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魔女退治を始めます 4
しおりを挟むやばい、やばい、やばい!!
このままじゃ生殺し状態が延々と続くことになってしまう!
エッチなことをし過ぎて死亡なんて最早ギャグだけど、全然あり得る。シャレにならない。
何か、何か考えないと――
「!はぁ…ッ」
イった後でもまだ緩く勃っていた俺の愚息。
いつの間にか俺の両膝を割り開くように抱えていたゾンビが、ソレに顔を寄せていた。
そして俺に見せつけるように大きく口を開けて飲み込まれてしまう。
「ああ~~ッ」
ひんやりした咥内が俺の熱で温まっていく。
さらに両胸にゾンビ二人が吸い付いてきた。
まるで赤ちゃんが母乳を飲むようにちゅうちゅう吸われ、快感を少しでも逃がしたくて俺は頭を激しく振った。
「アッ!そ、そんなとこ…何も…出ないからッ」
「ええ。残念です。こんなに美味しそうなのに。ですがここを吸うとあなたの纏う魔力がもっと濃くなるんですよねえ。気持ちいいんでしょう?」
「そこで、しゃべらないでぇッ」
切なく疼くお尻を気力で無視して考える。
ゾンビを倒すには聖魔法が必要。
でも俺の聖魔法は自分限定で、相手に掛けることができないから攻撃は無理。
聖水は効くみたいだけど致命傷にはならない。
たくさん掛ければダメージが増えたりする?
でも一つの聖水で与えるダメージは数分経てば治る程度。この推理が当たってるとしても半端じゃない数を用意しないと倒せると思えない。
そしてレイシスさんもガロスさんも数を気にしていた。
ってことはそんな大量な聖水なんて今すぐ持ってくるのは無理なわけで。
ああ、聖水よりももっと強力なアイテムがあればいいのに!
…
…
…ああ!
思いついたアイデアはあくまで希望に過ぎないけど。でも賭けるしかない!
震える腕に魔力を込める。
「ん…ッ!」
遠呼びの腕輪が光る。
ゾンビ達は敵を呼ばれたにも関わらず、全く気にしていない。
「ゆっくり食事したかったので、こちらに連れて来たんですが」
「いっそ羽虫を片付けてからのが、食事に集中できるかもしれません」
「それもそうですね。小腹は膨れましたし、煩わしいことを済ませてから食事を再開しましょうか」
しばらくすると遠くの方から爆発する音が聞こえてきた。
しかもそれがどんどん近づいてくる。
そして次の瞬間には部屋の横に大穴が開けられていた。
ドゴォオオオオ!
壁を破壊とか、お城崩れない?相変わらず全員とも容赦がない。
「サクヤ!」
「探したんだぞ!」
「魔女のくっせー匂いのせいで、全然サクヤの匂いが辿れなくって――」
そして三人の目に俺の惨状が晒されてしまう。
皆の目が丸くなって俺の体をガン見してく。
隠したいけどピクピク震える手足は、ろくにいう事を聞いてくれない。
服は引っ掛けた程度で脱がされて。
汗や涙、精液は零れる傍から舐め取られていたのでドロドロにはなっていないものの、全身がゾンビの唾液で怪しくテラテラ光っている。
「き、貴様ら~~~!サクヤに何をした!」
「ギタギタにしてくれる!」
「嫁を魔物にマーキングされるなんて…ぶっ殺してやる!」
うわあ、やる気満々になってる。
でもこのままじゃさっきの再現にしかならない。
漏れる喘ぎ声を押し殺して、レイシスさんを呼ぶ。
「レイシスさんっ。あ、アレを…ッ、奴らに…」
「サクヤ!?何を使うんだ?聖水のことか?」
「違ッ。ゴードンさんに、貰った、くすり…ッ」
「!」
そう、俺が思いついたのはオークで薬師のゴードンさんに貰った『状態回復薬』だ。
確か毒やしびれといった状態異常に効果がある薬って言っていた。
これってまるで聖水と効果が同じなんだ。
ということは聖水が効くならゴードンさんの薬も効くんじゃないか?
