あの日見た空を忘れない

３０

あの大きなモノが今度こそゆっくりと、確実に俺を貫いていく。

「あぁぁぁ…っく…ぅ……」

中心から裂けてしまうんじゃないかという恐怖心と、少しずつ内臓を押し上げられる感覚にまた歯を食いしばりそうになり、頭を振りながら必死に『フーッフーッ』と大きく息を吐いた。
腰に巻き付けていた俺の脚を掴んだ亮治は、そんな俺の様子を見ながらも止まる事なく腰を押し進めてくる。

どれだけ大きいんだ。
どれだけ長いんだ。

瞼の裏がチカチカと光り、そのままフッと感覚が消えてしまいそうな錯覚に陥る。
痛みと苦しさに途切れそうな意識を無理矢理引き戻すのも、やはり痛みと苦しさだった。

「もうちょっとじゃけね。ちゃんと入ったら、ちぃと休憩するけ…もうちょっとだけ頑張って」

ジリジリと切っ先をめり込ませながら、まだ中に収まり切らない部分に更にローションをぶちまける。もう一本分を使いきってしまったのか、亮治は軽そうなボトルをポンと後ろに放り投げた。

「も、もうええけ……さっさと来い！」

じわじわといつ終わるともわからない苦痛がこれ以上続く事に耐えられない。
それならばいっそ、一気に貫いて欲しい。

もはや気を紛らせる事にもなりはしないのに、俺は自分の中心を惰性のまま擦りながら叫んでいた。
亮治は一度『チッ』と舌打ちをすると、俺の脚をしっかりと掴み直す。

「せっかく我慢しよったのに……」

苦々しげに吐き出すと、鋭くなった視線が俺をしっかりと捉えた。飢えを隠さないその瞳の力に、一瞬瞬きすら忘れる。
普段は鳴りを潜めるこの獰猛さこそが亮治の本質なのだ──視線に射竦められると、萎えたままの俺の中心が何故かドクドクと大きく脈打った。

俺の中のモノが、微かに後退りする。
『え？』と思った瞬間、一気に奥まで突き抜ける衝撃。
雷に打たれたように仰け反り、体が勝手にビクビクと痙攣を起こす。

俺は目を見開いたまま、ただひたすらハクハクと頼りなく息をする事しかできなくなっていた。

「入ったよ…お待たせ」

ゆっくりと体を倒し、亮治は小さな震えの止まらないままの俺の体をしっかりと抱き締める。

「しばらくこのままでおるけ安心して。んで、少し落ち着いてきたら…教えてほしい」

その声に答えられるとは思っていないらしい。汗で張り付いた俺の前髪を丁寧に払い、額に優しく口付けてくる。

喉の奥からはヒュッと変な音が鳴った。
痛みどころではない衝撃に、どうやら呼吸の仕方すら忘れてしまったらしい。息を吸いたいのに、なんだか上手く酸素が入ってこない。

それに気付いたらしい亮治が俺の頬を両手で優しく包み、コツンと額を合わせた。

「まだしばらく動かんよ、大丈夫じゃけ。無理して息吸おうとせんでええし、無理矢理吐かんでもええ。俺のチンチンが、今たかちゃんの中におるって事だけ考えて…ね？　たかちゃんが頑張ってくれたけ、こうやって俺のん全部入れられたんよ？　ほんまにありがとね…たかちゃんがあんな風に煽ってくれんかったら、俺まだどのタイミングで動き出したらええんかわからんかったかもしれん」

さっきのあの突き刺すような視線のヌシだと言うのが嘘のように優しく穏やかな声。
その声の通り、優しく啄むだけのキスを繰り返され、ゆっくりと呼吸が元の速度に戻っていく。

「亮治、入れてみて…どう？　ちぃとは気持ちええ？」
「ちぃとどころか、えっと気持ちええよ。熱いし、ギュウギュウ締め付けてくるし。何よりね、たかちゃんに包まれとるってだけで最高に幸せ」
「ほうか…俺は、ごめん…まだ全然気持ちええ事ない」
「……じゃろうね、わかっとるよ。ごめんね」
「ほいでも、奥まで来るって瞬間のお前の顔見よったら、チンチンがなんかちょっと反応したし」
「え？　そうなん？」
「うん、男前過ぎて痺れたわ。何より今、俺の体がお前を包んどると思うたら…ぶち幸せじゃ。気持ちええことはないけどな」

俺からもキスを返した途端、俺の中のモノがググッと更に体積を増した。慌てて唇を離し、亮治の額を力の入らないままの手でペチッと叩く。

「お、お前…何を大きいしよんな！」
「あー、これは不可抗力。可愛い事言うて俺を更に煽ったたかちゃんが悪い。こればっかりは俺の意思ではどうにもできんけ、まあ我慢して」

煽られた、お前が悪い──なんて言いながら、亮治は本当に体を動かさないように必死で堪えてくれている。
俺は覆い被さる広い背中にそっと手を回し、その時が訪れるのを、ただ息を整えながら待った。