巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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26.過大評価

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静まり返る中、私は固まった。


背後にいるリナリアとティエリーも開いた口が塞がらなかった。



「お嬢様、流石にそれは」

「ジュディ」

差し出がましい事を言ってしまった。
他国の、しかも外交問題に口を出すなんて無礼過ぎる。


「ジル、貴女は異教徒にも精通しているのですか」

「え?」

「なんて事ですの。大臣や宰相ですら思い浮かばなかった問題を!」

「ウィルフレッド様、この案ならば問題ありません!我が国の尊厳を守れます」


咎められると思いきや、採用されてしまった。


「すぐに手紙の用意を」

「かしこまりました」


ティエリーは急いで手紙を取りに向かい、数秒で戻って来た。


「ジル、ありがとうございます。これで父の心労も減ります」

「いえ…そのような」


両手を握られ頭を下げられる。


別に大したことではない。
お父様は晩餐会で、異教徒の人を相手にする事が多く。

彼等の食文化に関することも教えてくださった。

前世でも昔は豚肉を食べる習慣がない土地があったしイスラム教なんて豚肉を食べるのはタブーだった。


「貴女は本当に博学です。これ程の宝を持っていたのに」

「ええ、我が国でならば重宝されますわ。女宰相にもなれますわ」

「大袈裟な」


どうしてもこうも彼等は私を過大評価したがるのか解らない。


「ジル、どうか父の為…いや、我が国の為にご尽力くださいませんか?私は異教徒の食文化にはあまりくわしくありません」

「私もそこまで詳しくありませんが…できることがあればおっしゃってください」

「ありがとうございます!」


強く握られたが少し震えているようだった。

それ程に深刻な問題を抱えているのだと改めて思い知り、少しプレッシャーをかけられてしまったけど。

それ以上にウィルフレッド様のお役に立ちたいという思いが強かった。


「私にできる事は何でも致します」



こんな私に多くの物を与えてくださった優しい貴方の役に立ちたい。

「では、晩餐会の事を今から話し合いましょう」

「はっ…はい」

手を引かれ、エスコートをされながら私達は晩餐会のメニューを考えるべく意見を言い合う事になった。



そして一週間後、アクアパレス王国から手紙が届いた。


私の案件は正式に採用されて、私が考えたメニューを考案する事になり、当日に晩餐会で調理するシェフや給仕に指南役を仰せつかってしまうのだった。


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