蒼緋の焔(千年放浪記-本編3)

しらき

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The Encounter of Blue and Scarlet

蒼緋の出会い-5

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いんぐりっしゅ
 …あれは俺がまだ10歳の時だった。いつも通りママの職場についていって仕事を見学していた。俺のママは国の技術の最先端にいる。俺の誇りだ。ママの仕事は俺にはよくわからなかったけどたくさんの機械を扱って、色んなデータを処理して…とにかくかっこいいんだ!ママはまだ若いのに重要な役職らしくみんなママの指示に従っていた。お陰で俺も職員の人には良くしてもらっていたよ。あの日もそんな感じだった。
 爆発はいきなり起こった。一瞬の出来事で何がなんだかわからなかった。目の前が真っ白になって何処かへ引っ張られるような感覚だった。世界から引き剥がされるような状態の中、ママが俺の名前を呼ぶ声だけは聞こえていた。
 その後ママや施設がどうなったかはわからない。何故なら俺は目が覚めたら全く別のところにいたからだ。そこは本で見た昔のヨーロッパの風景に似ていた。だが街の人が話す言語はまるで違う。英語でも無ければきっとフランス語やドイツ語でも無いのだろう。欧米人が話すものとは根本的に違うような気がした。ならば一体ここは何処なのだろうか。確かめようにも言葉が通じなければどうすることもできない。困り果てていると街の住民であろう少年が話しかけてきた。
「どうしたの、きみボロボロじゃないか!」
相手は俺の姿を見て慌てふためいているようだった。よく見れば爆発に巻き込まれた俺の姿はボロボロだった。
「見かけない顔だね。どこから来たの?」
「Ah…」
彼の言っていることが理解できないのが最大の問題であった。まず何を言われているのかさっぱりわからない。
「I'm Taiki Miyama. Who are you? Where am I!?」
「えっ、えっ…。どうしよう、言葉が通じないのかな…。」
もうどうしようもない。このまま俺は誰ともコミュニケーションをとることができないまま一生を過ごすのだろうか。心が折れそうになったその時、彼は何か思いついたような顔をし、手招きをした。このままここにいても何も進まないので彼についていくことにした。
「僕の師匠が色んな国の言語に詳しいんだ。って、言っても通じないのか…。」
彼は俺とコミュニケーションをとろうと必死だったらしくついにこんな手段に出た。
「上手くいくかな…それっ!」
彼が小さな杖を振ると小さな竪琴が現れ、ひとりでに音楽を奏で始めた。
「Wow! It's a magic!!」
「そう、マジックだよ!マジック!なるほど共通の単語もあるんだな…。」
どうやらmagicは通じるようだ。一部こちらでも英語が使われているのだろうか。
街の人達はこの不思議な竪琴を当たり前のもののように見ていた。どうやらここは魔法の国のようだった。翻訳の魔法はないのだろうか、という考えがよぎったが目の前にいるのは自分と変わらないくらいの歳の少年だ。まだそのような魔法を習得していないのかもしれないし使える魔法はその人の才能によって変わるのかもしれない。
「着いたよ。」
連れてこられたのは私塾のような少し大きめの家だった。
「祐典、そいつはどうしたんだ。」
「師匠!街で会ったんだけど、彼僕達の言葉が通じないんだ。師匠は外国の言葉話せるんだよね?」
「まあ、最近俺はいんぐりっしゅという外の世界の言葉も学び始めたしな。」
「English! Do you speak English!?」
「おー、いえす、いえす。ばっと じゃすとあ りとる。あい すたでぃー いんぐりっしゅ おんりぃ ふゅー まんす。」
「I thought I can't communicate with anyone forever, but you speak English! I'm so glad!」
「し、師匠、彼はなんと…?」
「会話できるやつがいて良かったってよ。祐典、とりあえずこいつに何か聞きたいことはあるか?」
「そりゃあまず名前でしょ。あとどこから来たかとか、基本的な情報を…」
「わかった。あー、わっつ ゆあ ねいむ、あーんど うぇあ あー ゆー ふろむ?」
「Oh, I'm Taiki Miyama. I'm from America. Where am I?」
「あめりか…?聞いたことない場所だ。あー、 ゆーあー いん かなちよ なう。かなちよ いず まじっく きんぐだむ。」
思った通りここは魔法の国のようだ。Kanachiyo という国は聞いたことがない。となるとやはり俺がいた世界とは根本的に違う場所なのかもしれない。
「Ok. I have some questions. Who are you? 」
「俺? あいむ かずひこ あらい。 あんど ひー
いず ゆうすけ なかみね。」
「Kazuhiko and Yusuke, ok. And do you know a place to stay? I have nothing. I teleported here.」
「宿が欲しいのか。おーけー、すてい まい はうす。めいびー のーわん すぴーく いんぐりっしゅ いん でぃす してぃ。」
「Oh, really? Thank you!」
辛うじて生活はなんとかなりそうだ。だがここには他に英語を話せる人はいない、か。ここの言葉を覚える必要がありそうだ。

