巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

文字の大きさ
上 下
11 / 79

閑話1.叔父の激怒②~三男の場合

しおりを挟む

ユーモレスク家は何代も続く大貴族だった。
二十年前までは伯爵の地位だったが、四大貴族の一角を担い東北を統べる一族だった。


国内でも最も政治的権力を持つのは龍の紋章を持つサンチェスト侯爵、その次にユーモレスク家の隣の領地を守るファミリア辺境伯爵家に次いでユーモレスク家だった。

名門貴族ではあるのだが、内情が少し複雑だった。

原因はユーモレスク家の長男、セオドールではなく次男のレイナードが跡継ぎになった事だ。
ユーモレスクの家系は皆優秀で、容赦がないのに対して長男は色々と抜けており、両親からも疎まれていた。

成人する前に父が無くなり、母が代行をしていたが、既にセオドールは跡継ぎから外されていた。


本家に関わる事も、意見も許されなかった。
そして母が亡くなった一年後に跡継ぎを決める時に三男のミゲルはセオドールを領地から追い出した。

勿論、本家に一切の指図もしないようにと。


里帰りも許さず実家の敷居を跨がせなかったのだ。



「お前が兄上を追い出したんじゃないか!」

「そうです。セオ兄上は領主の器がありません。親族に利用されては面倒ですし、領地で死なれたら笑い者です」

「この鬼ぃぃぃ!」


三兄弟の末っ子でありながら誰よりも責任感が強いミゲルはレイナード程優秀ではないが、世渡り上手だった。
だからこそレイナードの逃げ道を無くして当主に据え置いた後に補佐をした。

どうせ逃げられないのだから、最悪の事態を防いだのだ。


セオドールを追い出したことに後悔はない。
だが兄を追放した冷酷な男というのは未だに王都にも知れ渡っているだろう。


「グスン…私は兄上がいない領地など愛着もない。兄上…」


しかし問題はこの重度の兄大好き男だ。
幼い頃から家を空けて約束も守らないような兄で、何をしてもダメだった兄を何故か慕っている。

確かに人付き合いは上手く多くの知識はあるが生活力が皆無なセオドールは本家では生きられない。


むしろ王都ならば知恵の使い道はあるだろうし、ファミリア辺境伯爵が王都にいるのだから手助けしてもらえると思ったのだ。


ファミリア辺境伯爵はセオドールと幼馴染で幼少期から本当に親しかった。

本家にいれば精神的にも潰され、命を狙われる。
だからこそ強硬手段に出たのだが、十年前に義姉が急死したことで事態は予想外の出来事となった。

愛妻家としての有名なセオドールは妻を深く愛していたが、その妻が亡くなった悲しみが言えない間にその隙をついて使用人が妻の大事な形見に財産を追剥のように持ち去ったのだ。

それだけでは飽き足らず、ユーモレスクの地位を利用しようとある貴族が縁談を無理矢理取り付けて来たのだ。
これ見よがしに妻を失い気落ちしているセオドールの為だと王に上手く行ったのが、ハルバートの母、侯爵夫人だった。
その後も母親がいないことを逆手に取りハルバートはジゼルを粗末に扱い、意に添わなければ暴言を吐いて、その親は見て見ぬふり…いや、促している行動もしていたと報告を受けた時。


ミゲルは過ちを犯したことに気づいた。
本家と関われば穏やかな生活は送れない。

せめて静かに暮らせればよいと。
貴族の汚い闇に囚われることなくセオドールは自由に生きて欲しいと思った。


なのにこんな事になるとは。
挙句にジゼルがこんな事になるぐらいなるとは思わなかった。


しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

「いなくても困らない」と言われたから、他国の皇帝妃になってやりました

ネコ
恋愛
「お前はいなくても困らない」。そう告げられた瞬間、私の心は凍りついた。王国一の高貴な婚約者を得たはずなのに、彼の裏切りはあまりにも身勝手だった。かくなる上は、誰もが恐れ多いと敬う帝国の皇帝のもとへ嫁ぐまで。失意の底で誓った決意が、私の運命を大きく変えていく。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

伏して君に愛を冀(こいねが)う

鳩子
恋愛
貧乏皇帝×黄金姫の、すれ違いラブストーリー。 堋《ほう》国王女・燕琇華(えん・しゅうか)は、隣国、游《ゆう》帝国の皇帝から熱烈な求愛を受けて皇后として入宮する。 しかし、皇帝には既に想い人との間に、皇子まで居るという。 「皇帝陛下は、黄金の為に、意に沿わぬ結婚をすることになったのよ」 女官達の言葉で、真実を知る琇華。 祖国から遠く離れた後宮に取り残された琇華の恋の行方は?

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...