巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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閑話6腹黒令嬢

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真夜中、王宮にて。


罪人が拘束れれる牢の中でも最も重い罪を犯した者が幽閉される地下牢。

そこは空気も悪ければ、外が見えることがない。
太陽の光も差し込むことはない。



「随分と変わり果てましたわね」

「誰よ!」

「本当に醜い事」


薄暗い場所の中、ランプを片手に現れたのアンリエットだった。


「アンタ!」

「自業自得ですわね」


優雅に微笑む表情は変わらずで苛立つナターシャだったが牢屋からでは何もできなかった。


「何でアンタが…」

「アンリエット様、あまり近づいてはなりませんわ」

危険だと止めに入るセラヴィだったが、アンリエットは余裕の微笑みを浮かべた。



「この女に何もできませんわ。できたとしてもこの女如きに遅れは取りません」


何処までも余裕そうな表情がさらにナターシャをイラつかせる。


「悪役令嬢でもない癖に!この私を…」

「本当に何を言っているのかしら?悪役令嬢だの、ヒロインだの…以前から頭がおかしいと思ってましたが」

「私はヒロインよ!あの女がちゃんと悪役令嬢として振舞わないから…本当は私が愛されて幸せになるはずだったのに!」

「貴女は思い違いをしていますわ」

「なんですって?」


アンリエットは以前からおかしな言動が目立つと思っていたが。


「無条件で愛される人間がいる者ですか…愛される努力もしないで」

「私はヒロインよ!」

「もうそのくだりは結構よ?悪役令嬢だのヒロインなど存じませんが…この私は悪役令嬢のように小さい存在と一緒にしないでくださる?愚民が」


「アンリエット様、女王様のようですわ」

「褒め言葉として受け取りますわ」


セラヴィの言葉をあえて褒め言葉と受けりながら、アンリエットは笑った。
その笑顔は悪役令嬢等と可愛い物ではなく悪女のような笑みだった。


「この私はこれから女侯爵として国を背負っていきますわ。今回の事で男が無能だと証明してくださった…感謝しますわ」


「女侯爵…」

「不愉快でありましたが。貴女のおかげで邪魔な貴族も一緒に方片付けられました。ですが、最後の尋問が待っていますのでお忘れなく」

「は?」

「貴女は我が国の裏事情まで知り過ぎていますわ。どこのスパイなのかしら…」

「何言って…」

「覚悟なさいませ。拷問は優しくありませんわ。しかも他国のスパイであるなら女性だろうと容赦しません」


「何言っているの私は!」


ナターシャはスパイなんて知らなかった。
ゲームでプレイした知識にすぎなかったが好き勝手やり過ぎたのだ。


「では最後にごきげんよう」

「待って…」

ナターシャは叫ぶも背を向けるアンリエットとセラヴィは振り返る事はなかった。


「そんな…私は違う!そんなの…」


頭を抱えブツブツ独り言をボヤくナターシャは現実逃避をしたのだった。


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