上 下
6 / 7

崩壊、閉幕の前に

しおりを挟む
崩壊、閉幕の前に

 「久しぶりだな。…なんだ、再会を喜ぶ余裕はなさそうだな。」
「師匠!いつ帰ってきたのですか!」
「俺が大好きな科学技術の気配を感じたから、な。」
師匠こと新井和彦は最強の剣豪と噂される人物で俺に1人で生きるための術を教えてくれた。好奇心旺盛で各地を放浪している。人物と言ったが正確には半人半妖で恐らく100歳は超えている。新しいもの、特に科学が好きといった点妖怪としては異端な存在だ。
「しかし御存じないでしょうけどまた新技術の芽は…」
「聖電鉄の件だろ?社長が心臓を一刺しされて死亡。人を操る妖術ってのは恐ろしいものだ。」
「妖術…!?てっきりアンチが紛れ込んだのかと…」
「ああ、そうだ。社員が操られたわけではない。元々操られているやつが入り込んだだけだ。反対派だけじゃあない、聖教だかなんかの信者たちも奴の手先だったわけさ。」
「奴とは…?」
「石野櫻。またの名を御影石桜花の怪。装飾品など石を用いたものを介して人を操る厄介な妖怪だ。気に入らないもの…、特に科学技術などを排除するために動いているようだ。」
「まさかこの間会ったやつが…」
「石野に会ったのか!?」
「ああ、恐らく。和装で、男だか女だかわからない、というか人間離れしたような見た目で…科学技術を嫌っているようだった。」
「それは石野だ。…マズい、お前には接触させたくなかったのだが。」
「何故です。」
「あいつは秩序を何よりも大事にする。不老不死なんて自然界の掟に反した体質のお前を放ってはおかないだろう。」
「しかし俺だってそんなやつに負けるほど弱くは…」
「あれは自分の手は汚さない。聖電鉄の件だってそうだったろう?」
「確かに…。」
「とにかく石野に洗脳された人々のことは俺に任せろ。聖電鉄にはこれからも頑張って欲しいんだ。お前がもう1人の黒幕を処理してこい。」
「もう1人の黒幕…?それは誰なんですか。」
「“家”に帰ればわかることさ。まったく、とんだ女狐がいたもんだぜ。」


 「まさかあんたが黒幕だったとはな。」
「あら、なんのことかしら。今忙しいの。悪いけど千坊だとしてもお相手できないわよ。」
「あれだけ支援していた聖電鉄を潰すための手続きに追われているってか?」
「…聖社長を始末した今、彼らは勝手に潰れるわよ。」
「始末だと!?ふざけるな!表向きは近代化政策を掲げておきながら裏では妖怪共と手を組んで…あんたの目的はなんだ!」
「別に何もないわ。石野さんたちと協調関係を築けば一生安泰だったってだけよ。」
「そのために…そんなことのために聖は…!」
「不老不死のくせに庶民の命を気にかけるのね。面白い子。」
「なっ…!」
「総理大臣の私がよくわからない孤児を拾うだなんておかしいと思わなかったの?石野さんから与えられた条件は指定された企業を膨張させ自滅させることだけではないわ。あなたの観察、あわよくば始末。それも私に与えられた任務よ。」
怒りだけでこの国のトップを殺すわけにはいかない。だが、こいつを生かしておくことで俺自身にも危険が及ぶなら話は別だ。元々人間的には好きではなかったがこの国の発展に向けた思いもフェイクならば…いくらSPを呼んでもらっても構わない。俺の力ならこの建物ごと消し去ることができる…!
「やっぱり俺は人間が嫌いだっ…!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

深海のトキソプラズマ(千年放浪記-本編5上)

しらき
SF
千年放浪記シリーズ‐理研特区編(2)”歴史と権力に沈められた者たちの話” 「蝶、燃ゆ」の前日譚。何故あの寄生虫は作り出されたのか、何故大天才杉谷瑞希は自ら命を絶ったのか。大閥の御曹司、世紀の大天才、異なる2つの星は互いに傷つけ合い朽ちていくのであった…

