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18:優秀な弟
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「だろ?だいたい、うちの弟もバカなんだよ。不測の事態に備えて少し先を予習くらいしとけって話だ」
「う、うん」
どうやらバレていないようです。ケインはウィップから顔を上げると、僕の方をジッと見つめながら、そりゃあもう嬉しそうな顔で微笑みました。フルスタの話をする時のケインはいつも以上に楽しそう。あぁ、苦しいです。
でも、僕は頑張って笑い続けます。だって、僕はただでさえ出来損ないなせいでケインに迷惑をかけているのに、その上性格まで悪いなんてバレたら、本当に嫌われてしまいます。
「ほ、本当に……フルスタは凄いね」
「あぁ、最高に立派な御方だよ」
あぁ、もう我慢できません!こういう時は話を変えるのが一番です。
「ね、ねぇ。ケイン!そういえば、金軍の左軍の指揮隊長に昇格したんだって?」
「あぁ、聞いたのか」
「うん、凄いね!十六歳で指揮隊長に任命された人は初めてだって聞いたよ!」
僕はつい先程部屋守の兵士から聞いた話をケインに振りました。これで、ケインの口からフルスタの話を聞かなくてよくなります。あぁ、良かった!
「やっぱりケインは凄いよ!」
「別に凄くなんてない。今、バーグとの関係が悪くなってるから、いざって時の為に先に人事を動かしただけだろ」
「……あ」
「戦争になったら、左軍である俺はまっさきに戦場に行く事になる。……ま、別にいいけど」
「ぁ、あ……えっと」
「戦争になったら、俺は死ぬかもな?」
「っっっ!」
あぁ、僕はなんて事を言ってしまったのでしょう!そうです。今は隣国バーグとの関係がとても悪化しています。その中での軍での昇格なんて、ただ危険が増すだけなのに。僕は、本当に愚か者の出来損ないです。
「せ、戦争になんてならないよ!きっとお父様が……陛下がなんとかしてくれるから」
「確かに陛下は名君と言われる方だけど、国の威信もあるし……こないだの会談で話し合いも決裂してる。それとも、次期国王陛下であるラティ王子には、戦争を回避する何か良い案でもあられるんですかね?」
ケインがスッと目を細めながら僕を見ます。その問いに、僕は何の答えも持ち合わせていません。僕は自分には何の能力も無いのに、全ての問題を父に丸投げして無責任な事を言った自分を恥じました。
僕はどこまで愚かなのでしょう。ずっと目の奥に滲んでいた涙が、少しずつせり上がってきます。堪えなければ。
「……フルスタ様が言っていたそうだ」
「へ?」
俯く僕に、ケインの口から再びフルスタの名が漏れ聞こえてきました。ダメ、ダメです。ただでさえ、泣く事を堪えるのに必死な今の僕に、ケインの口から「フルスタ」という言葉を聞かせてはいけません。いけないのに……っ!
「バーグから、ラティゴ金山の返還を要求するには、領土の一部割譲か、もしくは、それに見合う対価が必要になるだろうって」
「そ、そうだね。バーグも似たような事を言ってきたらしいよ。だから、陛下はそんな横暴には応じられないって怒って……」
「フルスタ様は“それに見合う対価”として“自分”をバーグに人質として送ってはどうかと提案しているそうだ」
「っ!」
それは初耳です。まさかフルスタがそんな事を言っていたなんて!
「もちろん、陛下はそんな事はさせられないと却下したそうだ。ただ、フルスタ様は自分の身一つで国や民への犠牲が最小限に抑えられ、国の安寧が守られるのであれば、公共の利益の為に喜んでこの身を差し出せないかと考えているんだそうだ」
「……ぁ」
なんという事でしょう。まだ、たったの十二歳の弟が、そんな立派な事を考えていたなんて。僕はケインの口から発せられた弟フルスタの言葉に、呼吸が苦しくなりました。
「う、うん」
どうやらバレていないようです。ケインはウィップから顔を上げると、僕の方をジッと見つめながら、そりゃあもう嬉しそうな顔で微笑みました。フルスタの話をする時のケインはいつも以上に楽しそう。あぁ、苦しいです。
でも、僕は頑張って笑い続けます。だって、僕はただでさえ出来損ないなせいでケインに迷惑をかけているのに、その上性格まで悪いなんてバレたら、本当に嫌われてしまいます。
「ほ、本当に……フルスタは凄いね」
「あぁ、最高に立派な御方だよ」
あぁ、もう我慢できません!こういう時は話を変えるのが一番です。
「ね、ねぇ。ケイン!そういえば、金軍の左軍の指揮隊長に昇格したんだって?」
「あぁ、聞いたのか」
「うん、凄いね!十六歳で指揮隊長に任命された人は初めてだって聞いたよ!」
僕はつい先程部屋守の兵士から聞いた話をケインに振りました。これで、ケインの口からフルスタの話を聞かなくてよくなります。あぁ、良かった!
「やっぱりケインは凄いよ!」
「別に凄くなんてない。今、バーグとの関係が悪くなってるから、いざって時の為に先に人事を動かしただけだろ」
「……あ」
「戦争になったら、左軍である俺はまっさきに戦場に行く事になる。……ま、別にいいけど」
「ぁ、あ……えっと」
「戦争になったら、俺は死ぬかもな?」
「っっっ!」
あぁ、僕はなんて事を言ってしまったのでしょう!そうです。今は隣国バーグとの関係がとても悪化しています。その中での軍での昇格なんて、ただ危険が増すだけなのに。僕は、本当に愚か者の出来損ないです。
「せ、戦争になんてならないよ!きっとお父様が……陛下がなんとかしてくれるから」
「確かに陛下は名君と言われる方だけど、国の威信もあるし……こないだの会談で話し合いも決裂してる。それとも、次期国王陛下であるラティ王子には、戦争を回避する何か良い案でもあられるんですかね?」
ケインがスッと目を細めながら僕を見ます。その問いに、僕は何の答えも持ち合わせていません。僕は自分には何の能力も無いのに、全ての問題を父に丸投げして無責任な事を言った自分を恥じました。
僕はどこまで愚かなのでしょう。ずっと目の奥に滲んでいた涙が、少しずつせり上がってきます。堪えなければ。
「……フルスタ様が言っていたそうだ」
「へ?」
俯く僕に、ケインの口から再びフルスタの名が漏れ聞こえてきました。ダメ、ダメです。ただでさえ、泣く事を堪えるのに必死な今の僕に、ケインの口から「フルスタ」という言葉を聞かせてはいけません。いけないのに……っ!
「バーグから、ラティゴ金山の返還を要求するには、領土の一部割譲か、もしくは、それに見合う対価が必要になるだろうって」
「そ、そうだね。バーグも似たような事を言ってきたらしいよ。だから、陛下はそんな横暴には応じられないって怒って……」
「フルスタ様は“それに見合う対価”として“自分”をバーグに人質として送ってはどうかと提案しているそうだ」
「っ!」
それは初耳です。まさかフルスタがそんな事を言っていたなんて!
「もちろん、陛下はそんな事はさせられないと却下したそうだ。ただ、フルスタ様は自分の身一つで国や民への犠牲が最小限に抑えられ、国の安寧が守られるのであれば、公共の利益の為に喜んでこの身を差し出せないかと考えているんだそうだ」
「……ぁ」
なんという事でしょう。まだ、たったの十二歳の弟が、そんな立派な事を考えていたなんて。僕はケインの口から発せられた弟フルスタの言葉に、呼吸が苦しくなりました。
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