【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第五章

第35話『調査報告と追加情報』

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「たしかにこれだったら違和感がないとは思いますが……」
『でも、これが最適解だと思います』

 和昌は、受付嬢からの連絡が入り街中を歩いている。

 そして受付嬢の提案というのは、「スマホで通話している風に歩けば、不審者として見られることはない」というものであった。

「それで、俺にとって良くない情報というのはどういったことなんですか」
『いいえ、進捗状況の調査報告です』

 和昌はせめてもの抵抗で嫌味を言ってみたものの、受付嬢はそれを知ってか知らずか綺麗に受け流す。

『それではさっそく。調査したところ、被害に遭っている探索者の共通点は経験が浅い人達のようです』
「随分と他人事じゃない内容ですね」
『経験値的な意味合いでいえば、葭谷よしたに様も該当すると思います。ですが、総合的にみたら心配する必要はないと思います』
「警戒はしておけ、ということなんですね」
『はい、その通りです』

 そう淡々と話をされると、どうも緊張感が欠けてしまう。

「でもそうなってくると、新人探索者を玄人探索者が襲撃する構図は想像しやすいですね」
『そういうことになります。ちなみに襲われている探索者は全て男性ということです』
「え、なんですかそれ。今までが偶然ということは……?」
『偶然が重なった結果、という点で推測することはできます。ですが件数が既に10件となっている今、偶然と言うよりは計画性のあるものだと思った方が自然ですね』

 込み入った話になりそうと思った和昌かずあきは、人込みを避けるためにちょうどいい路地裏へと入る。

『もしかしたら迅速な事件解決を望むのであれば、葭谷よしたに様が囮となって犯人をおびき出した方が速いかもしれませんね』
「恐ろしいことを言うのはやめてくださいよ」
『現時点での情報はこんな感じになっております』
「男性の新人探索者が標的とされている、というわけですか。あまりにも自分が当てはまっていて怖いんですけど」
『ですので最効率を目指すのであれば、あながち間違った手段ではないことを憶えておいてください』
「わ、わかりました……」

「じゃあ、せめて護衛の1人や2人ぐらい派遣してくださいよ」と言いたいところだが、自身の攻撃によって巻き沿いになってしまう可能性が脳裏に過ってしまい、心の中で留めることにした。

『あ、忘れてました』
「不安になることは控えてもらえると助かります」
『安心してください、こちらは朗報です』

 と言われても、今までのことがあるから話半分に耳を傾ける和昌。

『支部長を憶えていますか?』
「……ああ、はい。装備の受け取る時に顔を合わせていますね」
『その支部長が、独自に調査を進めているらしい・・・です』
「らしい?」
『私達は相談を持ち掛けられていないので詳しいことは把握していませんので』
「ほほお、でもそれって俺からしたら心強い協力者ってことですよね」
『そういうことになります。事件は把握していますので、もしかしたら手助けしてもらえるかもしれません』
「だけど、あちらの考えもあるだろうから直接的な協力を仰げない、ということですか」
『ご察しの通りです』
「わかりました。もしも街中で顔を合わせても、こちらからは声をかけないでほしいということですよね」
『よろしくお願いします。それでは、今回の報告は以上になります。追加情報は、また追ってお伝えしますので。失礼します』
「わかりました。ありがとうございました」

 タイミングを合わせ、スマホをポケットの中へ入れる。

「そろそろ戻ろうかな――ん」

 誰かの話声に気が付き、今までの流れから警戒して息を潜める。

「もう大丈夫だぞ。俺が安全な場所まで運んでやるからな」
(……この声、どこかで聞いたような)
「ここをまっすぐ歩いたら大通りだぞ」
(こっちに来る……?)

 近づいてくる声を避けるように、表通りに戻って壁に背中をつける。

「怪我の方は大丈夫かい?」
「――――」
「そうか。じゃあ大丈夫そうだね」

 声と足音が近づいてくるにつれて、和昌の鼓動が高鳴る。
 しかしそのまま、声を発している2人は和昌の存在に気が付くことなく通過していった。

(おぉ)

 声が聞き覚えのあるのは当然。なんと、つい先ほど受付嬢から軽い説明の合った探索者連盟支部長その人だったのだ。
 支部長は、怪我人と思わしき人に肩を貸して歩いている。

(……ダメだよな。ここは偶然を装って手助けした方がいいんだろうけど)

 和昌は受付嬢とのやり取りを思い出す。

(支部長、凄い人だ。犯人はもしかしたらレア装備を所有している人間かもしれないのに、たった1人で捜査しているなんて。尊敬してしまう)

 装備を手渡される時の焦りに焦っている姿とのギャップを感じるも、現在の姿がキラキラと輝いて見える。

(じゃあ俺も。いや、俺だけが犯人への抑止力となるなら、怯えているだけじゃダメだな)

 和昌は、尊敬できる背中を視界に収めつつ、やる気がみなぎってくる。

(後ちょっとだけ見回りしてから帰ろう。もしかしたら、あの人みたいに襲われている人が助けを求めているかもしれない)

 深呼吸をし、警戒しながら薄暗い路地裏へと足を進めていった。
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