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第1部 SHU始動編
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「ウラユビケンタの詳細座標、割りました!」
「データ送信急げ!」
「了解! 場所はG-3-Ⅱ、北西部です!」
「第1・第4小隊、出撃!」
「「「了解!!」」」
イーグルスが第4小隊を連れて、狙撃スポットまで飛び立った。
第1小隊は各々の能力で移動する。
作戦内容はこのようなものだ。
まず偵察班の任をショートタイマーを除いた第4小隊に移す。
続けて第1小隊到着後、戦線展開、交渉しつつけん制する。
C.i.t.Rの能力とフェイスオフの能力で戦闘空間を外界から隔絶、見つからないようにし、その後状況次第で対象を無力化する。
戦闘方法は小隊ごとに任せるとして、損害がどれほど出るかがカガミハラの憂慮している事案だった。
明確な攻撃方法が判明していない以上、下手な行動は死と直結する。
SHU隊員に、口を酸っぱくして言っていた。
イーグルスがカーゴに第4小隊を載せて飛んだ。
続けて第1小隊が発進する。
第3小隊は第1小隊のバックアップの為、移動班の対価移動とともに待機していた。
オペレーターが第4小隊の目標確保を確認。
ジー・ジーがスコープを覗き、目標ウラユビケンタを捉えた。
「目標確認。」
「まだ撃たないで、目標のほかに何がいる?」
ジー・ジーがスコープの倍率を上げた。
「・・・両手足の長い、顔の無い生物と、とげの生えた浮遊体、それから黒い人影です。」
「そこから特異因子反応の計測は出来る?」
「・・・だめです、遠すぎます。」
「了解。待機してて。」
「了解。」
「数学魔が近づけますが。」
「刺激させないでおこう。」
「了解。」
「ぼくより先に行っててって言ったよね。」
目の前の不気味な生物が、明らかに恐れているが気にしない。
「何戻ってきてんの。」
肉塊は言葉を発せられないから弁明することすらできない。
「はあ、死んでも使えねえのかよこのクソ野郎ォ!」
手足の長い肉塊が蹴り上げられた。
宙に少し浮いて、黒く風化して消えていった。
呼気を荒くするケンタを諫めるように、タローがケンタの肩を叩いた。
「なにさ。」
タローが南の方を指した。
小さな点がやけに光っている。
狙われている。
「・・・。ねえ、壁にくらいなれるよね?」
空飛ぶ肉塊にケンタは告げた。
「ぼくをあれから守れ。」
従順に仕立て上げられた使役体が、小さな光が向けられている方向に移動した。
・・・最初っからあのクソ野郎どももこんなんだったらよかったのに。
ルンルンで学校に行っても、変わったのは僕だけで、奴らはいつも通り僕をいじめようとした。
教室に入ると、早速ゴミ箱に向かって押し倒された。
水だの雑巾だのを投げつけられる。
でもこの後のことを考えたら、まるで苦しくなかった。
まあ腹は立ったけど。
投げるものがなくなったのか、ガキ大将は僕を持ち上げて、机に向かって投げた。
元気だったから受け身を執れて、背中がジンジン痛むだけで済んだ。
何よりこの後のことが楽しみすぎて、楽しみすぎて顔に出ていたらしく、
「何笑ってんだよ、キモっ!」
と笑いながらまた僕を机に向かって投げ飛ばした。
その時におばさんの目が入った小瓶を落としてしまった。
それを大将が拾って、お仲間と共有しだした。
「何これ。」
「こんなのでオレらがビビると思ったの?」