それから俺はアライさんにここの言葉を教えてもらいながら日々を過ごした。そんなある日アライさんはこんなことを尋ねてきた。
「そういえばタイキ、お前の名前は漢字でどう書くんだろうな。」
「カンジ?ああ、ここのみんなが使ってる文字のこと?」
「いんぐりっしゅではタイキ・ミヤマの順で名乗るだろうが、そもそもお前の名前は若市や華那千代で使われているこの言語寄りのものだ。」
「そういえばアメリカでは変わった名前って言われてたなぁ。Japaneseだって。」
「こちらの言語は所謂じゃぱんという国の言語に近いらしいからな。お前はじゃぱんとは何か関係はあるのか?」
「パパはJapaneseだよ。Englishしか話さなかったけど。」
「なるほどな。すると、ミヤマはこう書くのかもしれない。」
アライさんは“宮間”と書いて俺に見せた。
「これが一般的か?他に深山、美山、あとは…。」
「たぶんこれだ。こんな文字見たことある。」
「そうか。だが名前のタイキの方はなぁ。色んな字があるからなぁ。」
「パパに会えない以上それはわからないままなのかな。でも宮間の部分だけでも本当の名前がわかって嬉しい。Thank you,アライさん!」
「2人とも何を話しているの?」
「Oh,ユウスケ!Looook!! ミヤマってカンジでこうやって書くんだ!アライさんが教えてくれた!」
「“宮間”…やっぱり華那千代の言語に似ている。」
「俺のパパが生まれたJapanとカナチヨの言語は似ているんだって!」
「“タイキ”の方は?」
「あー、そっちはどの字をあてるか分からなかったんだ。でも“宮間”だけでもわかって良かったよ。」
「うん、そうだね。それにしてもタイキ…」
「ん?」
「言葉覚えるの早いね…。」
「俺の教育が素晴らしいんだよ。」
「違うよ、アライさんじゃなくて俺がすごいの!」
「なんだと。」
確かにあの頃の俺は言葉を覚えるのが物凄く早かったと思う。でも使える言葉が増えれば増えるほど彼らとよりコミュニケーションがとれると思っていたのでそれだけ頑張れたし、ここの言葉をすぐにマスターするのは不思議なことではなかった。
「そうだ、僕がこの部屋に来たのはよくわからない言い争いを見るためじゃないよ。おつかいの帰りにご近所さんからクッキーを貰ったんだ。一緒に食べようよ。」
「おー、祐典でかしたぞ。待ってろ茶を用意する。」
「いや、僕がやるよ。師匠がやるとアイスティーというよりもはやアイスになるじゃん。」
「えっ、ユウスケ、それは一体…」
「いくら俺が氷魔法を得意とするからってそんなことはないない。」
「そう言って師匠は僕に何杯氷茶を飲ませましたか。」
「すみませんでした。」
「ほら、タイキも裏庭で待ってて。すぐ用意するからね。」
見知らぬ土地で一生の孤独を覚悟した俺だったがこの街でも家族のぬくもりのようなものを得られたのは最高に幸福なことだったと思う。

