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閑話3.身から出た錆~チェイス侯爵家の場合①
しおりを挟む社交界と学園では大事件とされた後にチェイス侯爵家は騎士団ににより事情聴取を受けた後にようやく解放されたと思えば、使用人が一斉に辞表を提出した。
「どういうことだ!」
「どうもこうもありません。行儀見習いとして奉公に来ている令嬢や下級貴族の子息は殺時事件を起こした貴族の邸と縁を切れと言うのは当然です」
「貴様!」
チェイス侯爵は老執事の胸倉を掴むが、長年執事をしていた彼は動揺することはない。
「私もお暇をいただきます」
「何だと!」
「私ももう歳です。若様には早く隠居をしろと急かされておりました。結婚後は老いた使用人は邪魔なだけだと言われまして」
「は?」
先代から仕え常に侯爵家の為に仕えて来た老執事は既に見切りをつけていた。
老執事だけでなく侍女長に料理長やメイド長も引退しても良い程の歳を重ねていたが、先代の恩にチェイス家と繋がりを持つはずだったユーモレスク家の為にも踏ん張っていた。
「私は若奥様を殺そうとした方に仕えたくありません。持参金は私から返金してありますので」
「何を勝手な!」
「せめてもの償いでございます。慰謝料に関しては私が持つ領地を売って支払いましたので」
「待て!あの領地は私が商売に…」
チェイス侯爵は老執事の持つ土地までも勝手に自分の物にして利用したのだが、今度新しく事業をしようとしている土地を既に売却している事に絶句した。
「あの土地は私のものです。今まで私の資金を勝手に使われていた事は多めにみましたが。あの土地は亡き妻から譲りうけたのです。貴方達に荒らされるぐらいなら手放した方がマシだ」
「この恩知らずが!」
「お言葉を返すようですが、私が恩を感じているのは先代です。私の主は貴方ではない」
毅然とした態度の老執事に唖然とする。
今までこんなにも強気だった姿は見た事がない。
「ここを出てどうする気だ!我がチェイス家は侯爵家だぞ!」
「老いぼれでも、家令としての年数はあります。有難い事に働き口もありますが…息子夫婦の元に行きます。他の者達もご心配なく。私が責任を持って再就職の世話をいたしますので」
「待て!」
「それではお世話になりました」
止めようとするも既に出て行く準備をしていたのかトランクを片手にその場を去って行く。
そして数日後、チェイス侯爵家の老執事が辞めた事により若い使用人が芋蔓形式で辞表を出す事になり邸に残った使用人は僅かになってしまうのだった。
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