「こんなおもちゃで!」
「バカみてえじゃん!!」
・・・バカはどっちだよ。
節穴どもが騒ぎ立てている教室に先生が入ってきた。
「おお、やってるねえ。」
とかふざけたこと言いながらガキ大将のもとへ行くと、
「あ、先生。今日コイツめちゃくちゃ投げてるのに笑ってるんすよ。」
「しかもこんなおもちゃ持ってて。」
そういって先生は小瓶を受け取ると、鼻で笑ってこう言った。
「随分リアルなおもちゃだなぁ。でも学校におもちゃをもってきちゃいけないねえ、お仕置きしようか。」
それを聞いて周りのクソどもは歓喜の叫びをあげていた。
クソ教師は瓶を水飲み場の横に置くと、僕を掴んで勢いよく細長いシンクに叩きつけた。
その時シンクの淵が鳩尾に当たって、さすがにこれは痛かった。
クソは蛇口を4,5回捻って水を噴出させ、その激流の中に僕の顔を突っ込んだ。
いつも通り息ができなくなった。
でもいつも以上に元気だったから息も長く止められた。
目も開けることができた。
後ろから雑巾とか紙ごみを投げられているけど、別に気にしなかった。
だって小瓶がシンクに映ってるのが見えたんだもん。
ここの掃除は毎日ぼくがしていた。
綺麗になるまで磨かないと帰らせてもらえなかったから、いつも本当に綺麗だった。
たまに僕が帰った後に、先生がわざとらしく汚して、次の朝「なんだこれは」と殴られることもあったけど、そのシチュエーションも飽きたみたいだ。
おかげで今、朝のシンクは輝いている。
こんなところで役に立つなんて思いもしなかった。
でももう少し待つことにしたんだ。
この責め苦が終わったら、今までの分を返してあげるのさ。
もちろん好意からだよ。
時々水から顔を出してくれたかと思うと、今度はシンクの底に顔を叩きつけるんだ。
バカなやつら。
こうすればするほど後でもっと痛い目見るのに。
そうしてまた顔を激流に突っ込まれる。
5分くらいで一連の行為が終わると、先生はぼくの髪を掴んで持ち上げた。
汚い顔をぼくに近づけて、聞き飽きたセリフを吐いた。
「ケンタくぅん、反省しましたかぁあ?」
周りのクソどもがげらげら笑っている。
シンクにもまだ小瓶も、中身も映っている。
だからそれをじっと見つめてた。
「おい。」
じっと。
「こっち向け。」
ただじっと。
「こっち向けぇッ!!」
見つめていた。
「おいこっち見ろつってんだろ!!」
教師が手を振り上げた瞬間、シンクから赤黒い筋肉に覆われた目玉が飛び出してきた。
クソどもは、教師も何が起きたかわからない様子だった。
僕だけが全部知っていた。
「この教室を包んで!!!」
僕が叫ぶと目玉の周りの肉が膨らんで、あっという間に教室の全部の出入り口を塞いだんだ。
床も覆ってくれて、なんなら僕以外の全員の足も肉に埋めてくれた。
みんな、怖がってた。
腰を抜かしちゃう女子、恐怖で漏らす男子、喚き倒すガキ大将とその子分。
なによりも先生。
「おい・・・なんだよこれ、ケンタぁ!! どういうことだこれ!!」
ずーっとぼくに向かってなんか言ってるんだ。
ぼくは先生の近くにいたから、殴られそうになったんだけど肉がその腕を止めてくれた。
ついでに周りの子供たちも四肢が拘束されて、ついに宙に浮かんだんだ。
「おいやめろ!」
「助けて! たすけて!!」
「やめて、ママぁあ!!」
とかいろいろほざいてたから、とりあえず肉に命令して口も覆わせた。
静かになったから、ぼくはのびのびとスピーチができたんだ。
