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1.生死の境の果て
しおりを挟む意識を失う前に誰かに名前を呼ばれた気がした。
だけど誰が名前を呼んでいるのか解らない。
――私はこのまま死ぬの?
その時に思い出したの前世の記憶。
乙女ゲーム『七色の宝石を君に』通称ナナイロ。
剣と魔法のファンタジーで乙女ゲームの中では王道的なシナリオを組まれている。
主人公が攻略対象と好感度を高めながらも攻略対象のトラウマや、問題を解決して恋を成就させる。
ただし、乙女ゲームは甘い恋愛が基本だ。
ナナイロが他と違いわりとシビアなゲームだった。
物語の主人公となるのはヒロインのナターシャ。
そしてライバルであり悪役令嬢な公爵令嬢、シャーロット・シュバリエ。
ヒロインの最大のライバルとなる存在だった。
公爵令嬢であり王太子殿下の婚約者でもあり、絵にかいたような悪役令嬢だった。
その反対に、ヒロインのナターシャ・カントリー。
愛らしく親しみやすさを感じる絵にかいたようなヒロインで何事も一生懸命でその姿勢は貴族が通う学園では新鮮に映り男子生徒からは好意的だった。
…というのがゲーム上のストーリー。
元平民でありながら男爵家に養女に迎えられるも模範優等生で非の打ち所がないと言われているが。
私の記憶するヒロインとは随分と印象が異なった。
少なくとも誰かを傷つけるような真似はするような性格ではなく好かれやすい性格だったはず。
ゲームの話だけど。
私はぼんやり考えながら日が差し込むのを感じた。
「うっ…」
「ジゼル様!お気づきになられましたか!」
誰か解らない。
侍女のようだったけど、私はどうしたの?
体全体が麻痺しているようで動けなかった。
「起きてはいけません。ジゼル嬢」
無理に起きようとした私に誰かが手を添えてくれた。
「生死の境を彷徨ったのです。無理に起きてはなりません」
優しくも凛とした通る声。
深い青の瞳に吸い込まれそうになる。
思わず見とれてしまいそうになるほどの綺麗な目の…。
「ウィルフレッド殿下!」
隣国、アクアパレス王国の王太子殿下だった。
「うっ…」
「動いては行けません。貴女の傷はある程度は治しましたが…その所為で体は負担がかかっているのです」
「ですが…」
よりにもよって何で隣国の王太子殿下。
同盟国ではないけど交流が深い国で、アクアパレスは海の国と言われるだけあって水の精霊の加護が強い。
もし彼等を怒らせれば国が沈没する。
「この度は…大変な粗相を」
「いいえ、謝るのは私の方です」
「え?」
何故そんな申し訳けない表情をしているのか解らない。
傍に控えている侍女は震え、今にも泣きそうにしている理由は解らなかった。
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