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9.侍女登場
しおりを挟む傷の具合も良くなっても一人で歩くのは難しかった。
悲観的にならなかったのはウィルフレッド殿下とリナリアやティエリーが親身になってくれたからだった。
そんな中。
「お嬢様ぁぁぁ!」
侍女のジュディがやって来た。
「ああ、なんてお労しいお姿に。おのれぇ紐男が!私の大事なお嬢様に手を出すとは死にたいようですわね」
「ジゼル様、随分とお元気な侍女でございますね」
「はは…」
私が幼少期からユーモレスクにいる侍女。
婚約者に蔑ろにされ、母が亡くなってから使用人は私を見下し私の侍女を辞めた者も多かった。
その中で、私を庇い、守ってくれたのが彼女だった。
「ミハイル様よりお聞きした時は、死ぬ覚悟であの男と相打ちになってでもと思いました」
「止めてね」
「はい、旦那様がお許しになられず」
お父様ならば確実の止めるだろ。
だって、私の為にジュディが命を落とすような真似等許されないのだから。
ジュディは使用人じゃない。
私達の家族同然だったから当然かもしれない。
「お父様とお兄様は…」
「旦那様は今回の事で、完全に侯爵家と王族に対して抗議なさるそうです。ですが、あくまで平和的にです」
「そう…」
「ですが、ファミリア辺境伯爵様を筆頭に他の四大氏族の皆様が納得されておりませんし、騎士団の事件性を考えておりますわ」
事件性とは穏やかじゃないけど、あの状況ならば仕方ない。
こんな言い方はしたくないけど、被害にあったのが平民だったらまだマシだっただろう。
だけど貴族で伯爵令嬢となれば罪の重さは変わって来る。
しかも婚約者である私を殺害しようとしたとなれば、裁判の可能性も出る。
「あの馬鹿男は自分は一切悪くない。正義の為だと自分の罪を正当化していますわ」
「でしょうね。その場にいた私が悪いとか、彼女を苛めた主犯だろうとか、自業自得だとか言っているのでしょう」
「お嬢様…」
「別に気にしないわ」
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「今さらよ」
「ジゼル嬢、そんな悲しい事を平気な顔で言わないでください」
「失礼いたしました」
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「貴女が謝られる必要はございません。ですが、貴女は婚約者を愛していないのですか」
「ありえませんわ。お嬢様は泣く泣く婚約を受け入れたのです。旦那様だって押し切られてしまいましたが爵位を失ってでもお嬢様を守りするつもりでしたのに」
「ジュディー、余計な事は言わないで」
「申し訳ありません」
無関係な人にこんな気分が悪くなる話をするべきではなかった。
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