Sunshine(4)
 「…いい加減落ち着いたか?」
「Thank you。もうダイジョウブ。」
「全然大丈夫そうじゃないじゃんかよ。」
「だって前に会った時は全然元気そうだったし…。あれからまだ5年くらいだよ!?病気かな…」
ああ、あの爺さんめ、また人間のふりをしていたのか。あれは半人半妖とか言いつつほとんど妖怪なんだから若々しい見た目を保つことくらいお手の物だ。
「ユウだってアライさんの知り合いだったんでしょ?悲しくないの?」
知っていて黙っていたなんてわかったら怒るだろうな。実際新井さんはガキの頃から世話になっていたし旅の便利道具だって作ってもらった。それに新井さんを通じて俺は白城と知り合ったのだから大いに感謝しなければならない。新井さんは俺に長い時間と広い世界を与えてくれた恩人と言っても過言ではない。だが俺はこの人の死を悲しいとは思っていない。俺より遥かに長生きで何でもできたうえ人外でもあるこの人でも死ぬときはあっさり死ぬんだなと思った。昔の俺だったらそれでより一層死を恐怖したかもしれない。だが今は死を回避する手段を知っている。俺はどんな生き物よりも優れている。
「ユウ、俺前にユウに不老不死って寂しくないの?って聞いたことあったよね。ごめんね、君はとっくにそんなものは克服していた。強い人なんだね。」
「…あ、ああ、そうだ!俺は心だって強いからな!」

Maze
 自信満々に出発したはずが帰らぬ者となることくらいは普通のことだ。だが今回の場合どうやらそうではないらしい。
「じゃああいつはどこか途中で本隊からはぐれたってことか?」
「もちろん記録が間違っている可能性もゼロじゃない。でも“死者”の項目には彼の名は無いんだ。」
「タイキ…無事だよね…」
「で、そいつが例の引きこもりか。」
俺が視線を向けるとすぐにそいつは長畑の後ろに隠れてしまった。だが恐らくこれが中峰祐典で間違いないだろう。
「ごめんね、以前も言った通り中峰くんはとてもシャイなんだ。」
「…」
「中峰くん、こちらが旅人の白城くんと聖ちゃん。」
「…」
「うーん、今はタイキくんのことで頭がいっぱいっぽいね。タイキくんとだけは仲良しさんだから…。」
「だったら俺と白城くんが探しに行けばいいんじゃない?ついでにドラゴンも倒せばいっけんらくちゃく!」
「は?聖、お前何言って…!」
「白城くんにはまだ俺の魔法はお披露目してなかったよね。大丈夫、捜索は得意だよ!」
「…!」
「待て待て待て、なんで俺が…。中峰がじっとこっちを見てくるから断りづらい空気になってしまったし…」
「行方不明の蒼炎の魔法使い、気になるんじゃない?」
「…それはどういうことだ。」
「食いついたということは興味があるんだね。討伐任務に失敗したのは彼が何らかの理由によって不参加だったからだ。」
「もしかしてその人物って宮間のことなのか!?」
「その通り。あの子は外の世界から来たのに、いや外の世界から来たからか、10歳くらいから魔法の勉強を始めたのにすぐに国に一目置かれる大魔法使いだ。初めて白城くんに会った時記憶を覗かせてもらったけど君が封印した力に匹敵する威力の魔法を彼は使える。それも君とは違いきちんとコントロールができる。僕たちだってそれがわかっているから彼が戦うことを止めなかったんだよ。まあ中峰くんは心配でしょうがないらしいけど。」
言葉が出ない。かつて国ひとつ灰にした地獄の炎…それに匹敵するものをコントロールできるだと…。被害者面しながらもどこか自分の力は絶対だと思っていた。だが俺の5分の1も生きていない奴にこうもあっさりと負けるとは。
「ならさ、先に宮間くんを見つけて、白城くんと宮間くん2人でドラゴンを倒すってのはどう?蒼緋の炎使いが夢の競演!」
「聖ちゃん面白いこと考えるね。これなら白城くんが出す力も半分で済むし。」
「妙な気遣いはいらんがな。ところで宮間がいる場所について何か情報はないのか?さすがに無計画に探すのは効率が悪すぎる。」
「一応国軍の進路は街を出て正面方向。はぐれたとしてもそっち方面だとは思うよ。」
「わかった!絶対ドラゴンの首と宮間くんを持ち帰るからね!」
「うんうん、よろしくね聖ちゃん、白城くん。…あ、でもできれば早めに帰ってきてね。」
「何かあるのか?」
「いや僕の思い過ごしだといいんだけど万葉一帯に漂う魔力量が増えているようなんだ。大きめの魔法生物が現れる予兆かもしれない。」
「…天気予報程度に受け止めておく。」

