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【Memory_2】
14.さがしびと
しおりを挟む「さぶっ…リリィ、今日は外に出ない方がいいかも」
「じゃあ今日はもっと暖かくして寝ないとお腹壊しちゃうね」
「そうだな」
最近特に日を増して寒くなっているのだが、もはや寒い次元では無い。
防寒具を何枚重ねても手は赤切れするし外に出ればあっと言う間に足は氷の様にカチカチだ。
レイトが家を出て1週間。
リリィと他愛ない会話を交わしているとこの猛吹雪の中、割と強めの音で家をノックされた。
また別の関係者かもしれない。不審者だと怖いので彼女を奥にやって俺が出る。
恐る恐るゆっくり扉を開けると、そこには軽装備で立っている人がいた。
「すみません、レイト知りませんか?」
形容するなら雪のように真っ白な女の人だった。
レイトの事を知っているとすれば、旅仲間か何かだろうか。
フードを取ってこちらに質問を投げかけてきた彼女。
長い藍色の髪に切れ長の目が特に特徴的だった。現代風に言うと…ギャルに近しいものかもしれない。
こんな寒いのに明らかに服2、3枚しか着ていなさそうだし。
凄い偏見だけれども、どうしても薄着のイメージがある。
「レイト?レイトならこの間来たけど…」
「今はどこに?」
「うちにはもう居ませんよ」
「行き先は?どこか聞いてますか?」
「いや、何も聞いてませんが…」
「僅かな手掛かりでもなんでもいいんです!何か聞いてませんか?」
相当心配している様子で、あまりの迫力に気圧されてしまう。
話への食い付き方が凄く、こちらがしどろもどろになるくらいだ。
誰かと旅をしているのなら早く言ってくれれば何泊でも泊めたんだが…。
レイト自身、事情を他人に簡単に言う性格ではなさそうだし何より彼女がこんな薄着でこの国を歩いてるのが凄く可哀想だ。
「この国を出るとは言ってたけど…」
「なん…で…」
「え?」
「なんでよぉ!!追いつけたと思ったのに!」
大声を出した彼女の声は震えていた。
さっきとは打って変わった態度に驚いたが、どう声をかけていいのかわからない。
「あの……」
とりあえず外は寒いかと思い彼女に声をかけると、右頬を鋭利な物が掠めた。
咄嗟のことに反応が取れず、相手を凝視してその場で硬直してしまう。
掠められた頬は一瞬ひんやりとしたが、今は血が流れているのか熱い。
紙で指を切った時の後から来る痛みにとても似ている。
血が頬を伝う度にジンと暖かさが滲むが、この外の寒さでは血など一瞬で凍ってしまう。
服の袖口で頬の血を優しく拭いながら相手から目は離さない。
「やっと…、やっと見つけたと思ったのに!!」
「待て、なんの話だ!」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!レイトと私の邪魔ばっかりみんなでして!酷いよ!」
子供の癇癪を起こしたみたいに人の話を聞かない。
聞かないと言うよりか、眼中にないと言った方が正しいのだろうか。
先程の頬を掠めたのもきっと彼女から発せられた何かのせいだ。
考えろ、どうしたら危害を加えて来ない?
こちらは生憎手持ちは何の武器もない。
斧どころか木の棒ですら手の届く範囲には置いていない。
そもそも人の家の玄関口でする行い自体ではないが、そんなのも気に留めていないのだろう。
彼女の目的もそこへ至るまでの着地点がわからなければ対話さえ不可能な状態だ。
どうする?どうすればいい?魔法も何も使えない俺は、どうすれば…____。
「ミコト?…どちらさ…ま?」
声が聞こえた瞬間、時間が止まった感覚に陥った。
顔に巡っている血が一気に引いていく感覚が俺自身で分かる。
血の気が引いた。呼吸を忘れてしまいそうだった。
「____来るな、リリィ!!!!!!!」
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