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15.お父様
しおりを挟む外の状況も解らないまま時間が過ぎていた。
言うまでもウィルフレッド殿下にお世話になるわけにいかないと思った矢先の事だ。
お父様が面会に来られた。
「ジゼル!」
「お父様!」
少しやつれたお父様を見て胸が痛くなった。
「ウィルフレッド殿下から話を聞き、すぐに駆け寄りたかったが…すまない」
「いいえ…」
今や学園に社交界で噂になっているだろう。
私の婚約解消の手続きをする為にも走り回ってくださったに違いないわ。
「私とチェイス家の婚約は」
「あちらから婚約破棄をして来たよ」
「何処までも自分勝手な」
傍にいらしたウィルフレッド殿下から負のオーラ―が!
絶対零度の温度で室内の気温がガクンと下がってしまっているわ。
「チェイス侯爵と夫人は納得していないが、当の本人が口走った。傍で聞いていた人もいるからね」
「そうですか」
「チェイス侯爵家との婚約が破談になっても私は出世に興味がないから気にしなくていい。今でも十分食べて行けるし、伯爵領の民を飢える事もない」
「お父様…」
お母様が亡くなられた当初は、大飢饉が起きて大変だった。
今では資産家でそれなりに裕福である我が家もお母様が亡くなり、その後に使用人が金品を持ち逃げして大変だった。
だけど邸には多くの果物や作物があった。
食べる物を貧しい民に与えたり、国一番の知識を持つお父様は流行病を救うべく私材を投げうって救った。
そのおかげか、当時大飢饉の所為で困窮していた貴族や商人が持ち直した後にお礼として謝礼金や品物を贈ってくれたのだ。
勿論お父様は断ったが、先方も譲らず。
そのお金で辺境地にてサトウキビ畑を作ったり家畜を買って儲けることができた。
しかし収入の半分以上を寄付に回して、病院や孤児院を作る費用にして欲しいと願ったのだけど。
それが逆に我が資産家になるようになったのだ。
現在の官僚を育成する学校の教師となったお父様は学問の神様と崇められるようになった。
お父様に家庭教師を望む人も多いとか。
財産を失ったのは一時で、すぐに持ち直して資産家になった。
資産家になるきっかけになったのはサトウキビ畑や果物園だったかもしれない。
だけどその反対に私の家が持ち直す前に婚約を申し込んだチェイス侯爵は傾き始めたのだ。
最初は震災で領地に大きな被害を受けたのだ。
その後は邸を新しく立て直したのだが火事が起きてしまう等被害が起きていた。
対する私の邸は見た目は質素で貴族の邸にしては…と思う作りだけど煌びやかな外装ではない代わりにかなり頑丈な作りだったので火事でも一部焼ける程度だった。
その所為かチェイス家は援助を申し込んで来た。
支度金代わりに援助をしてくれと。
普通は男性側が花嫁を迎える準備金で逆なのにだ。
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