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第五章
第32話『あまりにも未知な領域すぎて』
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「う、うわあ……」
私は今、物凄い光景を目の当たりにしてしまった。
「一旦休憩っすね。美夜、大丈夫っすか?」
「う、うん」
音暖と浅葱さんだけで、合計10体のモンスターをあっという間に討伐。
未明さんは私の近くで待機してくれていた。
「ウォーミングアップにはまだまだ足りないわね」
「浅葱先輩、次は単独でやっちゃいます?」
「お~、それいいわね。じゃあ美夜ちゃんとお話してなさいな」
そんな話が繰り広げられていると、炎墨さんが咳払いをする。
「それはダメです。もしものことは……ないですが、戦い方を美夜さんに憶えてもらうという手筈だったでしょう」
「そういえばそうだったわね。完全に忘れていたわ。炎墨、ナイス」
「そういえばそうだったっす」
「あはは……」
私は今後、このノリについていけるのだろうか。
「じゃあ次は未明先輩と浅葱先輩っすね」
「そうですね」
「お~そういえば、なんだかんだ言って、ここは久しぶりよね」
「たしかに。数カ月ぶりですかね」
同じ隊なのに、どうして? という疑問を抱いたけど、音暖が補足を入れてくれた。
「美夜、観ていたらすぐにわかると思うっす。ちなみに、あたしと浅葱先輩は相性がいいので組む頻度はかなり高いっす」
「そ、そうなんだ?」
「そうっす」
音暖がそう言っているのだから、たぶんこれからの戦闘をしっかりと観察しよう。
私だって、もしかしたら一緒に戦うかもしれないんだから。
休憩時間はいつ頃終わったのか、という疑問は口に出さず、雅さんと炎墨さんの後ろを歩き始める。
と、すぐにまたしても合計10体のモンスターが行き先を塞いでしまっていた。
最終確認で教えてもらったけど、ダンジョンが活性化している時はモンスターが発生する頻度が増えてしまう……らしいんだけど、ここまで多いと確かに総力戦でモンスターを討伐しなきゃいけないんだなって理解できる。
「どっちから行く?」
「では僕から」
「はいはーい」
さっきも、雅さんと音暖はあんな感じに軽いやりとりをしていた。
そのおかげで私は緊張しすぎずに済んでいるんだけど……あのモンスター群もさっきも、初めて観るものばかり。
しかも強そうだから、本当にそんなテンションで大丈夫なんですか……?
「はぁああああっ!」
手筈通り、炎墨さんが先行して蝙蝠群へ突撃。
いつもの落ち着いている印象はどこへいってしまったのか――助走をつけたジャンプから、大きく振りかぶった拳で蝙蝠をぶん殴って叩き落す。
結果、その1体はたったの1撃で消滅した。
ダンジョンでもサングラスをしているんだ――と今更ながらに思いつつ、見えないけど、サングラスに隠れている目が笑っているような気がしてしまう。
「行くわよー」
次に雅さんが両刃剣を右に左に、お腹を一周させたり、首を一周させたり、自由自在に振り回す。
それと同じく栗色の長い髪が宙を舞わせながら、剣に触れた蝙蝠は、1体また1体とスパッスパッと切り裂かれて消滅していく。
「パワータイプの未明先輩と、テクニックタイプの浅葱先輩。どっちもやりたいようにやる場合、互いのポジションを正確に把握してないと邪魔になっちゃうっす」
「なるほど。そう考えると、さっきは雅さんと音暖は互いにやりたいようにやれてたってことなんだね」
「そうっすね。あたしはスピードタイプで攻撃力自体は高くないっすけど、ちょこまかと動いて戦うから、敵の攻撃も味方の攻撃も避けられるってことっす」
「音暖は連携上手なんだね。私だったら間違いなく足手まといになるから、音暖は凄いよ」
「へへっ、嬉しいことを言ってくれるんすね。感謝っす。まあでもあの2人は優しい方っすよ。なんだかんだ言って連携重視で戦ってくれるっすから」
「ここにいないお2人は違うの?」
ここでもまた、同じ隊なのにそんなことがあるんだ、と思ってしまう。
