば、もしかしたらいろいろと試せるんじゃないか。

「よおし、胸を貸してやる。どんと来い」

 俺はさながらお相撲さんのように両手を開いてどっしりと構える。

 ウルフは体を起こし、俺の行動を挑発を受け取ったのか、盛大に吠えた。
 すると、背後から声が。

「カナト、こっちは全部終わったから、ほどほどにしときなよー」

 と、アンナの声。
 そういうことか。
 目の前に居る大型は、子分である小型が全滅させられて超お怒りモードってことなんだな。
 あいつら、いい仕事をしてくれる。

「全力で来い」
『ワオォォォォォン』

 ウルフはご自慢の牙をむき出しに、全力疾走で向かってきた。
 早いが、目に負える速度でもあるし、顎をこれでもかと開いているものだから攻撃が見え見えだ。
 俺は上顎に左手を、下顎に右手を合わせて受け止めた。
 しかし期待したような結果は得られず、さっきより少しだけ後退した程度に収まる。

「はぁ、少し残念だな。ここまでか」

 俺は正面から向けられる力を左側に流し、ウルフの視界から外れ、振り向かれる前に腰から剣を抜刀し首元に剣を力一杯に突き刺す。

『――』

 ウルフは体を一瞬だけビクッと跳ねさせた後、爆発するように灰となって姿を消した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...