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29.隣国の事情
しおりを挟む見た目詐欺師の宰相殿は強制的に連行された後に私達は二人きりでお茶をする事になった。
「我がアクアパレスは男女差別がない稀な国なのですが、少々問題を抱えているのです」
「問題でございますか?」
「はい王族は子ができにくい体質だったり、強い魔力故に短命な方も多いのです」
「えっ…」
魔力を持つ対価がそれは――。
でもゲーム上ではアクアパレスの現国王は精霊の加護を持たない方だった気が。
「国王陛下は精霊の加護を持ってはおられませんのでお体は問題ないのですが、加護を持てない事で心無い事を言う愚か者も多いのです」
「そんな…」
大変優秀な王だとも聞かされている。
他国を侵略したり、他国の戦争に介入せずにいるが、戦争から逃れて来た女子供を手厚く迎える処置もされている。
「トリトンの王が」
「まぁ、ジゼル様は海神の花嫁をご存じですの?」
「はい。私の大好きな物語で」
海神の花嫁とは海の国から始まった物語。
元は神話を用いて作られており、物語が好きな私は好んで読んでいたのだ。
「本当に博学な方です事。我が国でも海神の花嫁を親しまれる方は今では少ないのですよ」
「大好きな物語ですので」
かつて海を統べる海皇が人間を花嫁に迎える物語だった。
内容的には王道的に人間が人身御供として若い娘を海に投げ込んで干ばつを助けてもらおうとしたのだ。
生贄にされた少女は村で酷い仕打ちを受けていた事から村の為に命を差し出せと言われた悲劇のヒロイン。
けれどその少女は心優しく、自ら運命を受け入れるも。
生贄になった後に海皇に優しく迎えられ深海のお城で幸福に暮らす一方で非道な真似をした村人は干ばつからは救われるも流行病で亡くなってしまうという結末だった。
悲劇のヒロインが最後は幸福になるわりと王道的な物語だった。
「海に住まう精霊の加護を持つ故か、魔力を持った者同士は婚姻しても子供ができにくくなってしまったんです。昔はそんなことはなかったのですが」
「何か原因があるのでは」
「私達には解りません。ただ、魔力が強い者同士では時に出産時に命を失う方も少ないのです」
強い魔力を持つ方は重宝されるのに、隣国では深刻な問題を抱えていたなんて知らなかった。
「ですから、他国の方を妃に迎えるの事に反対はないのです。ただ条件としては血筋や家柄よりも外交官として振舞える方が必要になるのです」
女性が政治に介入する事が許されているからこそ男尊女卑があまりない理由が少しわかった。
「ですからどうかお願いいたします。ジゼル様は大変教養が高いと聞いておりますの」
「え?」
「生ける知識の人!賢者の如く聡明を聞いております。どうかお力をお貸しくださいませ」
ここでまたしても過大評価されるのか!
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