「そうっすよ。リーダーの神乃戯先輩は攻撃力お化けってだけなんすけど、もう1人の欠仇ってやつはヤバいっす。敵味方関係なく、攻撃を避けないなら同じ的としか思ってないようなヤベーやつなんす」
「もしかして私って、かなり幸運だったりする?」
「そうっすね、今回に関しては豪運を発揮してるっす」
かなり失礼だとはわかっているけど、そっと胸を撫で下ろしている自分がいる。
「なにはともあれ、未明さんと美夜は相性よさそうっすね。美夜が緊張しすぎてガチガチにならなければ、未明さんが攻守を切り替えながらなんとかしてくっるっす」
「なるほど。迷惑にならないよう頑張らないと」
「んで、あたしもまあまあ相性はよさそうっすね。最前線に出てモンスターに集中攻撃されても避け続けて攻撃し続けるんで、美夜はその隙を突き続けるんす」
「それは正直ちょっと気が引けるけど、わかったよ」
「浅葱先輩は、どうっすかねぇ。極稀に武器をスッ飛ばす時があるんで、そこが注意が必要かもっすね」
「え」
「まあ、稀っすよ。それよりも、浅葱先輩は防御とかはできないしスピードがあるわけでもないっすから、自衛が大事ってことっすね」
「わ、わかったよ」
たぶんこの先、もしもあの武器が飛んで来たらどうしよう……という不安は拭えないと思う。
……でも、先のことを考えたら、私も戦って休んでもらった方がいいに決まっている。
そろそろ私も護られているだけではダメだ。
「ねえ音暖。次は私と一緒に戦ってくれないかな」
「いいっすけど、大丈夫っすか? 普段の敵よりかなり強いと思うっすよ」
「正直に言ったら怖いよ。だけど、私だってただのお荷物でいたくないから」
「――そうっすか、わかったっす」
話が終わった頃には、雅さんと炎墨さんの戦闘は終わって――いると思ったら、別のモンスター群と戦い始めていた。
少し目線を逸らしただけだというのに。
それほどまでに今のダンジョンは危ないということなんだね。
でも弱気じゃダメ。
私だって、探索者だんだからっ!
私は今、物凄い光景を目の当たりにしてしまった。
「一旦休憩っすね。美夜、大丈夫っすか?」
「う、うん」
音暖と浅葱さんだけで、合計10体のモンスターをあっという間に討伐。
未明さんは私の近くで待機してくれていた。
「ウォーミングアップにはまだまだ足りないわね」
「浅葱先輩、次は単独でやっちゃいます?」
「お~、それいいわね。じゃあ美夜ちゃんとお話してなさいな」
そんな話が繰り広げられていると、炎墨さんが咳払いをする。
「それはダメです。もしものことは……ないですが、戦い方を美夜さんに憶えてもらうという手筈だったでしょう」
「そういえばそうだったわね。完全に忘れていたわ。炎墨、ナイス」
「そういえばそうだったっす」
「あはは……」
私は今後、このノリについていけるのだろうか。
「じゃあ次は未明先輩と浅葱先輩っすね」
「そうですね」
「お~そういえば、なんだかんだ言って、ここは久しぶりよね」
「たしかに。数カ月ぶりですかね」
同じ隊なのに、どうして? という疑問を抱いたけど、音暖が補足を入れてくれた。
「美夜、観ていたらすぐにわかると思うっす。ちなみに、あたしと浅葱先輩は相性がいいので組む頻度はかなり高いっす」
「そ、そうなんだ?」
「そうっす」
音暖がそう言っているのだから、たぶんこれからの戦闘をしっかりと観察しよう。
私だって、もしかしたら一緒に戦うかもしれないんだから。
休憩時間はいつ頃終わったのか、という疑問は口に出さず、雅さんと炎墨さんの後ろを歩き始める。
と、すぐにまたしても合計10体のモンスターが行き先を塞いでしまっていた。
最終確認で教えてもらったけど、ダンジョンが活性化している時はモンスターが発生する頻度が増えてしまう……らしいんだけど、ここまで多いと確かに総力戦でモンスターを討伐しなきゃいけないんだなって理解できる。
「どっちから行く?」
「では僕から」
「はいはーい」
さっきも、雅さんと音暖はあんな感じに軽いやりとりをしていた。
そのおかげで私は緊張しすぎずに済んでいるんだけど……あのモンスター群もさっきも、初めて観るものばかり。
しかも強そうだから、本当にそんなテンションで大丈夫なんですか……?
