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閑話3.身から出た錆~チェイス侯爵家の場合②
しおりを挟むユーモレスク家の支援を打ち切られた所為でい、チェイス侯爵夫人の立場は一変した。
夜に夜会に出れば。
「そろそろ私達は失礼します」
「ごきげんよう」
これまでは頭をペコペコ下げていた下級貴族はチェイス侯爵夫人と視線が合えば道を開けて挨拶を待っていたのに対して、今では視線が合うとその場を去る繰り返しだった。
「ちょっと…」
「申し訳ありません。私はこれで」
「失礼」
道行く人々は声をかけても、何処か冷たくかかわりたくない態度が見え見えだった。
そんな中、視線の先にでは大勢の女性が一人の女性を囲んでいた。
「あれは…」
楽しそうにおしゃべりをしながら盛り上がる中心の女性はファミリア辺境伯爵夫人だった。
「まぁ、本当ですの?」
「ええ、この通り髪も痛まなくて」
「絹のように美しいですこと。羨ましいですわ」
「本当に」
傍にいるのは辺境地に住まう貴族だけではなく。
以前はチェイス侯爵夫人に頭を下げていた者も少なくなかった。
「この私を差し置いてあんな田舎夫人と!」
扇を握りしめて睨みつけるも。
ドンっ!
「きゃあ!」
背後から誰かにぶつかられて前のめりに倒れこむ。
「お気をつけなさいませ」
「なっ…」
直ぐに睨みつけようとするも目の前にいたのはサンチェスト侯爵夫人だった。
同じ侯爵でも、夫が実力派で将軍でもあるのに対してはチェイス侯爵は領主としての才能も人望もないのだ。
チェイス侯爵夫人の実家は伯爵家であるが、貧しく宮廷貴族でしかない。
立場が違い過ぎるのだ。
「人が通る道の真ん中で立たれては困りますわ」
「無礼ですわね。道を塞がないでくださる?」
「本当に」
傍にいるのは伯爵夫人に上から目線で見られて苛立つも。
「仕方ありませんわ。物事の道理も解らない非常識ですし」
「いけませんわ。そんなことを言ったら今度は私達が殺されますわ」
「そんなことするわけないでしょ!」
あんまりないい様に耐え切れず声を荒げるも、舞踏会で声を上げる行為はマナー違反だった。
「何?」
「大声を出してはしたないわね?」
他の夫人や令嬢も白い目でチェイス侯爵夫人を見ていた。
「場を弁え遊ばせ。貴族夫人としてあるまじき行為ですわよ…例え名ばかりでもね?」
「名ばかりとはどういうことですの」
「そのまま通りですわ。犯罪者の親が何時までこの場に入れるはずがないでしょう」
「はぁ?」
どういう意味か解らず声を荒げて問い詰めるも、既にその場から離れるサンチェスト侯爵夫人は無視をしていた。
後を追いかけようとするが、邸内で騒いだことで邸内の使用人に追い出されてしまい屈辱を味わいながら邸に帰ることになったのだった。
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