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7.好きな物
しおりを挟むウィルフレッド・アクアパレス。
海の国の王太子殿下であり、物腰柔らかく、勉学に勤しむ大変優秀な王子様。
文武両道で、アレンディス殿下とは正反対の雰囲気を持つも女子生徒から人気を二分している。
活発で行動的なアレンディス殿下に対して完全なる頭脳タイプのウィルフレッド殿下だけど、剣術の腕は二人共互角で、魔力はウィルフレッド殿下の方が勝っている。
けれど、威張る事はなく。
魔力をあまり使おうとしないが、必要ならば出し惜しみをしない。
常に冷静沈着で、舞踏会に参加してもダンスを踊らないことから硬派だと言う印象を持たれている。
本人曰くダンスは苦手だとの事らしいけど。
それにしてもだ。
「あまり見られると気恥ずかしくもあるのですが」
「えっ!申し訳ありません」
そんなに見ていたかしら?
チラ見する程度だったのだけど、でも本当に綺麗な瞳。
「申し訳ありません。あまりにも綺麗な色で…」
私は何を言っているの!
「ご無礼を!」
「いいえ、貴女に見惚れて貰えるなら光栄です」
なんて気障なんだ。
女子達の噂では常にクールだと言われていたのにまったくクールじゃない。
「痛々しい手だ」
「ほとんど傷は塞がりましたわ」
「傷は塞がっても貴女の心の傷は癒えません。あんな真似を…」
自分の事じゃないのに自分の事のように怒ってくださるなんて、本当に優しい人だわ。
「まぁ」
お茶を飲むとすごく美味しい。
「なんてまろやかで甘みがあって」
「我が国の特産物の一つです。御喜んでいただけて嬉しいです」
私はお茶が好きで特にミルクティーが大好きだった。
同じぐらいティーセットは大好きで小さい頃から眺めては楽しんでいた。
「楽しそうですね」
「はい…」
ハルバート様は私の好きな物に関心はない。
それどころか私の趣味を良く思っていないのでこんな風に楽しめない。
「ティーセットならこちらも良いですよ」
「わぁー、マルセルにジュリー」
どれも貴重なティーカップ。
「本当に博識でいらっしゃいますわね。どのブランドもとても古いですのに」
「ここまで詳しく知っている人も少ないのだけどね」
手で触れるだけで解る。
このティーカップは見た目よりも軽くて口をつける時も当たりが優しいし、冷めにくい。
持ち手もすごくお洒落だし。
「本当に素敵…」
私は煌びやかな舞踏会に出るよりも、こうしてティーカップを見たりしている方が好きだった。
「こちらもどうぞ」
「ありがとうリナリア」
何時以来だろう。
こんな風に心から笑える日は。
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