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怪しいオニイサン

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ザーザーと雨が土砂降りの中、私は路地裏で座り込んでいた。雨しのぎではなく普通に家として住んでいるのだ。

「あーもう…!最悪すぎる!」

私は雨が零れ落ちている頭をぶんぶんと振って立ち上がった。どこか雨が当たらない場所を探すために歩き出した。

「お嬢さん…どうか、お恵みを…」

「…ごめんなさい。私、何も持っていないの」

私は老人から目を離して再び歩き出した。…この路地裏ではよくある光景。誰かから物を貰って生き延びる。そうしなきゃ生きていけないから

「諦めた方が、はやいのかな…?」

一度奪われた体温は戻らなくてどんどんと奪われていく一方だった。もう寒すぎて体が震えなくなっちゃったよ。
私は乾いた笑みを浮かべて歩いていた足を止めてその辺の壁により掛かって空を見上げた。

「…まぁ、心残りはないし…」

別にいっか、と言おうとするといつの間にか目の前に番傘を差した銀髪の男が立っていた。

「…では、死んでもいいと?」

「んー…まぁそうなるね。生きててもいいことはないし悲しむ人もいないし…」

そう言うと男は急に笑った。

「ふっ…ふふっ…」

「……なによ」

「ふふっ…すまない。つい先日も似たような言葉を聞いた覚えがあってね」

男は番傘をもう一つ取り出して私に差し出した。…どこから取り出したかは聞かないことにして遠慮なく受け取った。

「ついてきてごらん」

「……変なところじゃないわよね…」

「んー…人によっては変なところかもしれないね」

よくわからないが私は男の後ろを歩いた。すると、歩いて数分後には路地裏から抜けた。
そして目の前には大きな鳥居と神社が。

「滑らないように気をつけて」

「そんな幼稚じゃないわよ」

「おっと、それは申し訳ない」

そして男はまたもやクスクスと笑い始めた。少し苛立ってきたがここがどこかわからないので帰りたくても迷って帰ることはできないだろう。

「さぁ、もう着くよ」

男がそういって数個並んだ最後の鳥居を抜けると先程まで降っていた雨は降ってはいなくて変わりに綺麗な青空が広がっていた。

「……え?」

「おや、あまり驚かないね」

「…かなり、驚いてるわよ…」

青空を眺めていると、男は番傘をたたみ地面に置いて両手を叩いた。

「お待たせ致しました。」

「大丈夫、ありがとう」

男が両手を叩いた途端とたん、獣耳がはえている男の人がタオルを持って現れた。

「あぁ、そういえば事故紹介がまだだったね。
私のことはぎんとでも呼んでくれ」

「私は伊織いおり。銀ね、よろしく」

「ほう、苗字は?」

加奈陀かなたよ。不思議な苗字でしょう?これでも気に入ってるの。馬鹿にしないでね」

私は彼の目を見詰めていると、誰かに肩を叩かれた。振り向くと先程の獣耳の男が立っていた。

「お話の途中に申し訳御座いません…。
風邪を引かれてはいけないのでタオルをどうぞ」

「ご丁寧にどうもありがとう」

わたくしのことはお好きに呼んでください」

そう言うと彼は銀にもタオルを渡して神社の中に入っていった。…不思議な人。

「私は彼のことを普通に九尾きゅうびと呼んでいてね、君もそう呼んでみるといい」

「"九尾"?」

「そう。彼は九尾の狐のあやかし。昔から九尾と呼ばれてたみたいだからそう呼んでいるんだ」

「あや、かし…?」

「そうか、まずそこからだったね。ご飯でも食べながら話そうか」

そう言うと銀は神社の中に入っていったので私も彼の後を追って神社の中に入った。
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