巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

文字の大きさ
上 下
63 / 79

53ある男の末路~ハルバードside

しおりを挟む


狭い道をみすぼらしい馬車が通る。
この道を通った後に馬車を乗り換える事になっている。

その一瞬の隙を狙えば。


「そうだ。すべてをあの女の所為だ」


俺がこんな惨めな思いをして、こんな汚い服を着ているのも。
人前に出ることもできなくなり、何もかも奪われたのはすべてあの悪女の所為だ!


全て悪いのはあの女なんだ。


「そうだ。あの悪魔さえ消えればすべて元通りだ」


馬車が止まり俺は人込みの中に紛れ込んだ。


「通せ、ここから先はダメだ」

「人が多すぎるな」

「見世物状態だな」


無能な騎士達に、悪魔を見たいと言う馬鹿な群衆共。

だが感謝するがいい。
これから悪魔を滅する瞬間を見せてやるのだから。


そして俺は悪魔を滅した勇者だ!



「さぁ出ろ」

「待ってください先輩…」


俺は一瞬の隙をついて短剣を取り出した。


「邪魔だどけ!」

「え?」

「きゃああ!」


真っすぐにナターシャの元に走り短剣を向ける。


「何だお前は!」

「くっ!」


衛兵とは言え、懐にある薬草を顔にぶつける。


「馬鹿め!」

「うわぁ!目が…」

「何だ!」


傷薬に使う薬草であるが、目に入れると毒だった。
ここに来る前に薬屋で盗んでおいて正解だったな。


「死ね!ナターシャ」

「えっ…きゃあああ!」


俺は真っすぐにあの女の胸を短刀で刺し殺そうとした。


「あっ…がぁ…どうして」

「どうしてだと?」

「ハルバート…」


俺からすべてを奪い魔力で俺を誘惑してなんていう性悪だ。


「貴様さえ死ねばすべて元通りだ!」

「アンタ…」

「お前さえ!」


この悪魔さえ死ぬば俺は!


かつての栄光を取り戻せるんだ。


俺は光の下で生きるに相応しいんだ。
日陰でいきる人間じゃない。


「何をしている貴様!」

「こいつです!」


俺が英雄になるのを見に来たのか。

「ハルバード。貴様を殺時未遂容疑で逮捕する!」

「なっ…」

俺が殺人未遂容疑だと?


「ナターシャは出血はしているが、生きているな」

「幸いだったな」


死んでないだと?

「ふざけるな!魔女を…悪魔を殺さなくては俺は英雄にならないだろう!」

「何を言っているんだ」

「気にするな。狂っているんだ」


何故だ。


どうして俺をそんな目で見るんだ!


俺は悪魔を排除しようとしただけなのに!


待っていたのは罪人というレッテルと、死ぬよりも惨い生き地獄が待っているのだった。





しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました

ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

【完結保証】ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...