「なんでこんな目に合ってるの? なんでぼくらがこんな目に合わなきゃいけないの? そう思ってるでしょ?」
ぼくはガキ大将の子分の一人、小柄な方に近づきながらそう言った。
「ね、お前もそう思うでしょ?」
何も言わない。
「ほら、何か言えよ。」
何も言わない。
ぼくは肉に向かって命令した。
「殺せ。」
腕を拘束する肉が胸まで覆って、小柄な身体は上下に引っ張られた。
目に涙を溜めて、腹からは色々溢しながら、クソの一人が真っ二つになった。
それを見てみんな叫んでいた。
「ぼくもそう思ってたよ。なんでこんな目に合わないといけないの。家でも学校でも。俺は叩かれ、蹴られ、殴られ、首を絞められ、痛めつけられた。でもお前らは、すごく楽しそうだった。・・・ああ、ぼくのおばさんはそうでもなかったみたいだけどね。」
次は学級長の女子の方に向かった。女子をまとめる女子、いわゆる一軍だ。またの名をクソビッチっていうらしい。
そいつもぼくを蹴って楽しんでいたが、
「今ぼくはみんなをこうやっていじめてみて、やっと君たちのクソみてえな心がわかったよ。すっごく、楽しい。」
肉に命令した。
「こいつの顔を剥げ。」
床から新しい肉が伸びて、女の顔に纏わりついた。
変な音が鳴ったと思うと、肉は顔から離れていて、学級長の顔は真っ赤な筋に置き換わっていた。
思わず声を上げて笑ってしまった。
「みんなそれぞれ、自分の楽しいように僕をいじめた。誰も責める人はいなかった。先生でさえ。」
先生の前に立った。
何を思ってるかは知らないけれど、その思う感情のせいで顔は真っ赤になっていた。
「先生。先生って、困ってる生徒を助けるものですよね? 生徒がいじめられてたら、救ってくれるものですよね?」
先生の眼鏡にぼくが映った。
タローが先生の前に現れる。
「でも先生は僕を助けてくれなかった。なんならみんなと一緒に僕をいじめた。教師と生徒が共通の楽しみを持っている。最高のクラスですね。本当に。タロー。」
タローが中年の身体に拳を突っ込んだ。
その個所が赤くにじんでいる。
「苦しかったのに、つらかったのに、先生は助けてくれなかった。誰も僕を助けてくれなかった。みんな僕を痛めつけた! だから、その分みんなにお返しします。」
先生の拘束を解いた。
直後、タローがおばさんにしたように先生を拘束した。
足を折られて悶絶している。
「お前には特に返してやるよ。」
「ふざけるな!!」
と叫ぼうとしていたので、タローが先生の喉を潰してくれた。
「みんな見てなよ。みんなには先生にされること以上のことはしないから、安心してて。」
とみんなに一息つかせてから、命令した。
「こいつの皮全部剥げ。」
タローが空いた右腕で教師の服を下着まで破り捨てると、脂ぎった右肩を掴んで勢いよく引っ張った。
赤い線が何本も重なった層がお目見えすると、先生は潰された喉をこじ開けて叫んだ。
多分叫ぶための息を吐いたが正しいんだろうけど、とにかく相当痛がってくれて、ぼくは嬉しいよ。
どこか「許してくれ」って言ってる気がするが、許すわけない。
なのに許しを請う。
バカなのだろうか。
肉塊の力も相まって、案外早く剥き終わってしまった。
真っ赤な身体が床に放り出される。
試しに蹴ってみると、もだえ苦しんで寝ころんだまま暴れだした。
そうしてまたむき出しの筋肉に物が触れて痛み、また暴れて、を繰り返している。
教師とは思えないバカさ加減だ。
いい加減その様子にも飽きたので、今度は僕が首を踏んで殺した。
とっっっっっっっっっっっっっても!! すっきりした!!!!!
