巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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閑話4.チェイス侯爵家の末路

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多くの物を失ったチェイス侯爵家は先代から仕えてくれていた優秀な使用人は既にいなく、残ったのは忠誠心もない使用人だけだった。

その使用人も数日間の内に姿を消し、残り少ない財産を持ち逃げされてしまったチェイス侯爵家に残ったのは寂れた邸と、多額の借用書だけだった。


「私の宝石に指輪、ドレスまで!」

「なんて事だ!私の金が!」

隠していた財産を愛人である侍女に根こそぎ盗まれてしまった。


「これでは…どうやって生きて行けばいいんだ」

「なんて事ですの」


借金地獄の上に無一文となった今、持っているのは馬ぐらいだった。



しかし――。


「チェイス侯爵、約束の期日で。借金を返してください」

「この状況で返せるわけが…」

「そんな言い分聞き入れると?では、延滞する代わりに貴方の馬をいただきますぞ」

唯一残っているのは馬ぐらいだった。


「待て…馬までなんて」

「誓約書には万一支払いができない場合は馬を頂くとサインしていますね」

「それは…」

随分前に誓約書に万一支払えなかったときは馬を売るように言っていた。
書類にもしっかりサインをしているのだ。


だが当初は馬ぐらい買えばいいと思っていたし、ここまで困窮するとは思ってなかった。


「嫌ならば法的手段に出ても良いのですよ」

「それだけは…待ってくれ!」


待った無しで馬の権利を奪われ、商人は去って行く。


「それから侯爵夫人」

「何よ」

「貴女の作った借金ですが、ご実家に肩代わりしてもらえませんでしたの支払ってください」

「は?」

チェイス侯爵夫人は実家を頼り借金の返済を願い出たが、実家は裕福ではなかったので支払うことはできなかった。

実家に住まう兄夫婦も肩代わりする気はないとの返答が書かれている手紙を差し出される。


「そんな…何で」

手紙では離縁と同時に感動すると書かれていた。


「フッ、馬鹿め」

「何ですって!」


絶望する妻を罵倒するも、しっかり聞こえていたのか再び互いに罵り合いが始まる。


その一部始終を見ていた商人は冷めた目で見ていた。






「愚かな事だな」


所変わってユーモレスク領地にて。


「あの家が潰れるのは時間の問題でしょう」

「ご苦労。チェイス夫人の実家には下手に庇わないように圧力をかけ続けろ」

「かしこまりました」


使用人に命じるミケルはあらかじめ先手を打っていた。
万一にでもチェイス侯爵夫人が実家に頼ることがない様に手を打っていた。


「ミケル!」

「何ですか兄上」


そんな中般若のような表情をするレイナードが現れた。


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