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感想はしょっぱくて、甘い
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俺は昨日惨敗した。
いつもの朝練後。いつも通り俺達は四人で朝食を摂っていた。
「それで、昨日の結果は?」
「どちらにせよ私には関係ありませんが」
「一世一代の挑戦なのだから、もちろん成功したのよね?」
俺は変わりない三人の対応に安堵さえ覚えていた。
俺自身、極端に何か変わった訳では無いが、これからの学校生活において、クラス内の気まずさに心が砕けそうでいた。
普通なら失恋で落ち込むところだが、逆に集中して練習に打ち込めていたとさえ思えた。
「フラれた、俺の初恋は儚く散った」
「ふぅーん……それで、珍しく落ち込んでるんだ? じゃあはい、これあげる」
「ん? え、あ、ありがとう?」
俺の弁当箱にカラカラと音が鳴る。
音の正体を確認すべく弁当箱に視線を落とす。そこには愛海の青色い箸があり、ミニハンバーグが投下されていた。
「え、くれるの?」
「うん、あげる」
「じゃあ、ありがたくいただいて――お、これ美味しいな! どこの冷食?」
「……いやそれ、手作り、だよ」
普段の態度から手料理とは遠い存在だと思っていた。
意外な一面に少し驚いたが、噛み締めていくと、中にチーズが入っていることに気づき更に驚く。
「マジか、すげぇじゃん。噛めば噛むほど口の中に味が広がるし、愛海って料理上手だったのな」
「……ありがと」
愛海から感謝の言葉を聞いたのは初めてだった。
あまりにも衝撃的過ぎて、愛海を直視して硬直していた。
俺の目線に気づいた愛海は、普段なら冷淡な言葉が飛んでくるはず。だが、まさかの目線を逸らすだけで、どことなく表情が緩んでいるような気がした。
愛海の異変に気付き、そのことで質問しようとしていると、またカランと音が鳴る。
「こういうの好きですよね。私も好きです。疲れた後は濃いめの味付けが美味しいですよね」
「お、え、あ。うん? そうだね?」
彩智から俺の好みについて初めて肯定の言葉を聞いた。
またしても弁当箱へ食材が投下されている。今度はブロック状の鮭の塩焼きが置かれていた。
お? なんだこれ。
こいつらのこの行動、もしかして、俺ってそんなに今惨めな感じ?
こいつらには今、俺は捨てられた小動物に見えてるのか? 拾って欲しそうな目でもしてんのか?
俺は様々な憶測を並べたが、答えはやはり悲壮感漂うものにしか行きつかなかった。
こういう状況でなければ喜べそうな状況だが、相手が相手だからそんな状況は全く想像できなかった。
これ以上変なことは起きないと思っていた矢先、そのまさかが起きた。
美雪は体を乗り出し、四つん這いで距離を詰めて来た。無言のまま接近してくる彼女に、俺は後方に左手を突き退いた。
平手打ちでも飛んでくるのかと思い、つい目を閉じたが、感触があったのは頬ではなく唇だった。
「ほら、口を開けてくださいな。あーん、です」
「あー」
状況が理解できなかったが、言われるまま口を開く。
すると、唇に触れていた柔らかい感触が口内に運ばれた。
「出来れば、その……感想を頂けましたらと……」
目を開き、言われるがまま口内の物を咀嚼。
頬を赤く染め、上目遣いでこちらの様子を伺う美雪、俺の好みの味についポロッと感想を零した。
「甘くて美味しい……」
感想を聞いた美雪は両手で頬を包み、満面の笑みを浮かべ始めた。
初めて見る表情に、俺の心は一瞬だけ水飛沫を上げたような感覚を覚えた。
時間はあっという間に過ぎ、全員が朝食を食べ終える前に予鈴が鳴り始めてしまった。
授業開始まで残り五分、足早に準備を済ませ教室へ駆けて行った――。
いつもの朝練後。いつも通り俺達は四人で朝食を摂っていた。
「それで、昨日の結果は?」
「どちらにせよ私には関係ありませんが」
「一世一代の挑戦なのだから、もちろん成功したのよね?」
俺は変わりない三人の対応に安堵さえ覚えていた。
俺自身、極端に何か変わった訳では無いが、これからの学校生活において、クラス内の気まずさに心が砕けそうでいた。
普通なら失恋で落ち込むところだが、逆に集中して練習に打ち込めていたとさえ思えた。
「フラれた、俺の初恋は儚く散った」
「ふぅーん……それで、珍しく落ち込んでるんだ? じゃあはい、これあげる」
「ん? え、あ、ありがとう?」
俺の弁当箱にカラカラと音が鳴る。
音の正体を確認すべく弁当箱に視線を落とす。そこには愛海の青色い箸があり、ミニハンバーグが投下されていた。
「え、くれるの?」
「うん、あげる」
「じゃあ、ありがたくいただいて――お、これ美味しいな! どこの冷食?」
「……いやそれ、手作り、だよ」
普段の態度から手料理とは遠い存在だと思っていた。
意外な一面に少し驚いたが、噛み締めていくと、中にチーズが入っていることに気づき更に驚く。
「マジか、すげぇじゃん。噛めば噛むほど口の中に味が広がるし、愛海って料理上手だったのな」
「……ありがと」
愛海から感謝の言葉を聞いたのは初めてだった。
あまりにも衝撃的過ぎて、愛海を直視して硬直していた。
俺の目線に気づいた愛海は、普段なら冷淡な言葉が飛んでくるはず。だが、まさかの目線を逸らすだけで、どことなく表情が緩んでいるような気がした。
愛海の異変に気付き、そのことで質問しようとしていると、またカランと音が鳴る。
「こういうの好きですよね。私も好きです。疲れた後は濃いめの味付けが美味しいですよね」
「お、え、あ。うん? そうだね?」
彩智から俺の好みについて初めて肯定の言葉を聞いた。
またしても弁当箱へ食材が投下されている。今度はブロック状の鮭の塩焼きが置かれていた。
お? なんだこれ。
こいつらのこの行動、もしかして、俺ってそんなに今惨めな感じ?
こいつらには今、俺は捨てられた小動物に見えてるのか? 拾って欲しそうな目でもしてんのか?
俺は様々な憶測を並べたが、答えはやはり悲壮感漂うものにしか行きつかなかった。
こういう状況でなければ喜べそうな状況だが、相手が相手だからそんな状況は全く想像できなかった。
これ以上変なことは起きないと思っていた矢先、そのまさかが起きた。
美雪は体を乗り出し、四つん這いで距離を詰めて来た。無言のまま接近してくる彼女に、俺は後方に左手を突き退いた。
平手打ちでも飛んでくるのかと思い、つい目を閉じたが、感触があったのは頬ではなく唇だった。
「ほら、口を開けてくださいな。あーん、です」
「あー」
状況が理解できなかったが、言われるまま口を開く。
すると、唇に触れていた柔らかい感触が口内に運ばれた。
「出来れば、その……感想を頂けましたらと……」
目を開き、言われるがまま口内の物を咀嚼。
頬を赤く染め、上目遣いでこちらの様子を伺う美雪、俺の好みの味についポロッと感想を零した。
「甘くて美味しい……」
感想を聞いた美雪は両手で頬を包み、満面の笑みを浮かべ始めた。
初めて見る表情に、俺の心は一瞬だけ水飛沫を上げたような感覚を覚えた。
時間はあっという間に過ぎ、全員が朝食を食べ終える前に予鈴が鳴り始めてしまった。
授業開始まで残り五分、足早に準備を済ませ教室へ駆けて行った――。
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