巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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18.直実な思い

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非常に恥ずかしい。
だって親の前で求婚なんてありえないわ。

なのに嫌な気がしない。

ううん、むしろ。


「ジゼル嬢、私は貴女をずっと見つめて来ました。諦めなくてはならないと思いながらも」

「ウィルフレッド殿下」

「どうかウィルと…」

私の手を握りながら膝を折る。
まるで絵本に出て来る騎士様のようだった。


「貴女が私に好意を持ってくださるのなら、私と婚約してくださいませんか」

「私は魔力が低く…」

「そのような事は取るに足りません。私は魔力が強いので問題ありませんし。我が国は魔力至上主義ではありません」

「はい」

存じております。
アクアパレスは完全な実力主義であるけど、魔力がなくても歴史に名を遺した人は多い。

「私の父は魔力が全くありません。ですが立派な王です」

隣国の国王陛下は素晴らしい采配を振るっておられると聞く。
王妃陛下も優れた方だと。


「私で良いのですか?」

「私は貴女が良いのです」


ここまで熱心にアプローチをされ、ここまで大切にされて頷かない女性がいるだろうか。
しかも憧れの人であるならなおさらだ。


「ジゼル嬢…」

「不束者ですか、よろしくお願いします」

「ありがとうございます!」

「ひゃっ!」


勢いよく抱きしめられ私は悲鳴を上げそうになった。


「必ず貴女をお守りします」

「はっ…はい」


抱きしめられ、気恥ずかしくもある。


なのだけど。


「殿下」

「ご無礼を」

お父様の視線が突き刺さり即座に私を離し謝るも、手だけは握られたままだった。


「婚約期間中は手を出さないでくださいね」

「勿論です」

「ジゼル…遠くに嫁に出すのは心配だ。しかし、ウィルフレッド殿下ならば安心だ」

「お父様…」


微かに瞳に涙が浮かんでいる。


でも、一番酷いのは。


「お嬢ざばぁぁぁ!」

「ジュディー…」

滝のように涙と鼻水を流すジュディーの方がすさまじかった。
傍でリナリアがバスタオルを差し出している。

ティッシュではのでバスタオルってどうなの?


「本当にようございました。ウィルフレッド様」

何故か従者のティエリーまでも号泣し、私達の婚約は許された。


とはいっても、国王陛下の許可もないので正式な物ではないから仮ではあるののだけど。


でも、本当に大丈夫なのか不安が過った。

周りは納得するのか。
政略結婚でもないから周囲の反対はとても強いと思っていたのだけど。



「国王陛下の許可が降りたよ」

「はい?」

三日後、お父様から手紙を差し出される。


内容はウィルフレッド殿下と私の婚約を認め内容と今回の事で勲章を与えたいとの内容が長々と書かれていた。


「これは…」

「王家お膝元の学園を守った事や他の生徒の被害を防いだからだろう。元より君は学園内での生活態度は良かったからね…学園側もできるだけ便宜を図ってくれるそうだ」


ここまでの待遇を受けられるとは思わなかった。

ニコニコ笑うウィルフレッド殿下は何をなさったのか不安になるわね。


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