まだ何人か残っているが、それはもう肉塊とタローに任せよう。
ガキ大将も正直どうでもいい。
命令して、あとは椅子に座ってその様子眺めていた。
「助けて!」
「許して!」
「ごめんなさい!」
そんな言葉が聞こえたけど、僕にはもう関係ない。
まあ聞いていて気持ち良くないわけではないが、興味を失くしてしまった。
ガキ大将は謝罪の言葉を何回も述べた後、許せよと逆上したのち、胸の肉を削がれて死んだ。
その子分、のっぽの方は顔のパーツを切り落とされて死んだ。
そのほかいろいろ床に散乱しながら、5分ほど経ってようやく全員始末した。
タローがまた小瓶にみんなの破片を小分けにして詰めている。
僕はそれをカバンの中に入れた後、一人の男の子が来ていた黒いパーカーをもらって、それを着た。
内側にもポケットがあって便利だし、何より前々からかっこいいなと思っていた代物だったからだ。
肉塊はいったん消滅した。
いい働きをしてくれたよ。
おばさんの目玉も懐に入れて、血まみれの教室を後にした。
別に行く当てはないけど、とりあえずお風呂入りに行こう、そう思ったんだ。
「手足の長い方が目標に蹴られ消滅しました。」
ジー・ジーが報告した。
「他の使役体は。」
インビジブルがマイクに向けて言った。
「います。ただ浮遊体は目標に僕の射線を通さないような位置に居て、人影は変わらず目標の傍に。」
「了解。第1小隊はまだか。」
「到達まであと32秒です。」
ヴォイドが告げる。
無線を介してインビジブルが言った。
「第1小隊に通達、目標付近に2体の使役体がいます。本体が攻撃せずともその2体が攻撃してくるかもしれません。警戒してください。」
「「了解。」」
第1小隊が応答した。
まもなく接敵する。
直接戦う相手が、ひとまずは使役体でヒナタは安心していた。
もちろん命を懸けて戦うことに変わりはなく、その覚悟は揺るぎないものだが、まだ直接手を下さなくていいことが判るとどうしてもほっとしてしまう。
「ヒナタ。」
カイトが呟いた。
「まだわからないよ。」
・・・カイトには敵わないようだ。
「判ってるよ。」
ヒナタは口角を上げてまた真剣な表情に戻った。
(わかるもんか・・・!)
心の中で思う。
それでもやらねばならない。
自分をだましたつもりはない、自分で認めた選択だ。
でも、彼は納得しきれていなかった。
接敵まで残り10秒。
後悔する暇は与えられていなかった。
「データ送信急げ!」
「了解! 場所はG-3-Ⅱ、北西部です!」
「第1・第4小隊、出撃!」
「「「了解!!」」」
イーグルスが第4小隊を連れて、狙撃スポットまで飛び立った。
第1小隊は各々の能力で移動する。
作戦内容はこのようなものだ。
まず偵察班の任をショートタイマーを除いた第4小隊に移す。
続けて第1小隊到着後、戦線展開、交渉しつつけん制する。
C.i.t.Rの能力とフェイスオフの能力で戦闘空間を外界から隔絶、見つからないようにし、その後状況次第で対象を無力化する。
戦闘方法は小隊ごとに任せるとして、損害がどれほど出るかがカガミハラの憂慮している事案だった。
明確な攻撃方法が判明していない以上、下手な行動は死と直結する。
SHU隊員に、口を酸っぱくして言っていた。
イーグルスがカーゴに第4小隊を載せて飛んだ。
続けて第1小隊が発進する。
第3小隊は第1小隊のバックアップの為、移動班の対価移動とともに待機していた。
オペレーターが第4小隊の目標確保を確認。
ジー・ジーがスコープを覗き、目標ウラユビケンタを捉えた。
「目標確認。」
「まだ撃たないで、目標のほかに何がいる?」
ジー・ジーがスコープの倍率を上げた。
「・・・両手足の長い、顔の無い生物と、とげの生えた浮遊体、それから黒い人影です。」
「そこから特異因子反応の計測は出来る?」
