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神話
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2000年前。神々は実在の有無に関わらず当たり前の存在として扱われ、人間の営みの全てが神への信仰に直結していた時代。人類の敵が空間を裂いて現れた。
後に魔界と呼ばれる世界に繋がるゲートから現れた巨大な獣と、自分達をクロコディルと名乗る種族が、人間の世界を征服しにきたのだ。
圧倒的な巨躯と、単なる前進で要塞を粉砕する攻撃力。城攻め用の攻城兵器すら歯牙にも掛けない防御力を持つ怪物。人類は神話や童話で神々や勇者によって討伐される魔王のちなみ、魔王獣と名付けた。
魔王獣の侵略に知性などなかった。ただ本能のまま人類の生活圏を脅かし、通った後を配下のクロコディルが残らず虐殺する。獣にも劣る蛮行に、武具が発達してなかった当時の人類は絶滅寸前にまで追い込まれた。
魔王獣の進んだ痕には荒廃した大地しか残らなかった。
東の帝国が支配していた大陸は生命を感じさせない文字通りの死の大地となり、隣接していた東洋の島国は魔王獣の経路から外れていたとは言え、圧倒的な数とフィジカルを持つクロコディルを相手に孤軍奮闘。
そして二つの王家が共同統治していた西の王国、イルカルラ王国も苦戦を強いられ、もはや自分達の絶滅は避けられないと人類が諦めた時、奇跡は起きた。
魔力。存在こそ知られていたが、実在を疑問視されていた生命エネルギーを行使する者が、王族を中心に現れた。
彼らは大気に満ちる魔力、マナを練り上げ、人間の潜在能力を数十倍にまで高める衣を纏うことで、それまで敗北を重ねるしかできなかった人類に希望を与えたのだ。
これが現在まで存在する頂上の戦士、クレリックの始まりとされる。
さらにクレリックに目覚めた王族達は力を合わせ、魔力によって神々を現世に映し出す降霊術を使い、魔王獣と対を成す神々の化身、聖王獣を呼び出すことに成功した。
激しい戦いの末、世界の人口を九割方失うほどの痛手を負いながらも、イルカルラ王国は魔王獣を打倒し、魔界に繋がるゲートを閉じることに成功した。そして人類の勝利に貢献したイルカルラ、トルマリンの両家は聖王獣という世界を支配する力を持ちながら、それを封印するという選択を取った。
自分達は自由のために戦ったのであって、支配のためではない。今を生きる人類が復興する上で、強すぎる力は軋轢しか産まないと理解していたのだ。
そしてトルマリン家はイルカルラ王国から離れ、とある島で国を興した。互いに距離を取り、聖王獣の力を悪用しないために、互いに監視するためにだ。
こうして世界は魔王獣の驚異から逃れ、二つの王家は英雄として現在まで語り継がれている。
後に魔界と呼ばれる世界に繋がるゲートから現れた巨大な獣と、自分達をクロコディルと名乗る種族が、人間の世界を征服しにきたのだ。
圧倒的な巨躯と、単なる前進で要塞を粉砕する攻撃力。城攻め用の攻城兵器すら歯牙にも掛けない防御力を持つ怪物。人類は神話や童話で神々や勇者によって討伐される魔王のちなみ、魔王獣と名付けた。
魔王獣の侵略に知性などなかった。ただ本能のまま人類の生活圏を脅かし、通った後を配下のクロコディルが残らず虐殺する。獣にも劣る蛮行に、武具が発達してなかった当時の人類は絶滅寸前にまで追い込まれた。
魔王獣の進んだ痕には荒廃した大地しか残らなかった。
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そして二つの王家が共同統治していた西の王国、イルカルラ王国も苦戦を強いられ、もはや自分達の絶滅は避けられないと人類が諦めた時、奇跡は起きた。
魔力。存在こそ知られていたが、実在を疑問視されていた生命エネルギーを行使する者が、王族を中心に現れた。
彼らは大気に満ちる魔力、マナを練り上げ、人間の潜在能力を数十倍にまで高める衣を纏うことで、それまで敗北を重ねるしかできなかった人類に希望を与えたのだ。
これが現在まで存在する頂上の戦士、クレリックの始まりとされる。
さらにクレリックに目覚めた王族達は力を合わせ、魔力によって神々を現世に映し出す降霊術を使い、魔王獣と対を成す神々の化身、聖王獣を呼び出すことに成功した。
激しい戦いの末、世界の人口を九割方失うほどの痛手を負いながらも、イルカルラ王国は魔王獣を打倒し、魔界に繋がるゲートを閉じることに成功した。そして人類の勝利に貢献したイルカルラ、トルマリンの両家は聖王獣という世界を支配する力を持ちながら、それを封印するという選択を取った。
自分達は自由のために戦ったのであって、支配のためではない。今を生きる人類が復興する上で、強すぎる力は軋轢しか産まないと理解していたのだ。
そしてトルマリン家はイルカルラ王国から離れ、とある島で国を興した。互いに距離を取り、聖王獣の力を悪用しないために、互いに監視するためにだ。
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