神妖大戦争~灰燼に帰するメビウス(千年放浪記-月城編2)

しらき
キャラ文芸
不老不死の人間を作り寂しさを紛らわした創造神、月城志都。しかし自然法則や秩序を重んじる妖怪たちは不老不死の人間というイレギュラーな存在を許さなかった! 白城千という1人の人間から始まった大戦争は様々な種族と広大な土地を巻き込んで展開していくのだった…

少年、その愛 〜愛する男に斬られるのもまた甘美か?〜

西浦夕緋
キャラ文芸
15歳の少年篤弘はある日、夏朗と名乗る17歳の少年と出会う。 彼は篤弘の初恋の少女が入信を望み続けた宗教団体・李凰国(りおうこく)の男だった。 亡くなった少女の想いを受け継ぎ篤弘は李凰国に入信するが、そこは想像を絶する世界である。 罪人の公開処刑、抗争する新興宗教団体に属する少女の殺害、 そして十数年前に親元から拉致され李凰国に迎え入れられた少年少女達の運命。 「愛する男に斬られるのもまた甘美か?」 李凰国に正義は存在しない。それでも彼は李凰国を愛した。 「おまえの愛の中に散りゆくことができるのを嬉しく思う。」 李凰国に生きる少年少女達の魂、信念、孤独、そして愛を描く。

外伝‐剣崎雄の世界論

しらき
キャラ文芸
千年放浪記シリーズ‐外伝。”もう1人の記録者の話” 音楽の名門、剣崎家の一人息子剣崎雄は富も権力も才能も持っていた。 周りの大人たちはみんな俺を可愛がってくれる!当然!俺は神に愛された天下の剣崎様だからね!…ならこの物足りなさは何?そうか。俺、外の世界のこと何も知らないんだ。

裏鞍馬妖魔大戦

紺坂紫乃
キャラ文芸
京都・鞍馬山の『裏』は妖や魔物の世界――誰よりも大切だった姉の家族を天狗の一派に殺された風の魔物・風魔族の末裔である最澄(さいちょう)と、最澄に仲間を殺された天狗の子・羅天による全国の天狗衆や妖族を巻き込んでの復讐合戦が幕を開ける。この復讐劇の裏で暗躍する存在とは――? 最澄の義兄の持ち物だった左回りの時計はどこに消えたのか?  拙作・妖ラブコメ「狐の迎賓館-三本鳥居の向こう側-」のスピンオフとなります。前作を読んでいなくても解るように書いていくつもりです。

化想操術師の日常

茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。 化想操術師という仕事がある。 一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。 化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。 クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。 社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。 社員は自身を含めて四名。 九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。 常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。 他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。 その洋館に、新たな住人が加わった。 記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。 だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。 たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。 壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。 化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。 野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。

月城のメモリー(千年放浪記-月城編1)

しらき
キャラ文芸
千年放浪記過去編。悠久の時を生き退屈していたとある創造神はコンサートホールを造り演奏家たちを集め、彩りを手に入れた。しかしパーツのように交代していく人間たちを見て、神は自身を永久に楽しませてくれる唯一を求めるようになったのであった…

イケメン政治家・山下泉はコメントを控えたい

どっぐす
キャラ文芸
「コメントは控えさせていただきます」を言ってみたいがために政治家になった男・山下泉。 記者に追われ満を持してコメントを控えるも、事態は収拾がつかなくなっていく。 ◆登場人物 ・山下泉 若手イケメン政治家。コメントを控えるために政治家になった。 ・佐藤亀男 山下の部活の後輩。無職だし暇でしょ?と山下に言われ第一秘書に任命される。 ・女性記者 地元紙の若い記者。先頭に立って山下にコメントを求める。

処理中です...