「・・・だめです、遠すぎます。」
「了解。待機してて。」
「了解。」
「数学魔が近づけますが。」
「刺激させないでおこう。」
「了解。」
「ぼくより先に行っててって言ったよね。」
目の前の不気味な生物が、明らかに恐れているが気にしない。
「何戻ってきてんの。」
肉塊は言葉を発せられないから弁明することすらできない。
「はあ、死んでも使えねえのかよこのクソ野郎ォ!」
手足の長い肉塊が蹴り上げられた。
宙に少し浮いて、黒く風化して消えていった。
呼気を荒くするケンタを諫めるように、タローがケンタの肩を叩いた。
「なにさ。」
タローが南の方を指した。
小さな点がやけに光っている。
狙われている。
「・・・。ねえ、壁にくらいなれるよね?」
空飛ぶ肉塊にケンタは告げた。
「ぼくをあれから守れ。」
従順に仕立て上げられた使役体が、小さな光が向けられている方向に移動した。
・・・最初っからあのクソ野郎どももこんなんだったらよかったのに。
ルンルンで学校に行っても、変わったのは僕だけで、奴らはいつも通り僕をいじめようとした。
教室に入ると、早速ゴミ箱に向かって押し倒された。
水だの雑巾だのを投げつけられる。
でもこの後のことを考えたら、まるで苦しくなかった。
まあ腹は立ったけど。
投げるものがなくなったのか、ガキ大将は僕を持ち上げて、机に向かって投げた。
元気だったから受け身を執れて、背中がジンジン痛むだけで済んだ。
何よりこの後のことが楽しみすぎて、楽しみすぎて顔に出ていたらしく、
「何笑ってんだよ、キモっ!」
と笑いながらまた僕を机に向かって投げ飛ばした。
その時におばさんの目が入った小瓶を落としてしまった。
それを大将が拾って、お仲間と共有しだした。
「何これ。」
「こんなのでオレらがビビると思ったの?」
「こんなおもちゃで!」
「バカみてえじゃん!!」
・・・バカはどっちだよ。
節穴どもが騒ぎ立てている教室に先生が入ってきた。
「おお、やってるねえ。」
とかふざけたこと言いながらガキ大将のもとへ行くと、
「あ、先生。今日コイツめちゃくちゃ投げてるのに笑ってるんすよ。」
「しかもこんなおもちゃ持ってて。」
そういって先生は小瓶を受け取ると、鼻で笑ってこう言った。
「随分リアルなおもちゃだなぁ。でも学校におもちゃをもってきちゃいけないねえ、お仕置きしようか。」
それを聞いて周りのクソどもは歓喜の叫びをあげていた。
クソ教師は瓶を水飲み場の横に置くと、僕を掴んで勢いよく細長いシンクに叩きつけた。
その時シンクの淵が鳩尾に当たって、さすがにこれは痛かった。
クソは蛇口を4,5回捻って水を噴出させ、その激流の中に僕の顔を突っ込んだ。
いつも通り息ができなくなった。
でもいつも以上に元気だったから息も長く止められた。
目も開けることができた。
後ろから雑巾とか紙ごみを投げられているけど、別に気にしなかった。
だって小瓶がシンクに映ってるのが見えたんだもん。
ここの掃除は毎日ぼくがしていた。
綺麗になるまで磨かないと帰らせてもらえなかったから、いつも本当に綺麗だった。
たまに僕が帰った後に、先生がわざとらしく汚して、次の朝「なんだこれは」と殴られることもあったけど、そのシチュエーションも飽きたみたいだ。
おかげで今、朝のシンクは輝いている。
こんなところで役に立つなんて思いもしなかった。
でももう少し待つことにしたんだ。
この責め苦が終わったら、今までの分を返してあげるのさ。
もちろん好意からだよ。
時々水から顔を出してくれたかと思うと、今度はシンクの底に顔を叩きつけるんだ。
バカなやつら。
こうすればするほど後でもっと痛い目見るのに。
そうしてまた顔を激流に突っ込まれる。
5分くらいで一連の行為が終わると、先生はぼくの髪を掴んで持ち上げた。