しかも彼の薬師の腕は相当高いみたいだった。
それなら、万が一があるんじゃないかって期待したんだ。
レイシスさんは俺の途切れ途切れの声でもすぐに分かってくれたらしい。
預かっていてくれたそれを懐から取り出し、水魔法を応用しているのか薬を霧状に変えてゾンビへ向けて放った。
「「「ぎゃああああああ!!!」」」
聖水の時とは違う、本気の悲鳴が響く。
「溶ける!溶ける!」
「何だこれは!?」
「止めてくれ~!」
「これほどの効きとは……。あのオーク、最上級薬師なのか?」
「よかった……。あぁッ!」
「サクヤ!」
ホッとした拍子に、今まで気力で押さえ込んでいた呪いが暴れ出す。
発情状態で喘ぐことしかできなくなった俺を見て、発作を誰が治めるかでまた一騒動起きたのだった。
◆◆◆
ひ、ひどい目にあった。
あれから三人のお陰で何とか発情は収まった。詳しくは割愛するけど!
だってゾンビ達も見てる前で……、あ~!だめだ、忘れよう!
と、とにかく身支度もして、今はロープでぐるぐる巻きにしてるゾンビと相対してるところだ。
俺達が対ゾンビの最強アイテムを持ってるって分かったし。ゾンビ達もむやみに反抗することもないだろう。
だから別にこのまま放置して先を目指したっていいんだけど…、ちょっと気になることがあったんだよな。
「確認したいんだけど…。あんた達って、魔女の手下なんだよな?」
俺の問いかけに三人のゾンビばかりか、ガロスさん達までキョトンとした表情になった。
あ~、今のは言い方が悪かったかも。
「いや、手下っていうのは分かってるよ?そうじゃなくて…。えーと、魔女の手下って割には、散々文句言っていたし。別に好きで下についてる感じに見えなかったっていうか。
ただ魔女の命令には絶対に逆らわないみたいだったから余計に分からなくって」
俺の疑問にやっとピンときたらしい。真ん中のゾンビが口を開いた。
「そういう事ですか。それはその通りです。奴が好きでついているなどとんでもない」
「手下に甘んじていますが、無理矢理言う事を聞かせられているだけです。忠誠など欠片もありません」
「そうでなければ、あんなクズ…いえ、汚物…、いえいえ、悪女のいう事なんて聞くわけありません」
うわあ、魔物からここまで言われるって、魔女の性格って相当酷いんだな。
とにかく強制的に家来にされているってことなら、わざわざ敵対する必要なんてない。
むしろ同じ被害者の会っていうか。こいつらの愚痴を聞いていると変に仲間意識を感じてしまいそうだ。
それにしても無理矢理いうことを聞かせるってどうやっているんだろう?
そういう魔法とかあるのかな?
俺が考え込んでいると、ゾンビ達が不思議そうに声を上げた。
「……どうしたんですか?我々を始末しないんですか?」
「ここまできて焦らすなんて意外とSな方なんですねえ」
「ああ!でもまだ殺さないならその間に食事の続きをぜひ。死ぬ前におなか一杯あの魔力を食べさせて頂きたいです!」
それは名案!いいね!言って、きゃっきゃ盛り上がってるんだけど。
自分の命より食事なの?
な、なんというか、気が抜ける…。
「はぁ、別にやっつけないよ」
「「「え」」」
「だって、話を聞いてると魔女に心から仕えてるって訳じゃなさそうだし。
俺達が魔女のところへ行くのに邪魔しないでさえいてくれたら、わざわざ倒したりなんてしないよ」
思っていたことをそのまま伝える。
すると俺の言葉にゾンビ達は驚き、始めは疑いの目を向けてきた。ただ繰り返し話す内に俺が本気だって分かってくれたらしい。どんよりとした生気のなかった目に光が差し込んだ。
「正気ですか?魔力もアクがなく素晴らしい喉越しでしたが、気性もそのままとは。なんと素晴らしいお人柄なんでしょう…」
「こんな人間もいるんですね…」
「倒せる魔物を、あえて見逃すなど。貴方は人間ではなく天使なのですか…」
えええ?こんなにキラキラした視線を向けられる方が意味不明なんだけど。
「いやいや、無駄な殺生したくないし。そうですよね?」
ついガロスさん達に振ってしまう。
「行動は間抜けだが、確実にSランクの魔物…。倒したら経験値がどれだけ溜まるか…」
「確かアンデッドの骨は魔法薬の素材として、とんでもない高額な買取があったような…」
二人の目が肉食獣のような輝きを放ってるんだけど……。
ちょっと待ってっ!モンスター相手ならともかく人型の敵なんてスルー出来るならそれ一択でしょ!
俺の倫理観じゃあ、今から倒すなんて絶対に無理!
これが世界を超えた常識の差なんだろうか。カルチャーショックだ。
俺のドン引きした視線を受けたせいか、レイシスさんは気を取り直したように咳ばらいをした。
「ゴホン。他にもこいつらを倒したほうがいい理由はある。
心からの忠誠は誓っていないとは分かったが、それでもこのゾンビ達は魔女の命令には逆らえんのだろう?
いつでも倒せる手段がこちらにはあるとはいえ、不意を突かれることもあるだろう。ここで放置しておくのは危険すぎる」
「そういえば無理やり言うことを聞かせられるんだったね。えーと、無理やりっていうのは?魔女が作った魔法でも掛けられているの?」
問いかけにゾンビは首を横にクイッと倒した。
襟ぐりから黒っぽいものがちらりと覗く。これは…首輪?
「このせいですよ。従属の呪いが掛かった首輪です」
「一度嵌めたら二度と外れません。壊すことも不可能。この首輪にはどんな物理攻撃も魔法攻撃も効かず、全て無効化するそうです」
「美味しい美女がいると噂を聞きつけて食事に向かったんですが、全ては魔女の罠で。その時に嵌められてしまったんです」
「命令に逆らうと死ぬ程の苦痛に苛まれます。それと同時に回復されるので死にはしないのですが、あれは我々でもかなり堪えます」
「私達は力もありますし見目もいいでしょう。使える従僕を欲しがっていた魔女に目を付けられていたようなのです」
着けられた理由は間抜けだけど、罠にハメてきた犯人に仕えなきゃいけないなんて何とも気の毒な話だ。
「レイシスさん、何とかなりませんか?これが取れれば見逃しても問題ない訳だし」
俺の言葉を受けて、レイシスさんは風魔法を使ってゾンビのシャツのボタンを開けた。
はだけた首元に嵌る首輪は、何とも禍々しいデザインだ。
それを気を付けながら見分したレイシスさん。一通り見た後で顎に指をあて考え込む仕草をとる。
「…通常はどんな呪いのアイテムも、解く方法が存在する。
というかそういった解呪のリスクがないと強力な呪いにならないんだ。だがその解呪法はそれこそアイテムごとに千差万別。有名なアイテムなら逸話もありヒントを見つけることもできるだろうが、こんな枷は聞いたこともない。手がかりなしじゃ手も足も出ないな。魔女じゃなければ解けないだろう」
「そうなんだ。攻撃を無効化するってことは壊すこともできないし…。う~ん」
「フム」
「「「ぎゃ!」」」
一通り、雷、氷とゾンビの首輪目掛けて繰り出していく。
当然首輪を掛けているゾンビ達にも当たってる。
「うるさい。貴様ら、聖魔法以外は効かないのだろう」
「効かないとはいえ、痛いものは痛いんですよ!しかも無抵抗でいる相手に!ああ、やはり人間なんて種族は野蛮で低俗だ」
「まあまあ」
痛いのは可愛そうだけど、検証の為なら仕方ない。
ゾンビ達を宥めようとしたら、それなら魔力を分けてと言われそれぞれ頭を撫でてやった。
満足げな顔で『サクヤは人間でなく別の種族に違いない』とか呟いている。
何それ、俺は人間だし。
続けてガロスさんやウィルも全力で首輪を壊しにかかったが、これも無駄だった。
っていうか、首輪の周りに思いっきり当たってる!
めっちゃ抉ってるよ!?わざと?さっきの戦闘の恨み?
