巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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22.婚約の許可

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皆と卒業式に出ることはできないけど、卒業試験を前もって受けることが叶い助かった。


「ジゼル嬢…いや、ジルと呼んでもいいだろうか」

「はい」

貴族社会では愛称は家族や特に親しい人間以外は呼ばない。
幼い頃はジルと呼ばれていたから少し気恥ずかしさは残っている。


だけど嬉しくもある。

「私の事はウィルと呼んで欲しい」

「はい、ウィル様」


未だに慣れない私にウィル様は合わせてくれている。
その優しさがとても嬉しかった。


「両陛下と辺境貴族から婚約を認める誓約書が届いた」

「皆様は反対なさいませんわ」

辺境貴族の筆頭の方々は恋愛結婚をなさっていたり、政略結婚でも恋愛結婚と間違う程愛妻家で有名だもの。


私がチェイス侯爵家との婚約も良い顔をしなかったのは、無理をしていると察しておられたからだわ。

皆様とお母様は親しかったから、お母様に似た私も可愛がってくださった。


「辺境伯爵様や辺境地に住まう貴族代表の皆様はお嬢様の味方ですから」

「それはすごいな。辺境伯爵と王族は対立関係にあることが多いのに」

「彼等が父とは旧知の仲なので」


今ままで不思議だったのだけど。
生活力がまるでないお父様に優秀で国のトップレベルの皆様とよく友人になったと思うわ。


何より――。


「お父様が王都で、貴族社会でも生きてこられたのは皆様のおかげのような」

「それは…」

ウィル様も苦笑している。
だけど本当にお父様は生活力がないし普通の人ができることができないのよね。


「ジル、君の父君は立派な方だよ」

「尊敬はしているのですが…」

「確かに出世と縁がない生活を送られているが、それは逆を返すと周りの和を大切にしている事だ。ご自身は一歩引いて功労役を買っておられるのではないだろうか」


お父様は一人では生きていけないことを理解されている。
物心つく前から毎日のよう聞かされたわ。


人は一人で生きていけない。
だから手を取り合い支え合って生きて行かなくてはならないと。


今の私は多くの人に支えられて生きている。

お父様の言葉が痛い程身に染みているわ。


「私も周りの人を支えられるように、そして大切にできるようにしたいです」

「できるさ。君は友人を、周りの人を大切にできる人だ。きっと大丈夫だ」


そっと握られた手は優しくも力強く。
私に大丈夫だと言ってくださっているようで安堵できた。



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