汚い顔をぼくに近づけて、聞き飽きたセリフを吐いた。
「ケンタくぅん、反省しましたかぁあ?」
周りのクソどもがげらげら笑っている。
シンクにもまだ小瓶も、中身も映っている。
だからそれをじっと見つめてた。
「おい。」
じっと。
「こっち向け。」
ただじっと。
「こっち向けぇッ!!」
見つめていた。
「おいこっち見ろつってんだろ!!」
教師が手を振り上げた瞬間、シンクから赤黒い筋肉に覆われた目玉が飛び出してきた。
クソどもは、教師も何が起きたかわからない様子だった。
僕だけが全部知っていた。
「この教室を包んで!!!」
僕が叫ぶと目玉の周りの肉が膨らんで、あっという間に教室の全部の出入り口を塞いだんだ。
床も覆ってくれて、なんなら僕以外の全員の足も肉に埋めてくれた。
みんな、怖がってた。
腰を抜かしちゃう女子、恐怖で漏らす男子、喚き倒すガキ大将とその子分。
なによりも先生。
「おい・・・なんだよこれ、ケンタぁ!! どういうことだこれ!!」
ずーっとぼくに向かってなんか言ってるんだ。
ぼくは先生の近くにいたから、殴られそうになったんだけど肉がその腕を止めてくれた。
ついでに周りの子供たちも四肢が拘束されて、ついに宙に浮かんだんだ。
「おいやめろ!」
「助けて! たすけて!!」
「やめて、ママぁあ!!」
とかいろいろほざいてたから、とりあえず肉に命令して口も覆わせた。
静かになったから、ぼくはのびのびとスピーチができたんだ。
「なんでこんな目に合ってるの? なんでぼくらがこんな目に合わなきゃいけないの? そう思ってるでしょ?」
ぼくはガキ大将の子分の一人、小柄な方に近づきながらそう言った。
「ね、お前もそう思うでしょ?」
何も言わない。
「ほら、何か言えよ。」
何も言わない。
ぼくは肉に向かって命令した。
「殺せ。」
腕を拘束する肉が胸まで覆って、小柄な身体は上下に引っ張られた。
目に涙を溜めて、腹からは色々溢しながら、クソの一人が真っ二つになった。
それを見てみんな叫んでいた。
「ぼくもそう思ってたよ。なんでこんな目に合わないといけないの。家でも学校でも。俺は叩かれ、蹴られ、殴られ、首を絞められ、痛めつけられた。でもお前らは、すごく楽しそうだった。・・・ああ、ぼくのおばさんはそうでもなかったみたいだけどね。」
次は学級長の女子の方に向かった。女子をまとめる女子、いわゆる一軍だ。またの名をクソビッチっていうらしい。
そいつもぼくを蹴って楽しんでいたが、
「今ぼくはみんなをこうやっていじめてみて、やっと君たちのクソみてえな心がわかったよ。すっごく、楽しい。」
肉に命令した。
「こいつの顔を剥げ。」
床から新しい肉が伸びて、女の顔に纏わりついた。
変な音が鳴ったと思うと、肉は顔から離れていて、学級長の顔は真っ赤な筋に置き換わっていた。
思わず声を上げて笑ってしまった。
「みんなそれぞれ、自分の楽しいように僕をいじめた。誰も責める人はいなかった。先生でさえ。」
先生の前に立った。
何を思ってるかは知らないけれど、その思う感情のせいで顔は真っ赤になっていた。
「先生。先生って、困ってる生徒を助けるものですよね? 生徒がいじめられてたら、救ってくれるものですよね?」
先生の眼鏡にぼくが映った。
タローが先生の前に現れる。
「でも先生は僕を助けてくれなかった。なんならみんなと一緒に僕をいじめた。教師と生徒が共通の楽しみを持っている。最高のクラスですね。本当に。タロー。」
タローが中年の身体に拳を突っ込んだ。
その個所が赤くにじんでいる。
「苦しかったのに、つらかったのに、先生は助けてくれなかった。誰も僕を助けてくれなかった。みんな僕を痛めつけた! だから、その分みんなにお返しします。」
先生の拘束を解いた。
直後、タローがおばさんにしたように先生を拘束した。
