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薄曇り。
駅前の喫煙スペースで、羊は狼に出会った。その男は連れの男に狼と呼ばれていた。羊は煙草をくわえたまま狼を眺めた。狼がその視線に気が付く。煙の間でふたりの視線が交わる。人の流れ、電車の音、車がアスファルトを進む音。止むことのない人々の声と会話。ごーごーと低い音が途切れることなく続いている。霞んだ視界。水を含んだ吸い殻の匂い。羊と狼の出会いは、そんな、雑多でとりとめのない場所からだった。
ふたりはいつの間にか知り合いになった。きっかけはなんだったか。
知り合ってからの狼は乱暴だった。狼は実に乱暴に羊を舐めた。羊がどんなに喘いで頼んでもやめなかった。狼の舌はなぜか人より長かった。羊の口の中は、いつも狼の舌で犯される。口の中が擦り切れる。狼が羊から口を離すと、いつも血の味だけが残った。それ以外、なにも残らない。ふたりはそれだけを味わった。何も残らないキス。荒いだけの呼吸。何も感じていない顔。なにも残らないのに汗と唾液だけが残るベッドの上。湿度の高い温度。ねばつく煙草の匂い。
駅前の喫煙スペースで、羊は狼に出会った。その男は連れの男に狼と呼ばれていた。羊は煙草をくわえたまま狼を眺めた。狼がその視線に気が付く。煙の間でふたりの視線が交わる。人の流れ、電車の音、車がアスファルトを進む音。止むことのない人々の声と会話。ごーごーと低い音が途切れることなく続いている。霞んだ視界。水を含んだ吸い殻の匂い。羊と狼の出会いは、そんな、雑多でとりとめのない場所からだった。
ふたりはいつの間にか知り合いになった。きっかけはなんだったか。
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