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番外編14:ポリネシアン・セックス③
しおりを挟む3:口下手な夫の流暢な咆哮
あれから、どれくらいの時間が経っただろう。
窓から差し込んでくる日の光が随分と高い位置から差し込んできているのを見るに、相当時間が経過しているのが分かる。
「っま、ぶし」
「……っはぁ。てる、こっちば見て」
「っひ、ン」
あまりの明るさに窓の方へと目を向けた瞬間、セイフから両手で顔を優しく包み込まれ、軽く唇を食まれた。まるで自分以外を見るなと言わんばかりのムッとした様子に、俺は苦笑しながらセイフの背中を撫でる。
「セイフ、そと……明るいな」
「ん」
「いま、何時かな」
休日の昼間。俺達は、朝食を食べた後からずっと寝室に籠っている。
「わからん……何時でも、よか」
セイフも俺も、まだ一度もイっていない。ただ、セイフ膝の上に抱きかかえられながら、腹のナカにセイフを感じつつ、休日の昼を過ごしている。挿入しても、セイフは腰を振らない。ただ、見つめ合いゆったりと互いの体を愛撫し合うだけ。
「っふ、ぅ……っは、ぁん」
セイフの指先が俺の乳首の先にソッと触れた。でも摘まんだり爪を立てたりはしない、すぐにその指先は乳首の周りを撫でるように這いながら、ジッと俺の様子を観察している。
もどかしい、もどかしい、もどかしい。
「……せ、いふ」
「ん」
「もっと、いっぱい。さわって」
「どこば?」
珍しい。セイフはこういう駆け引きのような事が出来るタイプではなかった筈だ。
でも、今日は少し違う。いや、全然違う。俺を見つめる目は、興奮の色を消す事はないが、どこか楽しそうで、それでいて――
「どこば、触ってほしかと?」
少し意地悪だ。
そう思うと、俺も「いつもの自分」ではないような事をしても、構わないかなんて思ってしまった。
「おれ、セイフの手、好き」
俺はイタズラっぽく乳首の周りに触れていたセイフの手を取ると、そのまま何度かその掌を指で撫で上げた。
「……て、てる?」
戸惑いながらも、セイフの瞳が俺の姿を捕らえて離さない。その視線にすらゾクゾクと背中に快楽が走る。
「おねがい。もっと、いっぱいさわって」
「っ!」
「ここ、この先っぽ。ツンてしてるとこ。セイフに触ってほしくて、ヒクヒクしてるから」
これで分からないとは言わせない。
「おれの、おっぱいさわって」
俺はセイフの手を導くように乳首の先まで導くと、その瞬間、セイフの青い瞳が赤く染まった気がした。
「っは、っひぁ!~~っ!!」
「テル、テルッ!クソッ、かわいか!いやらしか!……も、頭バカになるっ!」
それまでの緩やかな触り方が嘘のように、セイフの指先が俺の乳首を転がすように触れる。摘まんで、引っ張って、爪を立てて。少し、痛い。
でも、長い時間をかけて熱を高められた体には、その全部が求めていた〝全て〟だった。
「っぁ、っはッぁ……せいふの、おれの中でビクって、したぁっ!」
「っぐ、っぉ!」
思わず跳ねた腰に、グチュリと結合部からいやらしい音が響く。その瞬間、セイフはイクのを……いや、腰を振るのを耐えるように、俺の体に回した腕に力を込めた。
「っはぁ、っは、っは。っい゛ぁ……っぐっ」
隆起するセイフのペニスが、俺のナカで激しくビクついているのが分かる。でも、まだイってはいない。それどころか、未だに腰を振ろうともしない。耳元で聞こえるセイフの獣のような唸り声は、ともかく熱く、そしていやらしかった。
「……っぁ、っは。っっぐ、るじ」
「っぁ、あ。せいふ、せいふ?もう、イく?いいよ、いっぱい突いて」
あまりにも苦しそうな表情に、額に張り付いた深い青色の髪の毛をどかしながら、ちゅっと口づけをする。ついでに、セイフの口の端から漏れる唾液まで舐め取った。
その瞬間、再びナカでセイフのペニスが脈打った。
「っひ、ん!」
「て、る……あんま、かわいか事ば、せんで。我慢できんくなるっ」
我慢?なにを、我慢する必要がある?