足を折られて悶絶している。
「お前には特に返してやるよ。」
「ふざけるな!!」
と叫ぼうとしていたので、タローが先生の喉を潰してくれた。
「みんな見てなよ。みんなには先生にされること以上のことはしないから、安心してて。」
とみんなに一息つかせてから、命令した。
「こいつの皮全部剥げ。」
タローが空いた右腕で教師の服を下着まで破り捨てると、脂ぎった右肩を掴んで勢いよく引っ張った。
赤い線が何本も重なった層がお目見えすると、先生は潰された喉をこじ開けて叫んだ。
多分叫ぶための息を吐いたが正しいんだろうけど、とにかく相当痛がってくれて、ぼくは嬉しいよ。
どこか「許してくれ」って言ってる気がするが、許すわけない。
なのに許しを請う。
バカなのだろうか。
肉塊の力も相まって、案外早く剥き終わってしまった。
真っ赤な身体が床に放り出される。
試しに蹴ってみると、もだえ苦しんで寝ころんだまま暴れだした。
そうしてまたむき出しの筋肉に物が触れて痛み、また暴れて、を繰り返している。
教師とは思えないバカさ加減だ。
いい加減その様子にも飽きたので、今度は僕が首を踏んで殺した。
とっっっっっっっっっっっっっても!! すっきりした!!!!!
まだ何人か残っているが、それはもう肉塊とタローに任せよう。
ガキ大将も正直どうでもいい。
命令して、あとは椅子に座ってその様子眺めていた。
「助けて!」
「許して!」
「ごめんなさい!」
そんな言葉が聞こえたけど、僕にはもう関係ない。
まあ聞いていて気持ち良くないわけではないが、興味を失くしてしまった。
ガキ大将は謝罪の言葉を何回も述べた後、許せよと逆上したのち、胸の肉を削がれて死んだ。
その子分、のっぽの方は顔のパーツを切り落とされて死んだ。
そのほかいろいろ床に散乱しながら、5分ほど経ってようやく全員始末した。
タローがまた小瓶にみんなの破片を小分けにして詰めている。
僕はそれをカバンの中に入れた後、一人の男の子が来ていた黒いパーカーをもらって、それを着た。
内側にもポケットがあって便利だし、何より前々からかっこいいなと思っていた代物だったからだ。
肉塊はいったん消滅した。
いい働きをしてくれたよ。
おばさんの目玉も懐に入れて、血まみれの教室を後にした。
別に行く当てはないけど、とりあえずお風呂入りに行こう、そう思ったんだ。
「手足の長い方が目標に蹴られ消滅しました。」
ジー・ジーが報告した。
「他の使役体は。」
インビジブルがマイクに向けて言った。
「います。ただ浮遊体は目標に僕の射線を通さないような位置に居て、人影は変わらず目標の傍に。」
「了解。第1小隊はまだか。」
「到達まであと32秒です。」
ヴォイドが告げる。
無線を介してインビジブルが言った。
「第1小隊に通達、目標付近に2体の使役体がいます。本体が攻撃せずともその2体が攻撃してくるかもしれません。警戒してください。」
「「了解。」」
第1小隊が応答した。
まもなく接敵する。
直接戦う相手が、ひとまずは使役体でヒナタは安心していた。
もちろん命を懸けて戦うことに変わりはなく、その覚悟は揺るぎないものだが、まだ直接手を下さなくていいことが判るとどうしてもほっとしてしまう。
「ヒナタ。」
カイトが呟いた。
「まだわからないよ。」
・・・カイトには敵わないようだ。
「判ってるよ。」
ヒナタは口角を上げてまた真剣な表情に戻った。
(わかるもんか・・・!)
心の中で思う。
それでもやらねばならない。
自分をだましたつもりはない、自分で認めた選択だ。
でも、彼は納得しきれていなかった。
接敵まで残り10秒。
後悔する暇は与えられていなかった。
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