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第1章:俺の声は何!?
3:仕事始め
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「ここが今日からお前の仕事場だ」
「……はい」
一つの大きな扉の前まで案内されると、俺はただただ驚愕しながらその扉を見つめた。そんな俺の隣では、気だるそうな声で話す一人の背の高い男。
「さっき言われた通り、お前の前任の人間が、長時間立っていられなくなったと部屋守の職を辞した。だから、今日からはお前がイーサ王子の部屋守だ」
そう、俺の前を歩いていたキラキラとした銀色の髪を靡かせ、髪をひとくくりにした相手が、チラと俺の方を見ながら淡々と口にする。チラと髪の毛の隙間から覗くその耳は、やはり鋭く尖っていた。
「……はい」
「はぁ……ついこないだ、同じ説明をしたと思ったんだがな」
溜息を吐きながら口にされた言葉は、明らかにウンザリとした色が聞き取れる。
あぁ、この男の声は悪くない。アンニュイな感じの声が、どこか須崎さんを思わせる。呼吸の仕方だろうか。語尾の空気が抜ける感じに、怠惰な色気を感じるタイプの声だ。この手の声は、なかなか真似しにくい。
「なんだ。俺の顔に何かついているか」
「いえ、何でもありません」
「お前ら人間の寿命の短さにはウンザリだ。どうせ気付いたらお前も老いだ寿命だと騒ぎ立てて、仕事を辞し、俺はまた次の人間に同じような事を言う羽目になる。こんな徒労、他にない」
スッと細目られた目が、蔑みの色に染められる。
「頼むから、長生きしてくれ」
「はぁ」
急に孫がジジイに言うような温かい台詞を吐くじゃん。
まぁ、その声は一切合切、そんな温かみなどは皆無だったが。
こうして周囲の人間と……エルフ達と話していくうちに、俺は少しずつ理解し始めていた。
「もう簡単に説明する。お前はイーサ王子の部屋守だ。ここに立っていろ。敵や不測の事態がきたら、イーサ王子を守れ。以上だ」
「あの、」
「なんだ」
そう、俺は完全に夢を見ているらしい。
なにせ、ここは俺がオーディションに落ちた【セブンスナイト4】の世界のようなのだ。俺の制服のベルト部分に縫い付けられた、クリプラントの国章。そして、目の前の明らかに人間ではない男。そして、そして。
「俺のような新人が一人で、王子の護衛なんて……それはちょっとあんまりじゃ」
「一人居れば十分だ。どうせ、何も起こらん」
「でも、次の王様の部屋守なのに……」
イーサ王子の部屋守。
もちろん、“イーサ”は最新作にしか出てこないキャラだ。ただ、その他の固有名詞を聞けば、それはもうシリーズを通してプレイした俺だからこそ分かる。
『水流壁に頭ぶち込ませてやるからな!』
先程の騎士の上官らしきエルフが言った“水流壁”は、セブンスナイトシリーズでは序盤に使われる水魔法の一つだ。俺的には使いどころが微妙に分からな過ぎて、正直、技のカスタムに入れた事があまりない。
だから、最初はピンとこなかったが、俺はこの世界で使われる単語に対し、どれもこれも違和感がなかった。
今、俺が着ているこの青い隊服も、三作目でクリプラント防衛戦の時に自陣に居たキャラが、こんなのを着ていた筈だ。
「っは、次期王か……。ゲットーには此方の内政までは流れないのか」
「いえ、俺が……その、少し情報に疎くて」
「次期王候補の部屋守だとしたら、お前など……いや、マナも魔法も扱えぬ人間などは絶対に選ばれないだろうな」
「え?」
「もういいだろう。お前はここで、その短い人生の間、死ぬまで立っていればいい。そうすれば、安くない給金が支払われる。どうせ、何も起こりはしないのだから」
俺から目を逸らし、大きく荘厳な扉に目をやるエルフにつられ、俺も扉の方を見る。静かだ。ここに、本当にイーサが居るのだろうか。
俺が演りたくてたまらなかったキャラ。
俺が落とされ、金弥が選ばれた。
