千放シリーズについて語る

聖クライシス…時間に殉じた者の話

時間を創出するという思考

 なんと言っても聖クライシスで最も中心にあるものは聖が持つ「鉄道によって時間を創出する」という考え方です。もちろん我々人類にとって時間は有限であり、その総量を増やすことは(寿命を増やす以外では)できません。しかし移動時間など多くの人が無駄だと考える時間を短縮しその分を他のことにあてがうことで感覚的に時間を得た気分にはなれますね。その発想について聖含め若市の市民たちは画期的で素晴らしいアイデアだと思っていたようですが、不老不死の白城や半人半妖の新井さんは「人間は面白いことを考えるなぁ」程度に考えています。人間とそれ以外とで両者の認識にはギャップがありますね。意識や価値観の違いは結構他の作品にも出てきますが、新井さんなんかは結構多様な価値観を受け入れる人です。彼の影響を受けている白城もそうですが。
 さて、「時間の創出」については人間サイドと人外サイドの考え方の違いだけではありません。本編の中でも触れられていますが、聖クライシスには「時間を創出するしようと奔走した」三又聖が「そのために忙殺される」という皮肉があります。そこを可哀想だと思うか、皮肉だと笑うかは人によると思いますが、少なくとも不老不死の白城は聖が努力した理由を理解することは出来ていないので運命の皮肉だと嘲笑しているような様子を見せています。これが新井さんだと人間に愛着がありますから白城よりは残念がることでしょう。