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第一章
第4話『俺は最強のゲーマーになるっ!』
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「はぁー……」
これから授業が始まるのだが……テストだ。
いつも通りの授業なら、先生にバレないようにアシスタントAI――と対話していても先生から注意されることはないんだが、このテストだけは別。
言葉を発して喋っているわけじゃないからいいと思うんだが。
どうやらセキュリティプログラムというものが起動しているらしく、起動した瞬間にバレてしまう。
つまり、テストだけは実力で挑まなければならない。
常日頃、勉強をしておけば良かったと後悔する時だ。
俺は必死に考えた。
だが無い知識を絞り出したところで、出てくるのは雀の涙程度。
頑張って半分ほど記入したが、正直なところ埋めたところの半分ぐらいしか正解している自信がない。
そして、あっという間にテストの時間が終わってしまった。
テストの回収が終わり、本日の日程は全て終了。
こういうテスト日は、ホームルームがないから神。
なら。
「ねえ暁――」
俺はアシスタントアバターからログアウトした。
途中、有坂から声をかけられたような気がしたが、今は話をしていられる時間の暇はない。
何か用件があるとしたら、どうせ後からメッセージでも届くだろう。
今日はテストという最悪な日であったが、それと同時に学校自体が早く終わる日でもある。
そんな最速で終われるような日を有効活用しないでどうするんだ。
昼飯を食べてないが、そんなことはどうだっていい。
「トイレは済ませたし、やるぞ。金策は頑張ったから今日はゲームし放題だ」
俺はすぐにゲームにログイン。
だが……浮かれていて完全に忘れていた。
ミヤビさんとパーティをそのままにしてしまっていただけではなく、フレンド登録をしていない。
つまり、再びミヤビさんとゲームをしたいと思うのであれば、パーティを解散するわけにはいかないということだ。
いやしかし思うのが、ミヤビさんと話をしたのがゲームの世界でよかった。
もしも現実世界で話をしていたのであれば、間違いなく鼻の下のを伸ばしていただろう。
表情豊かだが、そういう細部にこだわってくれていなくて感謝。
「まあでも、細かいことを気にしても仕方ないし、やりたいことを優先するか」
人の通りは少ない、か。
それもそうだ。
俺が今ログインしているのは、13時。
「にしても、こういうのいいよなあ」
目の前に広がる光景についそんな言葉が零れる。
何度か見たことのあるこういった景色。
様々なゲームをしていれば、どこも似通った中世だの海外の景色を模しただので、そういうのが一般的かつ解像度が低く設定されていた。
解像度が低いというのは文字通りそのままで、道や行き交う人々は現実世界そのものなのに、目線を上げた建物だけのっぺりしている感じ。
しかし嬉しいことに、このゲームは細部まで職人技だと思う。
もはや本物だな。
扉や窓ガラスからは太陽の光が反射し、木造建築からは木の匂いが漂ってくる。
街灯などの中に入っている何かは、何で出来ているか説明はできないが幻想的な心温まる光を発していた。
おっと、景色に感動するのはここまでだ。
ちょうど良い所にあるベンチへ腰を下ろして、ステータスウィンドウを展開。
この一番下に用意されている特別欄を指でタップ。
ステータスを確認するわけではなく、例の作業を始める。
――現実ステータスとの同期。
【最終確認】――【OK】or【NO】。
俺は迷うことなく【OK】を選択。
「よし、これで終わりだな」
視界中央に【更新終了】の文字が表示された。
ステータスを展開。
レベル2
耐久力2
攻撃力2
防御力2
敏捷力2
魔撃力2
素統力2
自由値2
という感じだったのが、
レベル22
耐久力22
攻撃力22
防御力22
敏捷力22
魔撃力22
素統力22
自由値22
「おお」
周りの目なんか気にせず、無意識に言葉を発していた。
これは凄い。