あの、イーサ王が。
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「ここが今日からお前の仕事場だ」
「……はい」
一つの大きな扉の前まで案内されると、俺はただただ驚愕しながらその扉を見つめた。そんな俺の隣では、気だるそうな声で話す一人の背の高い男。
「さっき言われた通り、お前の前任の人間が、長時間立っていられなくなったと部屋守の職を辞した。だから、今日からはお前がイーサ王子の部屋守だ」
そう、俺の前を歩いていたキラキラとした銀色の髪を靡かせ、髪をひとくくりにした相手が、チラと俺の方を見ながら淡々と口にする。チラと髪の毛の隙間から覗くその耳は、やはり鋭く尖っていた。
「……はい」
「はぁ……ついこないだ、同じ説明をしたと思ったんだがな」
溜息を吐きながら口にされた言葉は、明らかにウンザリとした色が聞き取れる。
あぁ、この男の声は悪くない。アンニュイな感じの声が、どこか須崎さんを思わせる。呼吸の仕方だろうか。語尾の空気が抜ける感じに、怠惰な色気を感じるタイプの声だ。この手の声は、なかなか真似しにくい。
「なんだ。俺の顔に何かついているか」
「いえ、何でもありません」
「お前ら人間の寿命の短さにはウンザリだ。どうせ気付いたらお前も老いだ寿命だと騒ぎ立てて、仕事を辞し、俺はまた次の人間に同じような事を言う羽目になる。こんな徒労、他にない」
スッと細目られた目が、蔑みの色に染められる。
「頼むから、長生きしてくれ」
「はぁ」
急に孫がジジイに言うような温かい台詞を吐くじゃん。
まぁ、その声は一切合切、そんな温かみなどは皆無だったが。
こうして周囲の人間と……エルフ達と話していくうちに、俺は少しずつ理解し始めていた。
「もう簡単に説明する。お前はイーサ王子の部屋守だ。ここに立っていろ。敵や不測の事態がきたら、イーサ王子を守れ。以上だ」
「あの、」
「なんだ」
そう、俺は完全に夢を見ているらしい。
なにせ、ここは俺がオーディションに落ちた【セブンスナイト4】の世界のようなのだ。俺の制服のベルト部分に縫い付けられた、クリプラントの国章。そして、目の前の明らかに人間ではない男。そして、そして。
「俺のような新人が一人で、王子の護衛なんて……それはちょっとあんまりじゃ」
「一人居れば十分だ。どうせ、何も起こらん」
「でも、次の王様の部屋守なのに……」
イーサ王子の部屋守。
もちろん、“イーサ”は最新作にしか出てこないキャラだ。ただ、その他の固有名詞を聞けば、それはもうシリーズを通してプレイした俺だからこそ分かる。
『水流壁に頭ぶち込ませてやるからな!』
先程の騎士の上官らしきエルフが言った“水流壁”は、セブンスナイトシリーズでは序盤に使われる水魔法の一つだ。俺的には使いどころが微妙に分からな過ぎて、正直、技のカスタムに入れた事があまりない。
だから、最初はピンとこなかったが、俺はこの世界で使われる単語に対し、どれもこれも違和感がなかった。
今、俺が着ているこの青い隊服も、三作目でクリプラント防衛戦の時に自陣に居たキャラが、こんなのを着ていた筈だ。
「っは、次期王か……。ゲットーには此方の内政までは流れないのか」
「いえ、俺が……その、少し情報に疎くて」
「次期王候補の部屋守だとしたら、お前など……いや、マナも魔法も扱えぬ人間などは絶対に選ばれないだろうな」
「え?」
「もういいだろう。お前はここで、その短い人生の間、死ぬまで立っていればいい。そうすれば、安くない給金が支払われる。どうせ、何も起こりはしないのだから」
俺から目を逸らし、大きく荘厳な扉に目をやるエルフにつられ、俺も扉の方を見る。静かだ。ここに、本当にイーサが居るのだろうか。
俺が演りたくてたまらなかったキャラ。
俺が落とされ、金弥が選ばれた。
あの、イーサ王が。
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