1 / 8
追うは先人、世界の謎
新たな芽
しおりを挟む
2060年、異常気象により突如東京の街に現れた竜巻は恐らく大きな被害をもたらしたことだろう。それとも数年ぶりに母国に帰国したばかりだった私には驚くべき出来事だったあれはもはや日本ではよくあることになっていたのだろうか。いや、10年でそこまで気候が変わることはないだろう。それにそれほどの気候変動ならブリテンの地にもニュースとして飛び込んでくるはずである。
…私があれこれ思考を巡らせているのは事の真相を確認する術を失ったからである。端的に言えば私は死んだのだ。もしくは私自身も趣味で書いていたような別世界に転移する物語、それを体験しているのだろう。いずれにせよ久々に帰ってきた故郷の土を再度踏むことは不可能であることはわかる。…だとしたらやるべきことはただ一つ。ずっと憧れていた空想世界を心ゆくまで探究するのみ。
The Last Word~ノークスの手記
「…今回ばかりはお前を助けることはできないな。」
「そんなぁ…頼むよ、俺まだまだやることあるんだって…。『世界論』も全然完成には程遠いしさ…」
「大体何度も命を継ぎ足してよく飽きないよな。『世界論』だって永遠に完成しないことくらいわかってるだろ?」
「そりゃ全世界の情報を記録するには永遠の時間が必要さ。だからお前を頼ってるんだろ!」
ひょんなことから俺はこの男、剣崎雄に寿命をたかられている。不老不死者である俺の血液は普通の人間のものとは違うらしく、一部の適合者に与えることで相手を同体質にできる。ただし期限があるようで爪や髪が伸び始めるといったサインが出始めたらこうして剣崎は”延長”を求め俺のもとに訪れる。
「結局俺はお前のせいで死ぬことができないのか…」
「いやそれは元からだろ。ていうか勝手に死ぬなよ!今やその体はお前1人のものじゃないんだから!」
「それが寿命を搾取していくヒモのセリフじゃなきゃなぁ…」
「ほんと一体どういう心境の変化だ?最近は最初の時みたいに肉ごと持っていかれるのは嫌だと言って小瓶のストックまで用意していたじゃんか。」
「用意はあるぜ。だが先に言うべきことがあるんじゃないか?」
「言うべきこと?なんだ…?”いただきます”?”命をありがとうございます”?」
「…。いや、もしかしてホルニッセが言っていたことはデマ?勘違い?」
「ん?懐かしい名前だな。もしかして人殺しの手伝いは出来ないってか?」
…!やはり信じ難かったが、剣崎がヴァッフェル王国王妃を殺したのは事実だったのか。
「…なんだよ、分かってるんじゃないか。流石に殺しはやらないと思ったがなぁ…」
「これには事情がある…だなんて言葉を期待しているんだろうが、生憎だな。ただ1つ言い訳させてくれ、王妃を殺す気はなかった。俺の狙いはホルニッセ本人だったからな。」
「…なら尚更お前を助けるわけにはいかない。この力は殺しのために使うべきじゃないからな。」
「あらら、正義ぶっちゃって。更築の内閣府を炎上させたのはどこのどいつだったっけ?」
「あれは…」
そういえばそんなこともあったか。もう1世紀以上前のことだが。
「復讐はノーカンか?自分のことは棚に上げるなんてずるいよなぁ…」
「…クソっ、1つ条件がある。」
「おうよ。」
「ホルニッセを殺そうなんて考えるなよ。」
「はいはい、しょーがないな。」
「…」
いやなんで俺はホルニッセを庇おうとしているんだ。剣崎とホルニッセ、どちらの味方をしたいかと言われれば中立でいたい、と答える程度にはどちらも好きではない。まあ単純に俺が生かしているやつが殺人を犯しているなんて気分が悪いからな。
それにしてもホルニッセの人違いである可能性も疑ったが実際剣崎はヴァッフェル王族に近付いたことがあったようだった。以前会った時ヴァッフェル王国には行ったことがないと言っていたが…。
「“ ホルニッセを殺すな”、か…。残念だがお前のためにもその約束は守れねぇな。」
…私があれこれ思考を巡らせているのは事の真相を確認する術を失ったからである。端的に言えば私は死んだのだ。もしくは私自身も趣味で書いていたような別世界に転移する物語、それを体験しているのだろう。いずれにせよ久々に帰ってきた故郷の土を再度踏むことは不可能であることはわかる。…だとしたらやるべきことはただ一つ。ずっと憧れていた空想世界を心ゆくまで探究するのみ。
The Last Word~ノークスの手記
「…今回ばかりはお前を助けることはできないな。」
「そんなぁ…頼むよ、俺まだまだやることあるんだって…。『世界論』も全然完成には程遠いしさ…」
「大体何度も命を継ぎ足してよく飽きないよな。『世界論』だって永遠に完成しないことくらいわかってるだろ?」
