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41.味方
しおりを挟む学校には通わずに卒業試験を受けることで片付き、私達の婚約は内々に取り決められた。
「ジゼル!」
「アンリエット様」
シアンと一緒にお見舞いに来てくださった同じ派閥の侯爵令嬢。
アンリエット・サンチェスト様だった。
「この度は…」
「まだ本調子ではありませんのよ。お楽になさって」
「申し訳ありません」
誇り高く、気品に満ち溢れた侯爵令嬢。
学園内でも中立を貫いていらしたアンリエット様だけど、婚約者が堂々と浮気をされていたのに顔にされなかった方だ。
「あの…」
「それから貴女には伝えたいこともありますのよ」
「そうよシアン。素敵な報告があるのよ」
シアンの嬉しそうな表情を見て首をかしげる。
「私、ジギルド様と婚約解消することになりましたの」
「え…」
ジギルド様のご実家は公爵家だったはず。
サンチェスト侯爵家には跡継ぎがいないからこそ、婿養子にと望まれていたはずなのに。
「父がこの度の事を考え直してくださいましたの」
「それは…」
「不誠実で無能な男を当主に迎えるの事はナンセンスだというアピールにもなりましたわ」
もしや、婚約者が他の女性に行くのを見越して誘導したんじゃ。
「男尊女卑など今時時代遅れです。その所為でこの度の不祥事が起きたと言っても過言ではありませんもの」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
不敵に微笑むアンリエット様の方がずっと悪役令嬢らしいのだけど。
「シュバリエ公爵家はこれで終わりですわ。この流れを利用して宮廷貴族、貴族派の連中の勢力を削るのです」
「これまで辺境地の貴族を随分と舐めていましたからね」
シアンの笑顔が輝かしいわ。
そう言えばシアンの婚約解消をしたと言っていたけど。
「我がファミリア家は元より実力主義。派閥争いを避けていただけにすぎませんわ」
「そうだったの…」
「ジゼル、貴女を守れなかったことを深くお詫びいたします。ですが、できる限りの事をいたしますわ」
「そんな…」
伯爵令嬢でしかない私が!
「残念な事に貴女の体の傷は私では治療は出来ませんが、貴女の名誉は守ります。そして隣国に嫁いだ後も軽んじられる事がない様に私達が後ろ盾になりますから」
「アンリエット様」
私は本当に多くの人に守られて生きているのね。
これ以上の果報者がいるだろうか。
「ジル…」
「ウィル様」
私を支えながらも微笑まれるウィル様はアンリエット様に手を差し伸べる。
「貴女の思いは確かに受け取りました」
「どうかジゼルをお願いいたします。彼女は私達の戦友です」
「必ずお守りします」
こうして私は優しい友人に祝福されながらその日は楽しい時間を過ごした。
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