巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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3.傷跡

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全身の火傷を負ってしまった私だったけど、傷は数日で癒えた。
ウィルフレッド殿下はアクアパレス一の魔力の持ち主だと聞くし、水の精霊の加護を受けるだけある。

私は結界魔法や浄化魔法使えるけ、魔力が強いわけじゃない。
宮廷魔導士ならば私程度の結界なんて敷けるだろうし、できるのは結界と平凡過ぎる治癒だけだった。


「回復が早くてようございました…」


安堵する侍女事、リナリア。
私のお世話をしてくれている。


「リナリアさん」

「どうかリナリアとお呼びくださいませ」

「はぁ…」

彼女はウィルフレッド殿下の傍付きの侍女であるならば伯爵令嬢でしかない私がいいのだろうか。

「私にそのような気遣いは無用でうございます。これより姫様のお世話をウィルフレッド様より任されました。本来ならば後二人は用意してしかるべきなのですが」

「はい?」


何で私にそこまで?
特別に親しいわけじゃないのに何故?

少し話をした程度なのに。


「本日は蒸気風呂サウナをご用意させていただきました」

「サウナ?」

「はい、お湯に入られるのはもう少し回復した方が良いかと」


そう言われながら車椅子を出される。


座り心地も良くて、座布団も柔らかい。


「あの…本当によろしいのでしょうか」

「何がでございましょう?」

「このように良くして頂いて」


責任を感じているのは解るけど。
事故として処理すれば良いのに本当に気真面目というか律儀というか。


「ご迷惑でしたか?」

「とんでもありません。ですが、私のような者が傍にいるとご迷惑になります」


一国の王太子殿下が他国の貴族令嬢が傍にいたら帰国した後厄介な事になる。


「ウィルフレッド殿下のような方ならば…婚約者となる方もいらっしゃるでしょうし」

「まぁ、姫様。殿下にはそういう方はいらっしゃいませんし、女性にあまり興味を持たれないのですわ。姫様以外は…」


さっきから何故私を姫様と呼ぶのだろうか。
私は伯爵令嬢に過ぎないのだけど。



微笑みを浮かべながらも仕事の早いリナリアは無駄の動きがなく、疲れない程度にサウナに入れてもらい、その後背中に残っている切り傷の手当てをしてくれた。



「姫様」

「ごめんなさいね。見苦しいでしょう」

見ていて気持ちの良いものじゃないだろう。
これは彼が風の魔法で切り付けた傷だから流石に治癒魔法では難しかった。


傷跡も残るかもしれない。

でもその方が良いわ。


「我が国には、傷を残さず治癒できる治癒師もおりますわ」

「いいえ、いいの」

「ですが…」

「これでいいんです」


既に私は社交界で傷物令嬢となっているのだから、逆手に取ろうとも考えていた。


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