巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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19.凍てつく部屋~国王side

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凍り付く王宮内の一室にて。


「この度の所業、どう落とし前をつけるのかこの場でおっしゃってくださらないかしら?」


氷のような瞳と、威圧感を与える氷の女王に臣下は怯えていた。

「王妃陛下…」

「私は当初から大貴族であるユーモレスク家を王家に嫁がせたいと思ってましたのよ?」

「なんですと!」

「何か問題でもありまして?我が国を守護する四大貴族の一角を担う家柄ですわ。本家の当主は現在侯爵の地位を賜っておりますし。我が国の塩、砂糖のほとんどを生産しているのはユーモレスク家ですわ」


今さらだと言わんばかりのチェイス侯爵は馬鹿なのだろうか。
いや、馬鹿だな。


「本当に何も解っていませんのね?我が王家にも従わぬ問題貴族は実力は合ってもやたら滅多に言う事を聞く人間がいませんのよ?ファミリア家、サンチェスト家も同様に…なのに我らに従う理由を考えたことはないのですね」

「王妃よ、そのぐらいに」

「陛下は黙っててください。私が話しているのです」

「うっ…うむ」

こうなっては止められんな。
氷の女王様になっている我が妻は笑っていながら相当怒っている。


「彼等は元は独立した貴族でしたが、とある方が間に立つ事でギリギリ関係を保ってますのよ?彼等を敵に回せば国は沈みます。貴方の息子は国を沈めようとしたのです…もしやクーデターを考えていたのかしら?」

「そんな!」

「でしたら何故、我が国の守りでもあるセオドール殿の愛娘を侮辱したのです。彼女は聖女の娘ですのよ」

「はっ…?」


聖女の娘と言われまだ気づかんのか。

「ジゼル嬢の母君は、開国前よりこの地を守って来た癒しの一族の末裔だ。彼女は我が国の聖女とも呼ばれ辺境地の希望の光だ。その息女を殺そうとしたなど論外だ!」

「そんな…」

「随分と好き勝手してくださったようね?伯爵領を乗っ取りミハイル殿も暗殺する疑いも出てますのよ」



口をパクパクさせまるで金魚のようだな。
この事実を知らなかった等ありえぬし、ミハイルを暗殺する意思はなくとっも追い出そうとしていたのは事実だろう。

「私はそのような…」

「では、嫁ぐはずの彼女に支度金代わりに援助させたのかしら?普通逆ですわね?持参金にしては随分と高額な金額ですわ」

「それは我が侯爵家が困窮しておりまして…ジゼル嬢をお迎えするには」

本当に頭の悪い奴だ。
ならば何故ジゼル嬢のドレス一つも誂えさせていないんだ。

「恋人にはドレスや宝石を贈っても婚約者には花束一つ送らないのですね?もう婚約者ではなかったようですが…貴女の奥方は彼女を傷物だと面白おかし噂を流しているそうですわね」

「え!」

「何て悪趣味なのかしら?本当に…」

そんなこともしていたのか。
本当に何処まで馬鹿なのだろうか。

チェイス侯爵家が多額の借金を背負い、セオドールが肩代わりしたり。
返済の協力に援助をしてくれているのは誰もが知っているだろうし、商人が無利子、無担保でチェイス侯爵家に金を貸しているのは後に嫁ぐジゼルの為だと言うのに。


既に婚約破棄に、ユーモレスク伯爵令嬢暗殺未遂は噂になっている。

もう終わりだな。


その前に。

バキバキ!

「おい!」

「陛下は口を挟まないでください」

「うっ、うむ」


腕力で扇を粉々にする妻に私は何も言えん。
この後拷問が始まるだろうが見ない振りをして大人しくするのが得策だ。

なんせ妻と亡き伯爵夫人は親友だった。

その娘に手をだしたのだから終わりだろう。
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