【3月中旬削除予定】もしもの時の為に、メンズ脱毛に行って来たレポ

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9:[オタク 有休 使い方]【検索】

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「あ、タローさん。すみません」

 アオイさんが片付けをしていた手を止め、そそくさと扉の外へと出ていった。すると、微かながら声が聞こえた。

「高梨さんの指名の方が……その、急遽いらっしゃってて」
「あぁ、あの人かぁ」
「どうしましょう」
「……予約の時間を考えないとですね」

 その瞬間、俺は天啓が下った。
 これだ!

「すみません、タローさん。バタバタしてしまって。あ、日焼け止め。俺が使っているのをお伝えしますね。後でロッカーから持って……」
「あ、あの。大丈夫です!」
「え?でも」

 俺は弁えたファンを目指しているのに、どうしてこんな簡単な事に、今まで気付かなかったんだろう。

「今日もありがとうございました。また、よろしくお願いします」
「あっ、タローさん!」

 俺はアオイさんに頭を下げると、速足で個室から飛び出した。周囲を見渡すと、個室は全部埋まっているようだった。
 最初に俺がこの脱毛サロンに来た時は、出来たばかりだった事もあり、休みの日も予約はガラガラだった。しかし、今や待合室も予約客でいっぱいだ。

「さすが、アオイさんの居るお店だなぁ」

 こうなる事は、分かり切っていた事だ。だって、“あの”アオイさんがスタッフとして働いているんだぞ。遅かれ早かれこうなる運命だったんだ。
 俺は同担拒否な過激オタクではないので、むしろ嬉しくて仕方がない。推しは皆で推した方が楽しいじゃないか。

「宮森様、次回のご予約はどうされますか?」

 受付のイケメンスタッフさんが、次の予約の日程を尋ねてくる。この人は、最初に俺のジャージ姿にビックリしていた人だ。もちろん、今日も俺はジャージだ。だって、アオイさんがジャージが良いっていったから、コレでいいのだ。

「次の予約可能な土日は……あー、埋まってますね」
「あ、あの……ちょっといいですか?」
「なんでしょう?」
「何曜日が、一番お客さんが少ないですか?」
「へ?」

 「推し活」は推してる側が最高に楽しませて貰っている分、出来るだけ「推し」には迷惑をかけたくない。むしろ、健やかにあってほしい。

「土日じゃなくても良いので。一番お客さんが少なくてご迷惑にならない曜日を」
「……だとすると、平日の木曜日の昼過ぎあたりが」
「じゃあそこで」
「いいんですか?一度ズレると、休みの日は取り辛くなりますよ」
「大丈夫です」

 だって俺には、余りにあまった有給がある。今まで、わざわざ休みにしてもする事が無かったので殆ど使った事が無かったが、推しの為に使うのが有給じゃないか。
 そう、俺が受付で次回の予約を取り終えた時だ。

「タローさん」

 忙しいだろうに、アオイさんが受付までやって来てくれた。しかも、他のお客さんを呼ぶ為じゃない。だって、アオイさんは今、俺の名前を呼んでくれたんだから!

「っあ、アオイさん!」

 待合室には他のアオイさんのファンも居る。良いのだろうか。そんな風に施術の終わった客の名前なんか呼んでしまったら、過激派のファンが怒ったりしないのだろうか。

「これ、さっき俺が使ってる日焼け止めです。こういうちょっと変わったパッケージなので、一回実物を見た方が分かりやすいかと思って」
「あ、あ。わざわざ、ありがとうございます」

 どうやら、アオイさんは忙しい中、俺にお勧めの日焼け止めを教えに来てくれたらしい。お店の商品でもないのに。アオイさんに紹介料が発生するワケでもないのに。

 俺みたいな、もうあまり売り上げに貢献出来なくなったヤツの所に、わざわざアオイさんは来てくれたのだ。ファンサが凄い。ありがたくて泣きそうだ。

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