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12.小さな願い
しおりを挟むその日私は知恵熱で苦しんだ。
意識を取り戻したのは三日後で、その後も熱に苦しんだのだけど。
「お嬢様、ウィルフレッド様のお気持ちにお応えしてはいかがでしょうか」
「ジュディー…」
今の私の状況を見て言うか?
「差し出がましいようですが、お嬢様はウィルフレッド殿下に好意を持っていますでしょう?」
「うっ…」
ゲーム上でなくとも私はウィルフレッド殿下を尊敬していた。
王太子殿下でありながら向学心があり、かといって控えめでしっかりした考えを持つ方だ。
趣味も合うし博識だし。
「ジュディーは、あんな最低男なんて捨てて隣国で幸せになるべきだと思いますわ。お嬢様は国外に出て見たいとおゅしゃっていたではありませんか…それに海の国ならばお嬢様の大好きな妖精にも会えますわ」
「妖精は特定の人しか姿が見えないわ」
「でも、その歴史に触れて、感じる事もできますわ」
幼い頃から妖精の存在に憧れた。
姿を見たことはないけど気配を感じた事もあるし、不思議な経験をしたのだ。
「アクアパレスは平和な国だと聞きますわ。両陛下も穏やかな方と聞きますし。今回の騒動でお嬢様は被害者です。出る所まで出れば国王陛下もお許しになります…いいえ、許可せざる得ないでしょう」
「ジュディス」
余程許せないようだわ。
ハルバート様だけではなく、怒りの矛先はシャーロット様や他の令嬢にも向かっている。
「確かに旦那様は爵位は伯爵で、出世もされずに王立図書館を管理する立場にあります。政治的介入もありませんが、ユーモレスク家が大貴族である事実は変わりません」
「けどね」
お父様は家を出た身。
分家に当たるし、正直お父様のようにのんびりしている。
尊敬するお父様だけど。
のんびり構えている所がお兄様の悩みだった。
「ですが、いかに侯爵家と言えど!」
「私はもう静かに生きようかと思うの。王都を出て静かにひっそりと生きようと思うの」
「そんな!」
田舎で誰も知らない場所で静かに生きるでも良い。
叶うなら出家して修道院に行くのも良いと思っているわ。
乙女ゲームの騒動に巻き込まれたくない。
私は舞台から降りて静かに生きて行きたいし、ここは現実。
乙女ゲームが終わった後にどうなるか解らない。
ゲームのように王子様を略奪してはい終わりになるのだろうか。
ヒロインはゲーム上では健気で一生懸命な子だったけど。
かなりかけ離れてるし。
最後はどうなるか解らない。
というか、続編が発売する前に私は死んだので先が解らないわ。
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