58 / 79
50.廊下での騒ぎ
しおりを挟む「マカロフ卿こっちは終わったわよ。お蔭さまで私のMPは残り僅かね」
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
126
お気に入りに追加
6,503
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚しましたが、愛されていません
うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。
彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。
為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました
ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
伏して君に愛を冀(こいねが)う
鳩子
恋愛
貧乏皇帝×黄金姫の、すれ違いラブストーリー。
堋《ほう》国王女・燕琇華(えん・しゅうか)は、隣国、游《ゆう》帝国の皇帝から熱烈な求愛を受けて皇后として入宮する。
しかし、皇帝には既に想い人との間に、皇子まで居るという。
「皇帝陛下は、黄金の為に、意に沿わぬ結婚をすることになったのよ」
女官達の言葉で、真実を知る琇華。
祖国から遠く離れた後宮に取り残された琇華の恋の行方は?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる