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44.転生者
しおりを挟む転移魔法を使う程の魔力を持っていたなんて。
「監視の目と魔力を制御されて、ほとんど使えなかったわ」
「どうして…」
「決まっているでしょ?貴女、転生者でしょ?」
「え?」
ナターシャ様は私を睨みつけながら告げた。
「その顔、当たりね。おかしいと思ったのよ」
「貴女も?」
「当然でしょ?この世界は私の世界なんだから…今すぐ返してよ!」
魔力は制限されているはずなのに、まだ魔力が使えるの?
いや、違う。
「ナターシャ様、無理に魔力を使ったら…」
「煩いわよ!この悪女が!」
「きゃあ!」
頬を掠める雷撃。
彼女は完全に怒りで冷静さを無くしている。
手首に嵌められている手錠に皹が入る程魔力が暴走している。
「悪役令嬢を始末して、私は幸せになるはずだったのに」
「貴女はハルバード様と…」
「あんなの暇つぶしよ。まぁ騎士代わりにはちょうど良かったわ。他の攻略対象もある程度遊ばせてもらったけど」
「彼等の婚約者はどんな思いをしたか解っているの!」
物語通り以上にやりたい放題をして、婚約者に酷い仕打ちを受けた彼女達。
シアンも同じだわ。
なのに彼女は自分がしたことに申し訳なさも罪悪感もないの?
「彼女達に申し訳ないと思わなかったんですか…社交界で婚約破棄をされた令嬢がどんな目に合うか」
「だから?」
「だからって…」
「だって私が幸せになる為なのよ?踏み台になった奴なんてどうでもいいわ」
そんな…。
自分が幸せになれれば他の人がどんな目に合ってもいいなんて。
「私がヒロインよ。ヒロインが幸せになる為にすべてあるのよ!」
「そんなのおかしいわ。私達は…」
「煩いわよ!」
バァン!
強い風で叩きつけられる。
「フン、立ち上がれないの?まぁ所詮傷物だものね?」
風で私の服を切り裂く。
「何を…」
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「貴女にだけは言われたくないわ」
今まで散々他人の大事な物を奪っておきながら、何を。
「私の王子様を奪うなんて許さないわ」
「貴女のって…貴女が好きなのはアレンディス殿下じゃ」
「まぁ好みだけど。一番の本命はウィル様なの。私に一番ふさわしいし、価値がある」
「何様なの…」
彼等は貴女の欲望を満たす道具じゃないのよ。
「私達を何だと思っているのよ!」
「私が幸せになる為の踏み台よ」
既に話は通じなかった。
狂っているとさえ思った私は言葉が通じないと悟った。
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