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状況把握をしてみました 2

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「やはりもう一部屋とった方が…」



「もったいないです!っていうか、追加料金を出して簡易ベッドを入れてもらったのだって申し訳ないのに、これ以上お金使ってもらうわけにはいきません」



「しかし男女が同じ部屋に泊まるというのは」



「だから俺は男なんでそれも問題ないです」



「あ」



レイシスさんとさっきから同じ会話を何回も繰り返してる。

どうも時間がたつと俺が男だってことを忘れてしまうらしい。

メガネをかけていかにも頭が良さそうな感じなのに、意外とうっかりしてるのかな?



「サクヤがいいって言ってんだから、そんでいーじゃん。

それより旅の進路の確認しようぜ」



「わっ」



ベッドに腰かけているガロスさんにひょいっと腕を引かれて、そしてそのまま膝の上にすとんと乗せられてしまった。

横にずれようとしても筋肉に阻まれて動けない。



「あの…降ろしてください。重いでしょ?」



「ぜーんぜん♪遠慮しないでいいから」



「遠慮じゃないんだけど…」



正気の状態で膝抱っこというのはかなりきつい。自然と顔が赤くなる。

ガロスさんはそんな俺にお構いなしで、抱えるようにして地図を目の前に広げて見せた。

地図はざっくりした作りだったが、それでも俺の知っている日本や世界の地図とは全く違っていた。



今いる街がここで…目指す渓谷がこの辺か。

縮尺ははっきり分からないとはいえ、結構遠そうだな。



「遠回りになるけど、こっちの草原ルートで行くか」



「そうだな、その方がサクヤの負担も減るだろう」



「えっあの、俺頑張るんで。俺のせいで道を変えなくても」



「サクヤ、旅では無理は禁物だ。それに誰か一人が不調になればパーティ全体が危なくなる。

ひとりひとり体力は違うのだから、パーティを組む上でこうした計画を立てるのは当然のことなんだ。遠慮は一切不要だ」



「そうそう、それに遠回りって言ってもついでに討伐の依頼も何件か受けていくからさ。

確かこの辺だと『飛びトカゲ』が出るだろ?アレも捕まえると結構いい金になるんだよな~。

っつーわけで別に俺らに損は全然ねーから安心しな」



当然のように返された言葉。俺も当たり前のように仲間として扱ってくれるその態度。

全然知らない世界に放り出された心細さがじんわり温まる。



…この人たちは本当に優しいと思う。



こうして見ず知らずの相手なのに面倒を見てくれることもありがたい。

でもそれだけじゃなくて…。



「あの、ありがとうございます」



「だから、いいって」



「いや、旅のこともだけど。俺の話を信じてくれたし」



そうなんだ。

俺が一番嬉しかったこと。



違う世界から人間が来るなんて言い伝えに残っているくらいでしかないような突拍子もないんだ。

嘘つきや変人呼ばわりされてもおかしくないのに、この二人もギルドのお姉さんもそのまま受け入れてくれた。

そのことにどれだけ救われたか分からない。



そのままの俺を信じて受け入れてもらえた。



日本にいたころ、実親のいない俺はどうしても色眼鏡で見られてて。

分かってもらいたくてもうまくいかず何度も悔しい思いをしていた。



それがまさか別の世界で経験できるなんて…。なんだか不思議だ。



「まぁ、カリーが懐いてたしな。お前が怪しい奴じゃないってのは初めっから知ってるし」



カリー?

…ああ、確かガロスさんが乗っていた恐竜の名前だ。

意外に懐っこくて、初対面の俺にも鼻を擦りつけてきたのを思い出す。



「カローリは警戒心の強い良い生き物だ。信頼できる群れだと認識した個体にしか心を許さない。

そのカローリがすぐに君に懐いた。悪意のある者には絶対にできないことだ」



「いや、それでも。こんな話信じてくれるってなかなかできないと思います。

しかもその原因を探すのも手伝ってくれるなんて。

たぶんすごく迷惑かけるとは分かってるんだけど、でも、本当に嬉しいです。ありがとうございます」



俺は口が上手くないから言いたいことの半分も言えてない気がする。

だからせめてと感謝を込めて、向かいのベッドに座るレイシスさんに笑いかけると、なぜか目を見開いて狼狽え出した。



「…き、君は!やはり私が付いて行って正解だ。どうにも危なっかしいし無防備すぎる」



「?」



「でへへ。別に保護者なんだから迷惑でも何でもないけど、こうしてにっこり笑って礼を言われるっていいね~。

めっちゃやる気でるわ!」



そう言ってにこにこと上機嫌なガロスさんが、ぽんぽんと俺の頭を撫でる。



ドクン



!? 心臓が揺れる感覚。覚えがあるこの感覚…まさか…



次第に乱れていく俺の息遣いに二人も異変を感じたらしい。



「サクヤ?」



「どうした!?顔が真っ赤だぞ!」



「あ、あぅ…」



そうして俺は本日2度目の発情状態に陥った。





◆◆◆





「はぁはぁ…うぅ…」



「!? まるっきりモンスターフラワーの症状のまんまじゃねーか!どういうことだ?」



「まさか…後処理が半端に終わっていたという可能性は?」



「はぁ?きっちり3回処理しましたー!だいたいなー、ギルドでもきちんと処理報告終わっただろーが!

もし終わってなかったらこんな長時間普通でいられる訳ねえっつーの!」



「しかし…解毒した後で再発したなど、聞いたこともない…。まさかあの花が変異種だったとか?」



「今そんなこと考えても意味ねえだろ。このままじゃサクヤはつらいだけだ。さっさと処理やっちまおうぜ?」



「!! で、では俺は酒場に行って時間を潰す!終わったらまた連絡を…」



そう言ってガバッと立ち上がったレイシスさんの服を、ガロスさんが掴む。



「おめー、酒はろくに飲めねえじゃねえか。それよりお前もサクヤのこと気にしてんだろ?

さっきだって呼び出したら速攻で現れやがって。そんなに気に入ってんならお前も処理を手伝えよ」



「「な…!!」」



え、待って。

興奮してて頭がぼんやりしてるけど、聞き間違えていない…よな?



アレを、レイシスさんも一緒にやろうと言ってるの?



絶句したレイシスさんとお互い顔を向け合う。その直後二人とも茹でダコのように真っ赤になった。



無理無理無理無理!!!



あ、あんなことを、またするってだけでも嘘だろって感じなのに…

さらに新しい人に恥ずかしいところを見られるなんて…耐えられない!







でも…

本当なら明日の話をした後はもうこの宿で休めたはずなんだよな。



さっきのガロスさんの言葉を思い出す。



この街はこの世界じゃ割と大きいみたいだけど、現代日本とは全然違う。

こんな夜更けに明かりがついているのは飲み屋か娼館くらいらしい。



行きたくもないところに俺のせいで追い出すっていうのは…いいのか?

俺の都合で恩人にそんなことをさせて。



「どうだ?サクヤ」



「…お、お願い…します…」



「!!!」





そうして長い夜がはじまった。



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