Constellation
 …「そういえばタイキは魔法を使いたいとか思わないのか?」
「魔法…magicのこと?今まで言葉を覚えるのに必死だったからなぁ。そういえばここは魔法の国だったね。」
「氷の魔法なら俺が教えてやろう。」
「師匠、アイスティーをアイスにする人は1人で充分ですから。」
「なんだ祐典、聞いていたのか。」
「ユウスケはどんな魔法が使えるの?」
「僕は召喚魔法だよ。」
「ショウカン、マホウ…?」
「道具や動物を呼び出す魔法さ。」
「ああ!初めてあった日に楽器を出したのもその魔法だね!?」
「そうそう。今はまだ種類は限られているけどいつかは星座にあるものや生き物だったら何でも出せるようになりたいな。」
「Constellation?Why?」
「僕の魔法がそういう魔法だからだよ。星座を物体にする魔法。簡単に言えば星座になっているものなら召喚できる魔法。」
「The Harp!えっと…コト…ザ?」
「そう、あの時出したのは琴だよ。他にも時計とか望遠鏡とか出せるから便利かも。一角獣や狼、竜なんて出せたら戦いでも強いかも…!今の僕にそんな力はないけど…。」
「すごいすごい、召喚魔法って最強だね!でもユウスケとおんなじじゃつまらないし…。そうだ!じゃあ俺はflame!dragonだって丸焼きにしちゃうよ!」
「なんだ、じゃあ俺はドロドロに溶かされちゃうじゃないか。」
「師匠だからって遠慮はしないよ!で、magicはどうすれば使えるようになるの?」
「俺を溶かす前にまずはそこからだな。ついて来い、炎魔法についてなら学がある。昔鍛えてやったやつが才能あってな…。」

 「上の空って感じだな。最近そうなること多くないか?」
「気のせいだよ、気のせい!ああ、首をはねられたらどうしよー…みたいな?」
「どうせ新井さんのことだろ。」
「…確かに師匠のことも完全に吹っ切れたとは言えないよ。でも師匠との思い出とかを振り返って1つ気になることがあったんだ。」
「気になること?」
「…いやなんでもない。確証がなさすぎるから。」
「なんだよ…。」
Dragonが現れる条件、近くに巣穴や餌場は…ない。そもそも彼らのterritoryはそう簡単に変わるものではない。他の魔法動物同様dragonも魔力の濃度が上がれば自然発生するとも言われている。でもそんなことあっても数世紀に1度…。体験したことはないけどきっとすぐにわかるくらい魔力が濃くなるはず。残るは誰かが召喚すること。何の前触れもなくdragonが現れるという現象を可能にするのは召喚魔法だ。
「でもまさか…。」
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