「はぁああああっ!」
手筈通り、炎墨さんが先行して蝙蝠群へ突撃。
いつもの落ち着いている印象はどこへいってしまったのか――助走をつけたジャンプから、大きく振りかぶった拳で蝙蝠をぶん殴って叩き落す。
結果、その1体はたったの1撃で消滅した。
ダンジョンでもサングラスをしているんだ――と今更ながらに思いつつ、見えないけど、サングラスに隠れている目が笑っているような気がしてしまう。
「行くわよー」
次に雅さんが両刃剣を右に左に、お腹を一周させたり、首を一周させたり、自由自在に振り回す。
それと同じく栗色の長い髪が宙を舞わせながら、剣に触れた蝙蝠は、1体また1体とスパッスパッと切り裂かれて消滅していく。
「パワータイプの未明先輩と、テクニックタイプの浅葱先輩。どっちもやりたいようにやる場合、互いのポジションを正確に把握してないと邪魔になっちゃうっす」
「なるほど。そう考えると、さっきは雅さんと音暖は互いにやりたいようにやれてたってことなんだね」
「そうっすね。あたしはスピードタイプで攻撃力自体は高くないっすけど、ちょこまかと動いて戦うから、敵の攻撃も味方の攻撃も避けられるってことっす」
「音暖は連携上手なんだね。私だったら間違いなく足手まといになるから、音暖は凄いよ」
「へへっ、嬉しいことを言ってくれるんすね。感謝っす。まあでもあの2人は優しい方っすよ。なんだかんだ言って連携重視で戦ってくれるっすから」
「ここにいないお2人は違うの?」
ここでもまた、同じ隊なのにそんなことがあるんだ、と思ってしまう。
「そうっすよ。リーダーの神乃戯先輩は攻撃力お化けってだけなんすけど、もう1人の欠仇ってやつはヤバいっす。敵味方関係なく、攻撃を避けないなら同じ的としか思ってないようなヤベーやつなんす」
「もしかして私って、かなり幸運だったりする?」
「そうっすね、今回に関しては豪運を発揮してるっす」
かなり失礼だとはわかっているけど、そっと胸を撫で下ろしている自分がいる。
「なにはともあれ、未明さんと美夜は相性よさそうっすね。美夜が緊張しすぎてガチガチにならなければ、未明さんが攻守を切り替えながらなんとかしてくっるっす」
「なるほど。迷惑にならないよう頑張らないと」
「んで、あたしもまあまあ相性はよさそうっすね。最前線に出てモンスターに集中攻撃されても避け続けて攻撃し続けるんで、美夜はその隙を突き続けるんす」
「それは正直ちょっと気が引けるけど、わかったよ」
「浅葱先輩は、どうっすかねぇ。極稀に武器をスッ飛ばす時があるんで、そこが注意が必要かもっすね」
「え」
「まあ、稀っすよ。それよりも、浅葱先輩は防御とかはできないしスピードがあるわけでもないっすから、自衛が大事ってことっすね」
「わ、わかったよ」
たぶんこの先、もしもあの武器が飛んで来たらどうしよう……という不安は拭えないと思う。
……でも、先のことを考えたら、私も戦って休んでもらった方がいいに決まっている。
そろそろ私も護られているだけではダメだ。
「ねえ音暖。次は私と一緒に戦ってくれないかな」
「いいっすけど、大丈夫っすか? 普段の敵よりかなり強いと思うっすよ」
「正直に言ったら怖いよ。だけど、私だってただのお荷物でいたくないから」
「――そうっすか、わかったっす」
話が終わった頃には、雅さんと炎墨さんの戦闘は終わって――いると思ったら、別のモンスター群と戦い始めていた。
少し目線を逸らしただけだというのに。
それほどまでに今のダンジョンは危ないということなんだね。
でも弱気じゃダメ。
私だって、探索者だんだからっ!
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