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14:[脱毛 射精 よくある?]【検索】
しおりを挟む「もう、泣かないでください」
「ぁう」
そう言って拭われたのは、精液ではなく涙の方だった。
アオイさんのポケットから取り出されたハンカチが、俺の涙を優しく拭う。ハンカチからは、フワリとアオイさんの良い匂いがした。
「タローさん。施術中に射精される方って珍しいワケじゃないので」
「……」
「あ、そういえば!VIOの施術、タローさんはあんまり痛くなさそうでしたね。ちゃんと下半身も保湿されたんじゃないですか?エライですよ」
「……」
「あの、本当に……生理現象ですし」
アオイさんが必死に俺を励まそうと声をかけてくれているのに、俺は何も返事が出来ない。
生理現象でも何でもダメなモノはダメだ。だって、推しに迷惑を……いや、精液をかけるなんて。もう極悪人だ。死刑だ。
「タローさん、次は」
「ア、オイさん。おれ、今日は、もう帰ります」
「えっ、でも。まだ……」
「全部、した事にして貰って……いいので」
俺は体の上にかけられたタオルを握りしめながら、吐き出すように言った。アオイさんと、目を合わせられない。今日はもうダメだ。もし、また触られて勃起でもしようものなら取り返しがつかない。
「タローさん」
「あの……本当に、ごめんなさい」
また涙が視界を揺らす。そんな俺に対し、アオイさんは再びハンカチを向けてくれた。でも、それよりも先に俺は自分の腕でゴシゴシと涙を拭った。
「ぎょうは、ありがとう、ございまじた」
「……」
今年最後の推しの舞台は……いや、施術の日は最悪のカタチで幕を閉じた。
〇
これは、正月も明け、休みボケもようやく落ち着いてきたかという頃合いの、とある会社の喫煙室での会話である。
「最近、アオイさんレポ更新されねぇな」
「もう、アオイさんレポ言うとるわ」
「……宮森さんも年末から明らかにテンション下がってるし。あれは確実に何かあったな」
「ここまできて、VIOの結果が分からないまま終わる事になるとは。クソ、気になるな」
「……まぁ、予想が出来ないワケじゃねぇけど」
「なんだよ、飯島。お前、何か分かるのか?」
「VIOの時、射精したんじゃね?」
「はぁっ!?」
「いや、ネットで見たけどたまに居るらしいんだわ。確かにアレはガッツリ触られるから、前日にヌいて行ってもキツい時があった」
「ま、マジか」
「ああ。だから俺。敢えて脱毛は男性スタッフじゃねぇ普通のサロンを選んだし」
「お前……」
「そんな顔すんなよ。いや、だってもう男相手に勃起するくらいなら、潔く女性にしてもらった方が気が楽なんだよ」
「……確かに、そうかもな」
「宮森さん、アオイさん相手に射精しちゃったかー」
「どんまい」
こうして、まさか会社で自分の置かれた状況をドンピシャで当てられているとは思っていない宮森タローは、自分のデスクで、ジッとスマホの画面を眺めていた。
明日、木曜日。
宮森タローは有給だった。
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