蒼緋の焔(千年放浪記-本編3)

しらき

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The Eraser of Constellation

軌跡(ほし)を辿る-6

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2度目の
 やっぱり段々と気配が強くなっている。こちらが正解だ。もし僕がタイキみたいに人と話すのが上手ければ白城さんたちにも来てもらったが、残念ながら僕にはこの不可思議な現象に説得力を持たせることは出来ない。きっと”時を遡ったからこの後の展開がわかる”などと言っても妄言にしか聞こえない。華那千代や魔法学に詳しい僕でさえそう思うだろう。
 「いた…!やっぱりあれほどの大きさのものが見つからないなんておかしな話だ。瞬間移動でもできるのか…?」
よくわからない恐ろしい生き物だがあれは元々僕が無意識のうちに召喚したものだ、ということは召喚を解くことも僕にはできるはず…!
「普通は自然消滅するから消すのなんて久々だけど…確かキャンセルは左手に力を込めて…」
魔導書などは格好にすぎないがどうにもこれがないと落ち着かないので適当なページを開きそこに手をかざした。一度発動したものを取り消す時は赤っぽい魔法陣が出るのだが、確かに目の前に赤い光が見える。
「…!?なんで!?魔法陣は出ているのにドラゴンが消えない!あれは僕が召喚したものではないのか!?」
こうしている間にもタイキがこちらに向かって来ているはずだ。確かにあのドラゴンはかつて僕が無意識に召喚してしまったものだと思ったが…、いや待て、あの事故は何年も前のことだ。何年も持続する召喚魔法はイレギュラーだと思うが、何年、いや何十年も効果が継続する魔法は障壁系とかならばあり得る。そう考えれば別にキャンセルに時効はないと思うのに…
「まさか戻すのにもそれ相応の力が必要…!?」
まずい、仮にそうならば力が暴走して召喚されてしまったものなど今の僕の手には負えない。だがここで食い止めなければ…
「どうする…?ドラゴンに対抗できるような大型の神獣を召喚する力は…ない。無生物ならいけるけどEridanus…水流はタイキたちを巻き込んでしまうから駄目だ。五車…もリスクが高いし…」
ハッとした。星座の勉強ばかりしていた僕はそのモチーフとなるものを召喚できるようになったものの、神獣や英雄はコントロールできないことを考えるとまるで戦力外ではないか!
 そうこうしているうちに蒼い炎が見えた。タイキを助けたいが僕に出来ることはない。このまま立ち尽くすしかないのだろうか…



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