苦悶に滲むセイフの表情に、俺はぼうっとする頭で金色のセイフの瞳を見つめた。
「あの、セイフ。一回、イっても……その、あとも、きょうは一日、好きなだけシていいから……だから、我慢しなくていい」
「好きな、だけ?」
「ん。夜、俺のせいで、あんまり出来てないし。その……今日は一日中、シよ」
なにせ、俺の方もそろそろ限界だ。生ぬるい触れ合いも、いつもと違う自分をさらけ出していやらしい言葉を言い合うのも、全部堪らなく気持ち良かった。
でも、そろそろさっき乳首を弄ってくれたみたいに容赦なく奥まで突いて欲しい。眉間に皺を寄せながら、俺の事だけを考えて無我夢中に腰を振っているセイフが見たい。
「な、セイフ。ほら」
「っは、っはぁ……ぁ、あ」
セイフの腰に自分の両足をギュッと巻き付ける。
「セイフの精液、早くナカにちょうだい」
言いながら、俺自身がどんどん我慢出来なくなった。
もういい。ここまで来て恥ずかしいもクソもない。セイフが動かないなら、俺がみっともないくらい腰を振ってやる。
そう、俺が腰を浮かせようとした時だ。
「いかん」
セイフの熱い掌が俺の腰を静止した。
「え、え?」
「まだ、まだ……てるの、ナカにこのまま、おる。おらせて」
熱に浮かされたうわごとのような声色でそのまま俺の尻を愛おしむように撫でまわす。
あれ?あれ??なんだ。どうしたんだ?
セイフと目が合わない。いや、合っている筈なのにセイフの焦点がどこにも合っていないのだ。
「は、はは……、てる、いやらしかぁ」
「せ、セイフ?」
「てる、てる。そげん、俺んマラが気持ち良かったったい。こげん、ずっとイってから」
「っへ?」
セイフの視線が互いの腹の隙間へと向けられる。それにつられて俺も視線を落とすと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「っぁ、え?なん、で?」
そこには、ダラダラと緩やかに射精し続ける俺のペニスがあった。
なんで。なんでだ?イった感覚なんて欠片もなかったのに。しかも、射精してもペニスが萎えていない。
「てる、かわいかねぇ。なんね、こげん種ば出してから。後ろん穴もずっと俺んマラば好き好きっち言って絡みついてきてから。あ゛ぁぁっ、いやらしかぁ!」
「っひ、っぁん!」
壊れた。セイフが完全に壊れた!
低い声で囁かれるいらしい言葉が普段よりも随分と滑らかにセイフの口から放たれる。それだけじゃない、まるで狼の咆哮のような唸り声が部屋中に響く。
それなに――!
「そげん俺んとが好きなら、一日中挿れとってやるたい」
「っぁ、っぁ、いや」
セイフは腹の中でペニスをビクつかせるだけで、一切動いてくれない。それどころか、俺が勝手に動きださないように、先ほどまで優しく尻を撫でていた手に力を籠めてくるほどだ。
「あ、っぁん、っひぅぅ。しぇ、ふ……それ、やめてぇっ」
「テルはいやらしかけん、こげんせんと勝手に動こうが」
「っぃ、ぁ……やら、せいふ、セイフッ!動いてっ、ナカ突いてぇっ!」
「いかん」
俺の悲鳴のような懇願に短く答えると、セイフは未だに焦点の合っていない目で「ははっ」と普段は見せないカラカラとした笑い声を上げた。しかも、尻をグニグニと乱暴に揉みしだいてくる左手とは裏腹に、右手はは優しく俺の下腹部を撫でる。
「今日、一日挿れとったら、孕むかもしれんね」
「っぇ?」
「テル、早う俺ン子ば孕まんね」
孕ませたいなら奥を突いて射精しろよ!?と、半ばキレながら肩を揺さぶってやろうかと思ったが、そんな俺の腹の底からの欲求はセイフの口づけによって全て食われた。
「っふ、ンンンっ!!!」
腹のナカでセイフの怒張が更に張り詰めるのが分かる。
セイフの言うとおり、俺の肉壁はそのセイフの肉棒に甘えるように絡みつくせいで、今やその血管の浮彫りの一つ一つすら感じられてしまう。
いやらしい、いやらしい。俺だけじゃない、セイフだって十分いやらしい!
「っぷ、っはぁっ!っはぁ、はぁ」
「っは、てる、てる……いつも俺ん、すきにしとったけんね。今日は、テルのこと一番きもちよくするけん」
「ぁ、あ……せいふ、おれ、イぎだい。きもち、よくしてぇ」
「ん、てるのマラも気持ち良かっち言いよらす。ダラダラ精液ば垂れ流してから……いやらしかぁ、可愛らしかぁっ!」
お願いだから、ちんことじゃなくて俺と話してくれ!!!
そんな懇願は、俺のペニスの先に優しく触れてくるセイフによってあえなく喘ぎ声に変えさせられた。
「っひ、ぃぃん!」
その日、セイフが俺の中で腰を振って果てたのは、日も落ち切った夜の事だった。その、地獄とも思える長い時間の中で、俺の口にした卑猥な嬌声は――
「っおちんちんっ……、しぇいふの大きい勃起おちんちんで、俺のめしゅ穴っ、おくまで、にゅぷにゅぷしてぇぇっ!おまんこ、いっぱい突いてぇっ!」
「はは、はははっ!俺ん嫁さんな、いやらしかぁぁっ!」
未だかつてない、黒歴史の一つとなった。
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