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10.魅入られて
しおりを挟むリナリアがジュディーと一緒にひとまず席を外した。
まだ精神が安定していないから、落ち着かせる必要があるのだろうけど。
「何から何まで申し訳ありません」
「ジュディーと言いましたね。貴女の侍女は」
「はい」
ジュディーはお母様が連れて来た侍女だ。
男爵令嬢であるけど実家は大変貧しく父君が体が弱く、苦労が多かった。
今回の事でかなり心労を与えたのだろう。
「立派な方ですね」
「え?」
「主の為に侯爵家に喧嘩を売ろうとしている。下手すれば殺されるかもしれないと言うのに…あの目は本気です」
「ウィルフレッド殿下…」
「貴女は宝を持っておられる。その宝をどうか無くさないでください」
私が持っている宝とはなんなのだろうか。
これまで私は欠陥品のように言われて来たのに、何があると言うのか。
「どんな財も権力も、人の心を動かすことはできません。貴女は人の心が解る方だ」
「そのような…」
「実際、貴女を慕うものは多いはず。使用人であってもあそこまで忠誠心を持てるのは貴女が人の上に立つ器があるからです」
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「はい?」
「言わなくては解りませんか…私が下心があるとお思いになりませんか」
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私は固まった。
「貴女はもう少し警戒心を持つべきですね。ここに貴女を誘惑する悪い男がいるのに無防備すぎる」
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