現実のステータスが反映されるなんて、なんて画期的なシステムなんだ。
しかも、昨日上がったレベルまで加算されている。
レベルアップに必要な経験値は違うから、少しだけ強引なような気はするが……まあ、スタートダッシュを決められるだけのオプションでもあるから、受けられる恩恵は今のうちだけだしいいか。
さて、いつまでもこうしてはいられない。
「行くか」
俺立ち上がり、早歩きで街から出る。
戦闘可能マップに出てからは、走って、走った。
昨日のミヤビさんと街中散策しながら、復活拠点設定をしたり、雑貨店で回復薬を購入したり、冒険者として必需品のマップを入手した。
嬉しいことに、このゲームでは武器の耐久値がない。
今までのゲームであったら、雀の涙ほどの所持金で予備の剣を購入しなくてはならなかったから、これは物凄い助かる。
『グルルゥ』
出たな犬っころ。
昨日の俺であったのなら、出方を伺う必要があった。
――だが。
「はっあ!」
抜刀した流れで放たれた一線で【ウルフ】は消滅。
経験値獲得――1。
レベルがかなり高くなったから、取得量が減ったということか。
なら、もうこの街近辺にいるわけにはいかない。
ミヤビさんとまた一緒に狩りをしたいけど……。
走りながらシステムウィンドウを操作し、パーティ欄を表示させる。
「またどこかで会う機会があったら謝ります」
俺は昨日の楽しい思い出を噛み締めながら、パーティ解散を選択。
本当に宜しいですか? 【OK】or【NO】――【OK】をタップする。
すると、すぐにパーティ欄にログアウト中の灰色で表示されているミヤビという名前が消えた。
「ごめんなさい、ミヤビさん」
そしてまた。
『グルゥ!』
もはや討伐というよりは作業として、ウルフを切り捨てた。
そして、このまま走る。
今までのゲームは、大体がスタートダッシュに乗り遅れてしまっていた。
だけど今なら間に合う。
ゲーマーなら一度は夢を見て、一度は本気になってみることがある。
俺はこのゲームで最強のゲーマーになってみせるんだ。
やるぞ、やってやるぞ!
俺は勢いそのまま、疲れることを知らない体で次の街まで走り続けた。
これから授業が始まるのだが……テストだ。
いつも通りの授業なら、先生にバレないようにアシスタントAI――と対話していても先生から注意されることはないんだが、このテストだけは別。
言葉を発して喋っているわけじゃないからいいと思うんだが。
どうやらセキュリティプログラムというものが起動しているらしく、起動した瞬間にバレてしまう。
つまり、テストだけは実力で挑まなければならない。
常日頃、勉強をしておけば良かったと後悔する時だ。
俺は必死に考えた。
だが無い知識を絞り出したところで、出てくるのは雀の涙程度。
頑張って半分ほど記入したが、正直なところ埋めたところの半分ぐらいしか正解している自信がない。
そして、あっという間にテストの時間が終わってしまった。
テストの回収が終わり、本日の日程は全て終了。
こういうテスト日は、ホームルームがないから神。
なら。
「ねえ暁――」
俺はアシスタントアバターからログアウトした。
途中、有坂から声をかけられたような気がしたが、今は話をしていられる時間の暇はない。
何か用件があるとしたら、どうせ後からメッセージでも届くだろう。
今日はテストという最悪な日であったが、それと同時に学校自体が早く終わる日でもある。
そんな最速で終われるような日を有効活用しないでどうするんだ。
昼飯を食べてないが、そんなことはどうだっていい。
「トイレは済ませたし、やるぞ。金策は頑張ったから今日はゲームし放題だ」
俺はすぐにゲームにログイン。
だが……浮かれていて完全に忘れていた。
ミヤビさんとパーティをそのままにしてしまっていただけではなく、フレンド登録をしていない。
つまり、再びミヤビさんとゲームをしたいと思うのであれば、パーティを解散するわけにはいかないということだ。
いやしかし思うのが、ミヤビさんと話をしたのがゲームの世界でよかった。
もしも現実世界で話をしていたのであれば、間違いなく鼻の下のを伸ばしていただろう。
