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「は?」

なんですと?

「疑うようで申し訳ないのですが、やはり異世界人というのは簡単には信じられない。本当に体が違うのなら見せてくれませんか?もしあなたの話の通りであれば、それが何よりの証拠になると思うんです。それに本当にあなたが別の世界なら来たというなら、この世界で頼る人もなく金もないということで、きっと今日を生きるのも困る状態なのでしょう。幸いうちには空き部屋はいくつもあるし、私は役所勤めなので貯えもそれなりにあります。この世界で生きていけるよう援助をしましょう」
「えっ、本当に?」

確かに俺だって異世界から来たなんて言われたら困惑するし信じない。
考えて考えて、結局脱ぐことにした。
恥さえ我慢すれば信じてもらえ、さらには庇護してもらえるなら安いものだ。

この世界じゃ基本的に土足のようだが、寝室だけは靴を脱いで過ごすそうで、着替えは基本寝室でするそうだ。こちらも居間で堂々と脱ぐよりマシかと言われるままに移動する。
ドロドロの靴下を脱ぎ捨て寝室へお邪魔する。
奥にベット、手前に簡素な木製テーブルとベンチがあるだけ。なかなかの広さの部屋だ。
さあ後は脱ぐだけ、となったがまじまじと見つめられていると服に掛ける手が重くなる。
苦し紛れに一つ提案してみることにした。

「俺だけじゃ恥ずかしいから、そっちも脱いでもらえませんか?」
「!……確かに平等じゃないですね。貴方からしたら私の話の方が信じられないと思いますし」

意外にも受け入れてくれた。
今までの青年の話を聞いた印象じゃ、この世界の方が裸になる羞恥心が俺達よりずっと強いようだった。それにも関わらず同意してくれたことで、青年が相当真面目だってことが分かる。
だけど一人だけ裸になるってのが抵抗があったので正直助かった。俺は風呂場でもないのにスパッと脱げるほどフランクじゃないのだ。
それに言われてみて気づいたけど、俺もこの世界の人間の体に興味がない訳じゃない。この人がウソをついているとは思えないけど、やっぱり百聞は一見に如かずなんだよな。

服の裾に掛けていた手を引き上げて、スウェットを脱ぎ捨てる。こういうのは勢いだ。

確認だけなら下だけ脱げばいいのだけど、一応上から脱いでいくことにした。今のところの情報じゃ違いは下半身だけのようだけど、他にも違いがあるかもしれない。上も脱げば比べやすい。
青年も俺に合わせて全部脱いでくれるようだ。
ちなみに俺の恰好はスウェットの上下。部屋着そのままだ。本気なら2秒で脱げる防御力の低さだ。
比べて青年の服は何枚も重ね着され、紐が複雑に組み合わされているためかなり時間がかかった。案の定俺の方が早く脱ぎ終わり前を隠す情けない恰好で待つ羽目になった。

待つ間、嫌でも青年の裸が目に入ってくる。
パッと見じゃ、俺と違いなんてないように見える。
俺のなまっちろい体に比べて筋肉がしっかりついていて引き締まってるけど、この辺は生活習慣の違いだろう。
これだけじゃ違いは分からない。

時間を掛けて青年も全部脱いで全裸になった。視線がウロウロさまよいすごく恥ずかしそうで、こっちまで照れてくる。
ええい、このままモジモジしてても裸になってる時間が長引くだけだ。

「じゃ、じゃあ、俺から見せるんで」

なるべく何でもなさそうに言って、股間を隠していた手を外す。とはいえここはすでにさっき見られているから、変な点があれば指摘されているはず。すぐに終わると思ったんだけど……

「……」

なのに、なんで無言で凝視してくるの?

「な、なに?なんか変?」

心配になって自分も視線を自信の下半身へと向ける。でもあるのは見慣れた自分の分身だけ。まあ、緊張で縮こまってるけど。

「い、いや、変というか…その、皮があって、私とは違うもので」
「ぐっ!」

デリケートな部分をえぐるんじゃない!仮性なんだから問題ないんだよ……たぶん!

「そ、それは…個人差というものでは…」
「そういえば、下世話な話が好きな同僚が話していたような……。では、この部分は我々と違わないということだろうか。棒も玉もある。大きさも小ぶりですが、体つきも違いますし個人差ということなのでしょう」
「うぅ…」

無意識のディスリが痛い。
八つ当たりなのは百も承知だが、つい青年を恨みがましい目で睨んでしまう。

「…俺も見たいんだけど」
「う」

そう、青年の方は大事な部分はまだ両手で隠しているのだ。俺のをボロクソに言っておいて自分のを見せないというのは頂けない。
俺の目つきに怯んだのか、躊躇しながらもそろりと手を外した。
う……、がっしりした青年が羞恥に目を瞑って恥部をさらけ出す光景は倒錯的だ。いけない何かに目覚めそう。
そんなくだらないことを考えていたが、次の瞬間には全部吹っ飛んだ。手の影から現れたのは重量級のブツだったからだ。

「で、でか…。え?人種の差?この辺の人ってこんなに大きいの?それともアンタがすごいだけ?」
「え、その、分かりません。他人の肌なんて見る機会はないので。亡くなった父のものならチラリと見たことがありますが、同じような大きさだったような」
「あ、そうか。風呂もトイレもないとなると人のちんこなんて見る機会はそうそうないのか」
「ちん?あっ、はい。私はめったに夜遊びもしませんし、男女のことにも疎いので正直詳しくなくて」
「性教育とかもないの?」
「何ですか?それは?」

性教育について簡単に説明したらものすごく驚かれた。
どうもここは性に関する部分は相当クローズな扱いのようだ。女の人とのセックスができないばかりか、ずりネタにすら困りそう。この世界の人ってこれで生きてて辛くないのかな?

いかん、思考が逸れた。今は検証中だ。
うーん、ブツはびっくりするくらいデカかったけど、あっちの世界だって人種や個人差でかなり違ってたし。違う生き物だ!っていう程の印象は受けない。
とにかく見える範囲は一応同じってことしよう。

となると、一番の問題部分を次に見せることになる訳で……。そう、けつの穴を晒すのだ。
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