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起-妖と人間

正義の怪の嘆き

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 「…どうだった。」
「気になるなら自分で行けばいいじゃないですか。」
「我は滅多なことでは人間界に姿を現してはならないのだ。それに石野、おぬしも気になると言っていたであろう。」
「…まあそうですけどね。ただ私が見た限り月城の奴は2人目、3人目を作るつもりはなさそうですがねぇ。」
「量産するつもりはないと。」
「大方消費期限のない愛玩動物が欲しかったというだけでしょう。」
「…。」
最悪の事態は回避できそうだ。あのようなものが増殖してしまっては我が庭が穢れる。いや、既に一匹放たれてしまっている時点で…
「ちょっと、それ私の扇子なんですから怒りに任せてバキッ…とか勘弁して下さいね?」
「…!すまない、我としたことが…」
「わかりますよ、月城は私にとっても憎たらしい相手ですから。」
「…石野」
「はい?」
「我の前でその名を二度も口にしたな…」
「…おお、怖い怖い。圧だけで下級妖怪なら消し飛びますね。しかし記号化しないと伝わりにくいでしょう?」
「あんなものは指示語で結構。」
「だからそれじゃ伝わらないでしょうに…」
「文脈でわかるだろう。」
「まあそれもそうですね。」
「…」
「…で、結局今のところは様子見でいいのです?」
「うむ。あれが少しでも不死者を増やそうとしたら止めろ。」
「…わかりました。では私は帰りますね。」
「ああ。」
 …あの顔は不服そうな顔であった。我が手を組んでいる石野櫻という妖怪は少し好戦的過ぎる。とは言え奴も基本的にはこの世界の自然や秩序を重んじているようであるし月城を憎たらしく思っている点でも利害が一致する。月城志都…我の世界で好き勝手して挙句の果てに不死者という害虫まで生み出しおって…。もちろん我が庭を簡単には破壊したくはないが向こうの出方によっては戦も辞さない。秩序を乱したものには相応の裁きを…
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