表情豊かだが、そういう細部にこだわってくれていなくて感謝。
「まあでも、細かいことを気にしても仕方ないし、やりたいことを優先するか」
人の通りは少ない、か。
それもそうだ。
俺が今ログインしているのは、13時。
「にしても、こういうのいいよなあ」
目の前に広がる光景についそんな言葉が零れる。
何度か見たことのあるこういった景色。
様々なゲームをしていれば、どこも似通った中世だの海外の景色を模しただので、そういうのが一般的かつ解像度が低く設定されていた。
解像度が低いというのは文字通りそのままで、道や行き交う人々は現実世界そのものなのに、目線を上げた建物だけのっぺりしている感じ。
しかし嬉しいことに、このゲームは細部まで職人技だと思う。
もはや本物だな。
扉や窓ガラスからは太陽の光が反射し、木造建築からは木の匂いが漂ってくる。
街灯などの中に入っている何かは、何で出来ているか説明はできないが幻想的な心温まる光を発していた。
おっと、景色に感動するのはここまでだ。
ちょうど良い所にあるベンチへ腰を下ろして、ステータスウィンドウを展開。
この一番下に用意されている特別欄を指でタップ。
ステータスを確認するわけではなく、例の作業を始める。
――現実ステータスとの同期。
【最終確認】――【OK】or【NO】。
俺は迷うことなく【OK】を選択。
「よし、これで終わりだな」
視界中央に【更新終了】の文字が表示された。
ステータスを展開。
レベル2
耐久力2
攻撃力2
防御力2
敏捷力2
魔撃力2
素統力2
自由値2
という感じだったのが、
レベル22
耐久力22
攻撃力22
防御力22
敏捷力22
魔撃力22
素統力22
自由値22
「おお」
周りの目なんか気にせず、無意識に言葉を発していた。
これは凄い。
現実のステータスが反映されるなんて、なんて画期的なシステムなんだ。
しかも、昨日上がったレベルまで加算されている。
レベルアップに必要な経験値は違うから、少しだけ強引なような気はするが……まあ、スタートダッシュを決められるだけのオプションでもあるから、受けられる恩恵は今のうちだけだしいいか。
さて、いつまでもこうしてはいられない。
「行くか」
俺立ち上がり、早歩きで街から出る。
戦闘可能マップに出てからは、走って、走った。
昨日のミヤビさんと街中散策しながら、復活拠点設定をしたり、雑貨店で回復薬を購入したり、冒険者として必需品のマップを入手した。
嬉しいことに、このゲームでは武器の耐久値がない。
今までのゲームであったら、雀の涙ほどの所持金で予備の剣を購入しなくてはならなかったから、これは物凄い助かる。
『グルルゥ』
出たな犬っころ。
昨日の俺であったのなら、出方を伺う必要があった。
――だが。
「はっあ!」
抜刀した流れで放たれた一線で【ウルフ】は消滅。
経験値獲得――1。
レベルがかなり高くなったから、取得量が減ったということか。
なら、もうこの街近辺にいるわけにはいかない。
ミヤビさんとまた一緒に狩りをしたいけど……。
走りながらシステムウィンドウを操作し、パーティ欄を表示させる。
「またどこかで会う機会があったら謝ります」
俺は昨日の楽しい思い出を噛み締めながら、パーティ解散を選択。
本当に宜しいですか? 【OK】or【NO】――【OK】をタップする。
すると、すぐにパーティ欄にログアウト中の灰色で表示されているミヤビという名前が消えた。
「ごめんなさい、ミヤビさん」
そしてまた。
『グルゥ!』
もはや討伐というよりは作業として、ウルフを切り捨てた。
そして、このまま走る。
今までのゲームは、大体がスタートダッシュに乗り遅れてしまっていた。
だけど今なら間に合う。
ゲーマーなら一度は夢を見て、一度は本気になってみることがある。
俺はこのゲームで最強のゲーマーになってみせるんだ。
やるぞ、やってやるぞ!
俺は勢いそのまま、疲れることを知らない体で次の街まで走り続けた。
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