「そりゃ全世界の情報を記録するには永遠の時間が必要さ。だからお前を頼ってるんだろ!」
ひょんなことから俺はこの男、剣崎雄に寿命をたかられている。不老不死者である俺の血液は普通の人間のものとは違うらしく、一部の適合者に与えることで相手を同体質にできる。ただし期限があるようで爪や髪が伸び始めるといったサインが出始めたらこうして剣崎は”延長”を求め俺のもとに訪れる。
「結局俺はお前のせいで死ぬことができないのか…」
「いやそれは元からだろ。ていうか勝手に死ぬなよ!今やその体はお前1人のものじゃないんだから!」
「それが寿命を搾取していくヒモのセリフじゃなきゃなぁ…」
「ほんと一体どういう心境の変化だ?最近は最初の時みたいに肉ごと持っていかれるのは嫌だと言って小瓶のストックまで用意していたじゃんか。」
「用意はあるぜ。だが先に言うべきことがあるんじゃないか?」
「言うべきこと?なんだ…?”いただきます”?”命をありがとうございます”?」
「…。いや、もしかしてホルニッセが言っていたことはデマ?勘違い?」
「ん?懐かしい名前だな。もしかして人殺しの手伝いは出来ないってか?」
…!やはり信じ難かったが、剣崎がヴァッフェル王国王妃を殺したのは事実だったのか。
「…なんだよ、分かってるんじゃないか。流石に殺しはやらないと思ったがなぁ…」
「これには事情がある…だなんて言葉を期待しているんだろうが、生憎だな。ただ1つ言い訳させてくれ、王妃を殺す気はなかった。俺の狙いはホルニッセ本人だったからな。」
「…なら尚更お前を助けるわけにはいかない。この力は殺しのために使うべきじゃないからな。」
「あらら、正義ぶっちゃって。更築の内閣府を炎上させたのはどこのどいつだったっけ?」
「あれは…」
そういえばそんなこともあったか。もう1世紀以上前のことだが。
「復讐はノーカンか?自分のことは棚に上げるなんてずるいよなぁ…」
「…クソっ、1つ条件がある。」
「おうよ。」
「ホルニッセを殺そうなんて考えるなよ。」
「はいはい、しょーがないな。」
「…」
いやなんで俺はホルニッセを庇おうとしているんだ。剣崎とホルニッセ、どちらの味方をしたいかと言われれば中立でいたい、と答える程度にはどちらも好きではない。まあ単純に俺が生かしているやつが殺人を犯しているなんて気分が悪いからな。
それにしてもホルニッセの人違いである可能性も疑ったが実際剣崎はヴァッフェル王族に近付いたことがあったようだった。以前会った時ヴァッフェル王国には行ったことがないと言っていたが…。
「“ ホルニッセを殺すな”、か…。残念だがお前のためにもその約束は守れねぇな。」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蒼緋の焔~The Crisis Hijiri Railway(千年放浪記-本編1)
しらき
キャラ文芸
The Crisis of Hijiri Railway…”時間に殉じた者の話”
千年放浪記シリーズ蒼緋編序章。齢30で命を落とした聖電鉄の若き社長、三又聖は現世復帰のチャンスを得る。時間はたくさん与えられた、今度はもっと自由に暮らそう。もうあの頃のような生活はやめて…
※ジャンルやタグをより有効活用するために以前投稿していた蒼緋の焔総集編から序章のみ切り離しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜
菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。
私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ)
白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。
妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。
利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。
雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。
深海のトキソプラズマ(千年放浪記-本編5上)
しらき
SF
千年放浪記シリーズ‐理研特区編(2)”歴史と権力に沈められた者たちの話”
「蝶、燃ゆ」の前日譚。何故あの寄生虫は作り出されたのか、何故大天才杉谷瑞希は自ら命を絶ったのか。大閥の御曹司、世紀の大天才、異なる2つの星は互いに傷つけ合い朽ちていくのであった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる