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Memoire
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―「なあ、あの子可愛くね?」
「え、どの子?」
「あれだよ、あのピンク髪で小柄な子!未成熟だけどさ、守ってあげたいって感じじゃん!」
「ああ…お前知らないのか?あれは“ 魔女”だ。やめといた方がいいぜ。」
「魔女?」
「最高学年のナタリー・シュランゲ。入学してからずっと魔法の成績がトップらしいぜ。なんでも可愛い見た目に騙されて寄っていった男は皆消し炭にされるとか。」
「ええっ、あんなに可愛いのに!?」
「死にたくないならあれと関わるのはマジでやめときな。」
何故こちらに聞こえるように話すのだろう。男なら“ 可愛い見た目に騙されるな、あいつは凶暴な魔女だ”、女なら“ あいつは魔術で男を手玉に取る魔女だ”…。あたしだって好きでこんな力持って生まれたわけじゃない。身体が成長しなかったのは魔力のせいだ。“ 守ってあげたい女の子”なんてせいぜい同年代の中では小柄な方といったくらいの体格であって、18にもなって初等部のガキどもと同じくらいの体格のあたしは異常体質、可愛いじゃなくて恐ろしい。
「はー、学園生活も今年で終わりか…。結局何も面白いことは無かったわね。こんなことなら素敵なボーイフレンドと一緒に青春を過ごすなんて夢はさっさと捨てて大学に飛び級で入れば良かったわ…」
思い返してみれば何度も上にあがるチャンスはあったのだ。でもあたしだって他の大勢の学生みたいに友達や恋人と輝かしい青春を味わってみたかった。飛び級で大学に入ってしまったら学祭などの中等学院ならではの行事を無視するだけでなく、同級生たちとの壁がより分厚くなるに決まっている。大学に行ったら行ったで子どもが紛れ込んでいるとか言われるに違いないわ!
「あのっ!ナタリー先輩ですよね…!」
「…そうだけど。」
振り向いてみると今まで向けられたことの無い、純粋で眩い眼をした女子生徒が立っていた。
「真新しい制服…あんた1年ね。なによ、噂の珍獣の観察にでも来たの?」
「いえ、そんな…!確かに噂で先輩のことを知りましたが、私は先輩の魔法に憧れて…!」
「…驚いた、あんた大人しそうな見た目して力に興味があるのね。」
「力というか…私は治癒魔法に憧れてて…」
「治癒魔法?あたし別にそっちは専門じゃないわよ。」
「使えるだけでもすごいんです!直接的な力は持たないのにあらゆる戦闘魔法よりも難易度は上。この学院でも治癒魔法が使える人はなかなかいません!」
「いや、教師とかでいるでしょ。保健医とか。」
「頼んだのですが、1年には無理だと断られてしまいまして…」
「じゃああたしも断るわよ。」
「そこをなんとか…。こう言っては何ですが、噂に聞く限りナタリー先輩の実力は教師以上だと思うので…」
「なーに、優等生っぽいのに先生を貶すのね。まあいいわ、暇だから教えてあげる。言っとくけどあたしが卒業するまでだからね。1年で何も成長しなかったら諦めな。」
「…!ありがとうございます!」
「そうだ、あんた名前は?あたしだけ知られてんのも何かヤだし。」
「ああ、名前も名乗らずベラベラと…失礼しました!私の名前は…」
…懐かしい夢を見た。学生時代誰もがあたしを避け、全く人との交流が無い学生生活を過ごしたと思い込んでいたが、最後の1年は子犬が付きまとってきたのだった。だが彼女の顔も名前もほとんど思い出せない。たぶん興味が無かったからだろう。
まあそんな過去のことはどうでもいい。せっかく愛しのホルニを”物理的には”手に入れたのだから、彼の心まであたしのものになるように頑張らなきゃ。これだけは魔法に頼らない。だって彼は特別だから…
「え、どの子?」
「あれだよ、あのピンク髪で小柄な子!未成熟だけどさ、守ってあげたいって感じじゃん!」
「ああ…お前知らないのか?あれは“ 魔女”だ。やめといた方がいいぜ。」
「魔女?」
「最高学年のナタリー・シュランゲ。入学してからずっと魔法の成績がトップらしいぜ。なんでも可愛い見た目に騙されて寄っていった男は皆消し炭にされるとか。」
「ええっ、あんなに可愛いのに!?」
「死にたくないならあれと関わるのはマジでやめときな。」
何故こちらに聞こえるように話すのだろう。男なら“ 可愛い見た目に騙されるな、あいつは凶暴な魔女だ”、女なら“ あいつは魔術で男を手玉に取る魔女だ”…。あたしだって好きでこんな力持って生まれたわけじゃない。身体が成長しなかったのは魔力のせいだ。“ 守ってあげたい女の子”なんてせいぜい同年代の中では小柄な方といったくらいの体格であって、18にもなって初等部のガキどもと同じくらいの体格のあたしは異常体質、可愛いじゃなくて恐ろしい。
「はー、学園生活も今年で終わりか…。結局何も面白いことは無かったわね。こんなことなら素敵なボーイフレンドと一緒に青春を過ごすなんて夢はさっさと捨てて大学に飛び級で入れば良かったわ…」
思い返してみれば何度も上にあがるチャンスはあったのだ。でもあたしだって他の大勢の学生みたいに友達や恋人と輝かしい青春を味わってみたかった。飛び級で大学に入ってしまったら学祭などの中等学院ならではの行事を無視するだけでなく、同級生たちとの壁がより分厚くなるに決まっている。大学に行ったら行ったで子どもが紛れ込んでいるとか言われるに違いないわ!
「あのっ!ナタリー先輩ですよね…!」
「…そうだけど。」
振り向いてみると今まで向けられたことの無い、純粋で眩い眼をした女子生徒が立っていた。
「真新しい制服…あんた1年ね。なによ、噂の珍獣の観察にでも来たの?」
「いえ、そんな…!確かに噂で先輩のことを知りましたが、私は先輩の魔法に憧れて…!」
「…驚いた、あんた大人しそうな見た目して力に興味があるのね。」
「力というか…私は治癒魔法に憧れてて…」
「治癒魔法?あたし別にそっちは専門じゃないわよ。」
「使えるだけでもすごいんです!直接的な力は持たないのにあらゆる戦闘魔法よりも難易度は上。この学院でも治癒魔法が使える人はなかなかいません!」
「いや、教師とかでいるでしょ。保健医とか。」
「頼んだのですが、1年には無理だと断られてしまいまして…」
「じゃああたしも断るわよ。」
「そこをなんとか…。こう言っては何ですが、噂に聞く限りナタリー先輩の実力は教師以上だと思うので…」
「なーに、優等生っぽいのに先生を貶すのね。まあいいわ、暇だから教えてあげる。言っとくけどあたしが卒業するまでだからね。1年で何も成長しなかったら諦めな。」
「…!ありがとうございます!」
「そうだ、あんた名前は?あたしだけ知られてんのも何かヤだし。」
「ああ、名前も名乗らずベラベラと…失礼しました!私の名前は…」
…懐かしい夢を見た。学生時代誰もがあたしを避け、全く人との交流が無い学生生活を過ごしたと思い込んでいたが、最後の1年は子犬が付きまとってきたのだった。だが彼女の顔も名前もほとんど思い出せない。たぶん興味が無かったからだろう。
まあそんな過去のことはどうでもいい。せっかく愛しのホルニを”物理的には”手に入れたのだから、彼の心まであたしのものになるように頑張らなきゃ。これだけは魔法に頼らない。だって彼は特別だから…
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