泣き言をいうゾンビ達を宥めるために、さらに肩や背中もなでてやった。
嬉しそうに擦り寄って来るのを見ていると大型犬を撫でている気分になる。全然可愛くないけど。
それにしても物理攻撃も魔法も効かないっていうのは本当らしい。
うーん、レイシスさんの魔法でもダメなら、俺のへっぽこ魔法なんかじゃどうにもならないしなぁ。
まあ、ダメ元でも試すだけ試してみるか。
俺は首輪に向かって今までに覚えた魔法を片っ端から掛けてみた。
「ん?」
ある魔法を掛けた後、ふと違和感に気付き魔法の発動をストップする。
「今、誰かしゃべりました?」
「?別に誰もしゃべってないぞ?」
「あれ?」
おかしいな。何か聞こえたような…。
改めて耳を澄ますと〇ッキーのような高い声が、早口で何かをボソボソ呟いている声が聞こえてきた。
んんん?
しかもこの内容って…首輪の解除方法?な、なんで!?
「首輪の解除方法が聞こえてくるんですが……」
「「「ええっ!?」」」
「何だと!」
「こっちには何にも聞こえねえぞ??」
訳の分からない事態に一同がアタフタしたものの、一足早く落ち着いたレイシスさんが推測を皆に語ってくれた。
「鑑定していないから確実とはいえないが、おそらくこの呪いの首輪は半生物のアイテムなんだろう」
「半生物…?」
「直前にサクヤが掛けた魔法はなんだ?」
「えーと、相手の心の中を読む魔法…あっ!」
俺の横でウィルもハッと声を上げる。
「そうか!生き物だったからサクヤの魔法が効いて解呪方法が読めたって訳か!」
「なるほどなぁ、改めてとんでもねえ魔法だな!」
ガロスさんが笑顔で俺の肩をばんばん叩く。い、痛い。
でも自分の魔法が誰かの役に立つのは純粋に嬉しい。
俺も笑顔になって早速ゾンビ達の首輪の解呪へと乗り出した。
解呪方法は『この世で一番美しい魔女。豊かな黒髪はどんな豪奢な織物でも叶わず、白く透ける肌は陶磁器よりも滑らかで美しい…』とひたすら続く魔女への賛美を一字一句間違えずに言い、魔女のいる方へ向かって頭を5分下げると言ったものだった。
解呪方法の説明中に、ゾンビ達含め一同の目がスンとなったが、きっと俺も同じような顔になっていると思う。
とにかく棒読み賛辞の苦行を乗り越え、無事にゾンビ達は解放された。
その笑顔は晴れやかで、初めの頃の胡散臭い笑顔とは全然別物。ゾンビなのに顔色がよく見えるくらいだ。
「これであのクソ魔女のいう事を聞かなくていいんすね!」
「面と向かって罵倒もできる!ああ!こんな日がくるなんて夢のようです!」
「サクヤ様!心からの感謝を!本当にありがとうございます!」
…様?
様ってなに?
気になったけどあえて突っ込まない!俺の今までの経験がスルーすべきだと警告している。
「あー…、無事に首輪も取れたしよかったね。それで俺達の邪魔をしないでくれるなら、もうどこでも好きなとこに行っちゃっていいから、元気でね。
あ、でもその前に魔女のいるところだけ教えてくれるかな?」
「いやいや何をおっしゃいます!サクヤ様は我々の新しいご主人様です!」
「はい、この御恩を返すまでは離れられません!」
「だから今後もその香しい魔力を私どもに」
最後のやつ!本音漏れてるよ!
こ、こいつら、ご飯目当てに俺にまとわりついてくる気なのか?
「いや!そういうのホントに要らないんで!道案内だけしてくれたら消えて!」
「「「嫌です!ムリです!」」」
俺達のやり取りを見ていたウィルが爆発した。
「も~~!サクヤってばまた変なの引っかけて!!お前らも!サクヤは俺の嫁なの!くっつくな!」
「いやいや、下僕が主人の側にいるのは当然です」
「その通り。いつでも魔力が摂取できる位置に。いえいえ、お助けできる位置にいないと」
「これからは我々がしっかりサクヤ様を助けますので、むしろ貴方方が不要なのでは?」
「なんだと~!!!」
わちゃわちゃ言い合うのを何とかとどめて道案内してもらった。
戦闘したとき以上に気力が削られたような気がするのはきっと気のせいだと思いたい。
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