The Last Word~ノークスの手記(千年放浪記完結編)

しらき

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追うは先人、世界の謎

軌跡を追う旅へ

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 …そもそも俺はホルニッセやヴァッフェル王国について知らないことが多すぎる。初めてホルニッセに接触した時(向こうから接触してきたのだが)は一方的に剣崎への復讐の手助けを頼まれただけだった。しかしあの時点でこちらのことを知られていたのは確かである。
 次に会ったのは理研特区。本当に偶然の再会だったが、そこでもやはり現地の問題に足を突っ込みながらもホルニッセは剣崎への復讐のために自身も不老不死に近い体質になる方法を探していた。
 勝手に城を抜け出すお騒がせな王子、容姿端麗でフレンドリーな国民のアイドル、復讐のためだけにあらゆる可能性を探るストイックな男…ホルニッセ・ツァハリアスは3つの顔を持つ人物であることはこれまでの関わりや噂などから知ることができた。まあ俺が直接見たのは3つ目の顔だけであるような気もするが。
 さて、とりあえず俺はそんなホルニッセに縁の深いヴァッフェル王国に再度訪れたわけだ。剣崎のように王族に近付くのは難しいだろうが、何故か必ず彼らに詳しいマニア的な国民が1人や2人、いるものだ。そういった存在を探しつつ剣崎が悲劇を起こさないように見張っていようというのが俺のプランだ。
 「…あれ?千だよね!?うん、あの時のまんまだし人違いなわけがない!」
「…!?」
迂闊だった、一度行ったことがある場所に足を踏み入れるということは昔の知り合いにばったり会う可能性もあるわけで…
「覚えてる?おれだよ!マルコだよ!」
「あ、ああ。割と面影あるしそうだろうとは思ったよ。」
「またヴァッフェルに来てくれたんだねー!それにしても当時も思ったけど千って年齢不詳だよね。旅人って年月の経過に縛られないものなのかい?」
「ま、まあそういうものだな。俺の場合その…中途半端なところで背も止まってしまったしな。」
「なるほど~。その見た目で実はアラサーのおじさんとかだったりして?」
「さ、さあ、どうだろうな。」
実際は3桁歳なのだが…。それにしてもアラサーはおじさんと呼んでいいのか…?(いや、俺の知り合いのアラサーをそう呼んだら確実にキレられるな、うん。)
「それにしてもこの再会は神の奇跡だ!」
「神の奇跡…?そんな大袈裟な…」
「いいや、本当に運が良かったというか、タイミングが良かったというか…。ちょうど君の話をしていたんだ。」
「俺の話を?当時のことでも振り返っていたのか?」
「いや、君に会わせたい子がいるというか、その子が求めている人材に君が相応しいというか…」
「よりによってどこにいるかもわからない俺を紹介したのか?俺がここに戻ってくる可能性も低いだろうに…」
「だから神の奇跡って言ってるじゃんか!こういう知り合いもいたけど流石にもう会えるかもわからないよねーみたいな話をロンとしていたわけで…」
「で、俺みたいなのを求めているやつってどんな…」
「Mr.Tiglio、まさか彼なのかい?」
「あれ、ついてきたんだ。そうそうまさかここを通りかかるとは思わなかったから急に店を飛び出しちゃったけど。」
「Fantastic!…まさに奇跡だな。」
ああ、この言語は聞き覚えがある…。宮間語…じゃない、俺の中では勝手にかつて会った話者の名前で呼んでいるが確か英語と言ったか。こちらの世界の言葉ではないのでまた”向こう”からのおたずね人か。
「…えっと坊主?嬢ちゃん?」
「ladyではないが…”坊主”と呼ばれるのは頂けないな、上品ではない。それに私にはコウ・ノークスという名前があるからな。Mr.白城。」
「…それで、コウは俺に一体なんの用なんだ?」
「私はこの世界に来たばかりなのだが、この世界そのものや元いた世界との関係性が知りたいのだ。あなたはこの世界に詳しいと聞いたのだが…」
めんどくさそうなガキだな…。まるで剣崎とホルニッセを足して2で割ったような感じというか…。そもそもいきなり異世界に飛ばされて今後の生活を気にするのではなく世界の仕組みを知りたがるなんて相当な変わり者だ。
「俺だって表地球との関係についてはサッパリなんだが…」
「それでも構わない。私はあなたと旅がしたいのだ。」
「…は?旅を?」
「へぇ、来たばかりなのにヴァッフェルにはあまり滞在してくれないのかー…」
「俺もヴァッフェルに来たばかりなんだが?」
「ならばその用が済んでからでもいい。」
…厄介な。今俺は旅をしている場合ではないというのに。ヴァッフェルに来たのも決まった予定があるからではなく剣崎を見張るためで…剣崎…そうか!
「いや、ヴァッフェルに来た目的はただ観光だ。また別の機会に来てもいいし、あんたと一緒にさらっと済ませてもいい。」
「本当か!?感謝する!」
「まあ任せろ。あんた、運がいいぜ。観光ガイドには載っていない裏地球資料館に行けるんだからな。」
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