巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

文字の大きさ
上 下
37 / 79

29.隣国の事情

しおりを挟む



見た目詐欺師の宰相殿は強制的に連行された後に私達は二人きりでお茶をする事になった。



「我がアクアパレスは男女差別がない稀な国なのですが、少々問題を抱えているのです」

「問題でございますか?」

「はい王族は子ができにくい体質だったり、強い魔力故に短命な方も多いのです」

「えっ…」


魔力を持つ対価がそれは――。

でもゲーム上ではアクアパレスの現国王は精霊の加護を持たない方だった気が。

「国王陛下は精霊の加護を持ってはおられませんのでお体は問題ないのですが、加護を持てない事で心無い事を言う愚か者も多いのです」

「そんな…」

大変優秀な王だとも聞かされている。
他国を侵略したり、他国の戦争に介入せずにいるが、戦争から逃れて来た女子供を手厚く迎える処置もされている。


「トリトンの王が」

「まぁ、ジゼル様は海神の花嫁をご存じですの?」

「はい。私の大好きな物語で」


海神の花嫁とは海の国から始まった物語。
元は神話を用いて作られており、物語が好きな私は好んで読んでいたのだ。


「本当に博学な方です事。我が国でも海神の花嫁を親しまれる方は今では少ないのですよ」

「大好きな物語ですので」


かつて海を統べる海皇が人間を花嫁に迎える物語だった。
内容的には王道的に人間が人身御供として若い娘を海に投げ込んで干ばつを助けてもらおうとしたのだ。

生贄にされた少女は村で酷い仕打ちを受けていた事から村の為に命を差し出せと言われた悲劇のヒロイン。

けれどその少女は心優しく、自ら運命を受け入れるも。
生贄になった後に海皇に優しく迎えられ深海のお城で幸福に暮らす一方で非道な真似をした村人は干ばつからは救われるも流行病で亡くなってしまうという結末だった。

悲劇のヒロインが最後は幸福になるわりと王道的な物語だった。


「海に住まう精霊の加護を持つ故か、魔力を持った者同士は婚姻しても子供ができにくくなってしまったんです。昔はそんなことはなかったのですが」

「何か原因があるのでは」

「私達には解りません。ただ、魔力が強い者同士では時に出産時に命を失う方も少ないのです」


強い魔力を持つ方は重宝されるのに、隣国では深刻な問題を抱えていたなんて知らなかった。


「ですから、他国の方を妃に迎えるの事に反対はないのです。ただ条件としては血筋や家柄よりも外交官として振舞える方が必要になるのです」

女性が政治に介入する事が許されているからこそ男尊女卑があまりない理由が少しわかった。


「ですからどうかお願いいたします。ジゼル様は大変教養が高いと聞いておりますの」

「え?」

「生ける知識の人!賢者の如く聡明を聞いております。どうかお力をお貸しくださいませ」


ここでまたしても過大評価されるのか!


しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました

ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが

夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。 ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。 「婚約破棄上等!」 エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました! 殿下は一体どこに?! ・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。驚くべき姿で。 殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか? 本当に迷惑なんですけど。 ※世界観は非常×2にゆるいです。   文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。  カクヨム様にも投稿しております。 レオナルド目線の回は*を付けました。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

処理中です...